神戸大学医学研究科で再び遺伝子組み換え実験の不正行為が発覚

神戸大学医学研究科のある研究室では、2003年から少なくとも6年間、遺伝子組み換え大腸菌をそのまま下水に流すという違法行為を繰り返していた。
そのときの神戸新聞の記事は、既にリンク切れになっていたので、内容の一部を掲載しておこう。

【神戸大大学院医学研究科の久野高義教授の研究室が、遺伝子を組み換えた大腸菌などを違法に廃棄したとされる問題で、二〇〇三年度以降、実験にかかわった研究生らの約六割が大腸菌を排水口にそのまま流すなど、違法な処理が常態化していたことが九日、外部識者による調査委員会の調査結果で分かった。】

【久野教授は研究生らに「外部にばれなければ問題ない」と専用装置による処理を指導していなかったほか、「もっとひどいものを捨てている研究室もある」などと話していたという。

元研究生の一人は「六年前からやっていた。教授の指導だったので違法とは疑わなかった」と証言。在籍中の複数の研究生も「おかしいとは思ったが、指導を受ける立場としてこれまで言い出せなかった」と話している。…】

この事件が発覚した後なのに、神戸大学医学研究科では別の研究室で、無届けで季節性インフルエンザの遺伝子組み換え実験をしていた。
自称ジャーナリストの告発をきっかけにして学内調査が始まり、6月8日に調査結果が神戸大学と文部科学省から発表された。
www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/06/1321836.htm (文部科学省)
www.kobe-u.ac.jp/topics/top/t2012_06_08_01.html (神戸大学)
www.kobe-u.ac.jp/topics/top/t2012_06_08_01-1.pdf (神戸大学:調査結果の報告)
www.kobe-u.ac.jp/topics/top/t2012_06_08_01-2.pdf (神戸大学学長声明)

P2施設内での実験で外部に漏れないため、「危険性は低い」ということだが、違法行為であることに変わりはない。

【…もととなったインフルエンザウイルスは、通常の季節性インフルエンザに由来するものであり、平成21年に勃発したA/H1N1型インフルエンザウイルスの遺伝子ではない。したがって、作成した遺伝子組換えウイルスは通常の季節性インフルエンザのウイルスと同等のもので、危険性の低いものである。…】

この不祥事を取り上げた朝日新聞と神戸新聞の記事は次の通り。
www.asahi.com/national/update/0608/OSK201206080186.html
www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0005120977.shtml

ここでは地元紙の神戸新聞から引用しておこう。

【神戸大は8日、大学院医学研究科の研究室で実施したインフルエンザウイルスの遺伝子組み換え実験について、法的に必要な文部科学相への届け出をしていなかったと発表した。ウイルスの外部への拡散などはないという。文科省は同日、同大を厳重注意した。

問題となったのは、季節性のH1N1型インフルエンザウイルスについて、感染の仕組みを調べる実験。2009年4~8月、医学研究科准教授の指導で大学院生が組み換えウイルスの作成や培養をした際、文科相に届け出ていなかった。昨年12月、電子メールで学内関係者に告発があり、同大が調査。准教授は届け出の必要性を認識していたが、実験の進行状況を細かく把握できていなかったという。

調査過程で、准教授が08年と09年にインドネシアからインフルエンザウイルスの遺伝子などを持ち出す際、同国で法的手続きをしていなかったことも分かり、同国政府に謝罪文を送った。
…】

生物多様性を守るために、いわゆる「カルタヘナ法」という遺伝子組み換え生物などの使用は規制されている。
研究者は一日でも早く成果を挙げたいと思うものだが、自分の研究に関わる法律などを守る義務もある。

遺伝子組み換え実験に対しては、SF映画の影響もあるのか、テロリストに悪用されるだとか、治療法のない新型ウイルスが発生するなどと、過度に恐怖をあおる発言が出てくる。
そういったリスクも含めて、研究者は遺伝子組み換え実験を実施する理由を、わかりやすく説明する義務もある。

それなのに法律を守らず、倫理観を欠いた行動をしているのならば、研究者としての資格はないと言ってもよく、単なる実験停止や減給処分ではなく、博士号はく奪のような強硬手段も必要かもしれない。

コンプライアンス研修をしたとしても、「人間の本質は変わらない」という視点で考えると、残念ながら不祥事は今後も続くと思われる。
そのため内部告発も含めて、不祥事を未然に防ぐ対策が必要となるだろう。
「学問の自由」ということを研究者はよく言うが、公共の福祉を無視した研究活動は犯罪であると認識してほしいものだ。


私のような化学系では、実験に用いる試薬に関する毒劇物法や消防法の他にも、大気や水質の汚染、オゾン層破壊などの関連法規制の内容を知っておく必要がある。
現在の職場で私は、危険物管理担当そして毒劇物管理補助者として、実験室内で法令違反がないかどうかチェックしている。
自分の仕事をしながらでも、例えば反応時間が2時間かかるときに、雑談をする振りをしながら他の研究員の実験台を確認したり、自分の試薬を危険物倉庫や冷蔵庫で探すときに、ついでに数量や保管方法の確認をしている。

「昔はこんなに厳しくなかった」と言う人もいるため、ベテラン社員のプライドを傷つけずに指導しなければならず、非常に苦労している。
自分の実験を優先して、ルールを守らない、あるいは自己流解釈で行動してしまう人がいるのだ。
先日も、施錠した劇物保管庫に戻すべき濃塩酸のビンを、ドラフト中に2日間も放置していた研究員を発見してしまった。
この研究員は実は、毒劇物管理主任者である。
責任者なのにルール違反が続くなら、私が代わりに主任者になるべきだと、部長に直訴することになるだろう。

今回の事例を含めて、社内でのコンプライアンス研修で話題にしてみようと思う。

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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