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auひかりTVでの理解不能なエラーメッセージ

(最終チェック・修正日 2012年12月22日)

私たちは会話や報道、書籍や資料、文書などで、毎日大量の言葉に触れている。
そして同様に毎日、言い間違いや漢字変換ミス、誤字・脱字にも出会っている。
それでも母国語や、慣れている外国語であれば、その間違いを頭の中で修正して理解することは可能である。

ただし、母国語の日本語で書いてあったとしても、何を言いたいのか、全く意味不明の文章に出会うことも経験している。
私は社内報の編集委員をしており、毎月必ずと言ってよいほど、不可思議な原稿が集まってくるので、筆者の個性的な表現を尊重しながらの、修正作業に苦労している。

文書の中では、様々な保険や金融商品の約款、分厚い取扱説明書に理解しにくい表現が多いと言われている。
外国製ソフトウェアの説明書では、機械翻訳のためか、不思議な表現に出くわしたことがある。
その表現とは、「上級魔術師用プログラム」で、英語原本で確認したところ、「guru(コンピューターの達人)」が使われていた。
ということで推敲の段階で、「上級エンジニア向けプログラム」とでも修正しておけばよかったのではないか。

翻訳だけではなく、日本のメーカーの製品でも、説明書やエラーメッセージの意味が全く理解できないこともある。
今日は一例として、auひかりTVでのエラーメッセージを紹介しよう。

光回線ではあるが、首都圏ということもあってか、回線速度が 100 Mbps を超えることはまれである。
上りが 60 ~ 93 Mbps、下りが 40 ~ 60 Mbps の範囲になることが大半である。
ちなみに省エネモードにすると、上りが 6 Mbps 程度、下りが 4 Mbps 程度と、約10%の速度になる。

省エネモードにしてもBBCワールドニュースなど、チャンネルによっては、この程度の速度でもトラブルは生じていない。
ただ、HD画質で配信しているムービープラスHDなどでは、データ量不足のためにフリーズした後、以下のようなエラーメッセージが出る
(TV画面の撮影画像と、そのエラーメッセージを下に書き起こした)

               放送受信停止
                 放送またはビデオ(VOD)を受信できません。
               メインメニューを表示するためには、
               番組表キーを押して番組表を起動し、
               メインメニューキーを押して表示させてください。
               IP2000

省エネモードで視聴できるチャンネルを確認する作業をしていただけだが、このエラーメッセージを読んでも、どのように対処すべきなのか、私には全く理解できない。

受信できるようにするために、メインメニューを表示させるのかと思ったら、次の行では番組表を起動するとある。
番組表を表示した後に、さらにメインメニューを表示させるそうだが、それから何をすべきなのか、誰にも理解できないと思う。
最後にある IP2000 という番号に対応したトラブル対処法が、非公開マニュアルのどこかに掲載されているのかもしれない。

今回の場合は意図的な実験のため、通信速度の問題だとわかっているので、通常モードに戻せばよいだけだ。
ただ、このエラーメッセージの意味が不明で、誰も対処できないと感じたため、電話で問い合わせをした。

このエラーメッセージが意味不明であることに同意してもらえたので、担当部署に修正依頼をすると約束してくれた。

そして IP2000 とは何か質問したところ、「LANケーブルなどの接続や電源の確認、機器の再起動をする」という、単純な最低限の対処法だった。
通信速度の低下も原因の一つになるはずだが、それは入っていないことがわかった。

結局のところ、画面に出たエラーメッセージの通りに、番組表やメインメニューを表示しても、何も解決しないということだ。
メインメニューを表示した後で、一連のメニューの中から、「インフォメーション」や「サポート」を参照することを説明すべきだ。
意味不明の日本語であることに加えて、不完全な対処法を表示しても、全く無意味である。

それにしても、こんなわけのわからない日本語を放置しているKDDI/au、そしてST1100Rを開発した三菱電機にはがっかりした。

追記(5月29日):
KDDI/auからの追加説明は、要約すると、以下のように再度がっかりするものだった。

【省エネモードにしたことがエラーの原因とわかっているのだから、これは解決済みと判断する。他のユーザーに対してはコールセンターなどへの問い合わせ時に、エラー番号IP2000の内容を説明して、対処法を告げることで問題は解決する。

エラーメッセージが日本語として意味不明とのことだが、作成したエンジニアは、メインメニューの表示まで示せば、そこから先はユーザー自身が適切な項目を探せるはずだと判断したのだろう。
エラーメッセージの文言は、仕様のため変更できない。変更するには多大なコストがかかるため、ソフトウェアの大幅なバージョンアップ時に判断する。】

単に言い訳しているだけで、これが顧客を大切にする企業の対応とは思えない。
全てを取扱説明書に書くことができないならば、その代わりにエラーメッセージの最後に、「○○にお問い合わせください」と書く方が望ましい。

今回取り上げた意味不明のエラーメッセージについては、「不思議な日本語」のコレクションに加えておこう。

追記(12月22日):
STBのソフト・バージョンアップ後に確認したところ、エラーメッセージは変わっていなかった。
ただ、画面表示などの反応が少し変わっていた。

以前はエラーメッセージが出て、画面はそのままだった。
今は数秒後にメッセージが消えて、再度接続を試みた後に、同じエラーメッセージが出て、そして再接続とエラーメッセージ表示を繰り返す。
ここでメインメニュー表示のためにキーを押しても、再接続を試みるときにメニュー表示は消えてしまう。
そこで番組表を表示すると、今度はメインメニューが消えずに残り、接続状況などの情報を確認できる。

つまり、意味不明のエラーメッセージが伝えたかった真意とは、「メインメニューの表示の前に、まず番組表を表示してください。その後、メインメニューの○○で接続状態の確認をしてください。」ということなのだ。

IT専門家が使う日本語とは、やはり不思議なものだ。

テーマ : ことば
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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