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シーシェパードのワトソンはSF関連会合のゲスト講演者としてドイツに渡航した

過激な抗議活動で有名なシーシェパード(SSCS)のワトソン代表が、5月13日にドイツ・フランクフルト空港で逮捕された。
報道によると、2002年に違法サメ漁を撮影したとき、コスタリカ船に対して航行妨害をした容疑がかけられているそうだ。

例えばAFPの日本語記事は次の通り。
www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2877767/8941162

【…反捕鯨団体「シー・シェパード…」創設者のポール・ワトソン(Paul Watson)代表…が13日、2002年に船舶の航行を妨害したかどで独フランクフルト…で逮捕された。…身柄はコスタリカに引き渡される見通し。

コスタリカからの報道として豪メディアが伝えたところによると、ワトソン代表には同事件での殺人未遂容疑でも逮捕状が執行される可能性がある。

シー・シェパード側の説明によるとワトソン代表の逮捕容疑は、2002年に中米グアテマラ沖でフカヒレ目的の違法なサメ漁を暴くドキュメンタリー映画「シャークウォーター/神秘なる海の世界(Sharkwater)」の撮影中、コスタリカ船舶の航行を妨害したというもの。…】

日本国内メディアでは、水産庁から要請されたためなのか、主要メディアからスポーツ紙まで一斉に取り上げている。
日本では、「逮捕=有罪=悪人」というイメージが根付いているためか、逮捕だけで勝利したかのような雰囲気だ。
特に産経新聞と、佐々木正明記者が元気なようで、自身のブログも使い、推測記事も含めて、いろいろと垂れ流している。
sankei.jp.msn.com/affairs/news/120514/crm12051420080028-n1.htm
sasakima.iza.ne.jp/blog/

朝日新聞では、ドイツのニュース週刊誌 SPIEGEL Online の報道を引用する形式で、ワトソン逮捕を報じている。
www.asahi.com/international/update/0514/TKY201205140134.html

ただし SPIEGEL Online の記事は2本あり、一つは記者の署名記事だが、もう一つはAFPも含めた配信会社の記事を使って編集したもの。
www.spiegel.de/wissenschaft/natur/sea-shepherd-gruender-paul-watson-in-frankfurt-festgenommen-a-832962.html
www.spiegel.de/panorama/sea-shepherd-chef-paul-watson-in-frankfurt-verhaftet-a-833113.html (署名記事)

ドイツメディアの記事を紹介した朝日新聞なのに、ワトソンがどうしてドイツに渡航したのか、その理由については、なぜか触れていない。
字数の関係で削除したのか、それとも日本人にとって無意味な情報との判断なのか。

ワトソン代表は、デュッセルドルフで開催される、スタートレックを中心としたSF関連会合、FedCon XXI にゲスト講演者として招待されている。
17日夜に、「Bekenntnisse eines Öko-Terroristen(あるエコテロリストの宣言)」というタイトルの講演をする予定だった(講演内容が不明なので、和訳は仮のもの)。
www.fedcon.de/
www.fedcon.de/index.php (ゲストのリスト)
www.fedcon.de/images/stories/dokumente_pdf/final.pdf (プログラム)

ワトソンの身柄は今でも拘束されているため、せっかく招待されたのに、講演することはできなかった。
会合のプレスリリースもないし、SSCSもこの講演について触れていないので、何を話そうとしたのかは、だいぶ経ってから判明することだろう。

ということで事実がはっきりするまで、以下の記載は、私の単なる推測をメモしたものであり、信頼性は低いと思ってほしい。


ワトソンがスタートレックファンかどうかは不明だが、映画版の4作目ではザトウクジラを扱っているので、これに関連した話だったのかもしれない。
映画では、ザトウクジラを狙う捕鯨船を妨害するシーンがあり、ワトソン代表はカーク船長のつもりで、無法者と断じた日本などと戦っているのかもしれない。

ノルウェーでは実刑判決が出ているし、アイスランドで捕鯨船に破壊工作をしたことも証明されたので、この2国には行かないはずだ。
インターポールはこれまで、EU域内にワトソンが入ってきても、野放しにしていたと言われている。

ということでワトソンも、何の不安も感じずにフランクフルト空港に降り立ったのだろう。

ただし非EU国からの入国者は、ビザの提示を求められたり、渡航目的を質問されることがある。
もしワトソンが、「エコテロリストとして講演する」などと書かれた招待状を示したとしたら、「テロリスト」というキーワードで身柄拘束は当然の対応だろう。

係官としては、そのまま入国させてしまうと自分の責任が問われるので、面倒なことは避けたいから、事情を聴くためにとりあえず逮捕したとも考えられる。
暇だったのか、その後いろいろ調べてみたら、コスタリカからの逮捕要請が出てきたので、現在対応を検討中ということだろう。

こんなことなら、オランダのアムステルダム空港に降りてから、デュッセルドルフまで特急列車で移動すればよかったのに。

続報があれば追記しておこう。

追記(5月19日):
フランクフルト・アム・マイン上級地方裁判所は5月18日に、ワトソン容疑者の逮捕の経緯と、保釈金25万ユーロの決定を発表した。
公式の逮捕理由は、コスタリカからの逮捕要請がインターポールに出されていたためで、エコテロリストの肩書については触れていない。
www.olg-frankfurt.justiz.hessen.de/irj/OLG_Frankfurt_am_Main_Internet (逮捕の経緯と今後の予定)
www.olg-frankfurt.justiz.hessen.de/irj/OLG_Frankfurt_am_Main_Internet (保釈について)

保釈のニュースは、時事通信で配信していた。
www.jiji.com/jc/zc
【ドイツで逮捕された反捕鯨団体「シー・シェパード」(SS)のポール・ワトソン代表について、フランクフルト上級地方裁判所は18日、逮捕状を出したコスタリカに身柄を引き渡すかどうかを判断するまでの間の保釈を認めた。
保釈保証金は25万ユーロ(約2500万円)。保釈期間中の出国は認められない。】

デュッセルドルフで17日に予定されていた講演会は、支持者の協力で実施するのかどうか、後で調べてみよう。
また、コスタリカへの引き渡しの審理は1か月以上かかるだろうから、その間に在ドイツ日本大使館前で抗議活動でもして、保釈取り消しにでもなれば面白い。
それは何を考えているのか理解不能な人物ということが、よりはっきりするから、実行することを期待してしまう。

(最終チェック・修正日 2012年05月19日)

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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