ヨーロッパでは極右勢力の台頭がさらに目立ってきた
私がドイツに留学した10年以上前、ナチスによるウクライナでの大量虐殺を批判する特別展示会が開催された。
私が住む街での展示であり、興味があったのだが、左派と右派のデモ隊が会場付近に集結するという情報があり、外出を控えた。
加えて、外国人研究員が住む大学ゲストハウスの郵便受けにまで、「スターリンの謀略だ」と主張する右派勢力のチラシが入っていたので、何か事件が起きると直感した。
実際に会場前で両派のデモ隊が入り乱れて殴り合いとなり、制止のために警官隊が投入され、多数の負傷者と逮捕者が出た。
その展示会は、安全が確認できた翌日に見学した。
その後も、反ユダヤ、反ロマ、外国人排斥を主張するネオナチなどの右派勢力は増大している。
ヨーロッパの中では、なんとか経済がもっているドイツでも、旧東ドイツ側の失業率は高く、外国人が襲撃される事件が続いている。
また、ナチス幹部だったルドルフ・ヘスを埋葬した教会がネオナチの巡礼聖地になったため、墓地賃貸契約期間の終了に合わせて、ヘスの遺族が極秘に墓を移動することになった。
最近は反EU、反イスラムも加わって、特に東ヨーロッパで極右勢力の台頭が目立っており、国会でも議席を獲得するようになった。
参考として、日経ビジネスオンラインの翻訳記事(The Economist)を引用しておこう(元記事のリンクも掲載した)。
【欧州で極右勢力が台頭 - 移民排斥、反イスラムなど過激思想】
business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120816/235610/
www.economist.com/node/21560294 (The Economist の英語記事:8月11日)
私が住む街での展示であり、興味があったのだが、左派と右派のデモ隊が会場付近に集結するという情報があり、外出を控えた。
加えて、外国人研究員が住む大学ゲストハウスの郵便受けにまで、「スターリンの謀略だ」と主張する右派勢力のチラシが入っていたので、何か事件が起きると直感した。
実際に会場前で両派のデモ隊が入り乱れて殴り合いとなり、制止のために警官隊が投入され、多数の負傷者と逮捕者が出た。
その展示会は、安全が確認できた翌日に見学した。
その後も、反ユダヤ、反ロマ、外国人排斥を主張するネオナチなどの右派勢力は増大している。
ヨーロッパの中では、なんとか経済がもっているドイツでも、旧東ドイツ側の失業率は高く、外国人が襲撃される事件が続いている。
また、ナチス幹部だったルドルフ・ヘスを埋葬した教会がネオナチの巡礼聖地になったため、墓地賃貸契約期間の終了に合わせて、ヘスの遺族が極秘に墓を移動することになった。
最近は反EU、反イスラムも加わって、特に東ヨーロッパで極右勢力の台頭が目立っており、国会でも議席を獲得するようになった。
参考として、日経ビジネスオンラインの翻訳記事(The Economist)を引用しておこう(元記事のリンクも掲載した)。
【欧州で極右勢力が台頭 - 移民排斥、反イスラムなど過激思想】
business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120816/235610/
www.economist.com/node/21560294 (The Economist の英語記事:8月11日)
EUは多文化尊重主義をとっているが、考え方は人それぞれなので、反外国人感情を持つ人がいることは事実だ。
極右勢力の台頭の理由として一般的には、不景気による失業問題といった不満がよく挙げられる。
ただし、経済問題が極右政党の支持に直接結びつくのではなく、外国人や移民、非キリスト教者への敵視感情が根底にある。
オランダでは9月12日に総選挙が行われるが、世論調査では反EUの社会党が第一党になる勢いとのことだ。
毎日新聞の記事は次の通り。
mainichi.jp/select/news/20120813k0000m030055000c.html
【…欧州連合(EU)に批判的な社会党が世論調査の獲得議席予想でトップを走る勢いを見せている。EU離脱を掲げる極右・自由党も3位に付け、債務危機を機にEUへの反発が噴き出した形だ。オランダのルッテ政権はメルケル独政権と連携して財政緊縮などの危機対策を進めてきた。社会党が勝利すれば欧州政治の流れを変える可能性もある。
…】
オランダの連立政権は、緊縮財政策について連立与党内で対立が起こり、政権が崩壊して総選挙となった。
選挙結果によっては、ドイツとの協力関係が困難となるため、ユーロ圏危機の再燃が懸念される。
右派勢力の経済政策案は未熟なのだが、反外国人・反イスラムといった感情を少し煽るだけで、大半の国民は政策の本質を見ようとはしなくなってしまう。
人権意識が高く、自由で福祉国家というイメージのある北欧諸国でも、移民が増えているために極右勢力が支持されている。
ノルウェーで爆弾・銃乱射テロが起きたのも、反移民・反イスラム思想が背景にある。
単独犯ではあったものの、ブライヴィーク容疑者の行動を支持する人たちがいることも事実だ。
ハンガリーでも、反ユダヤ・反ロマ主義の極右政党ヨッビクの人気が高まっている。
ヨッビク党は単なる極右政党ではなく、まともな経済政策も提案しているが、支持者はそんなことより反外国人感情で動いている。
ところで、記事で取り上げられたヨッビク党だが、人気政治家の Szegedi Csanád (注:ハンガリーでは姓名の順)が、実はユダヤ人だと、6月に告白して大騒ぎとなっている。
ヨッビク党HPの英語版は現在閉鎖中なので、今のところはハンガリー語版や、他の報道で確認するしかない。
www.jobbik.hu/ (ハンガリー語)
www.jobbik.com/ (英語版)
母方の祖父母がユダヤ人であるため、子孫である Csanád 本人も、ユダヤ人として扱われるとのことだ。
祖母はアウシュヴィッツ収容所からの生還者で、祖父は別の強制労働収容所に入れられていたという。
2010年頃から「Csanád はユダヤ人ではないか」という噂があったものの、祖父母が子どもにも孫にも秘密にしていたため、Csanád 本人は今まで何も知らなかったそうだ。
第二次大戦後でもソ連影響下の東欧ハンガリーでは、ユダヤ人であることを家族にも言えなかったのだろう。
そして発覚するまでは、「ユダヤ人がハンガリーの土地を買い占めている」などと、反ユダヤ主義の主張を繰り返していた。
報道によれば、ユダヤ人ということで、ヨッビク党の全ての役職を辞め、そして離党することになったそうだ。
人気政治家の離党となったが、それでもヨッビク党は、反ユダヤ主義を掲げて活動を続けるとのことだ。
www.spiegel.de/politik/ausland/ungarn-jobbik-abgeordneter-szegedi-entdeckt-juedische-wurzeln-a-850342.html
www.independent.co.uk/news/world/europe/poster-boy-of-hungarys-fascist-right-quits-after-jewish-roots-revealed-8054031.html
留学や仕事でヨーロッパに住んでみると、短期の観光旅行では気付かない、ある雰囲気を知ることになる。
それは、「非ヨーロッパ的なもの・非キリスト教的なもの・非白人に対する警戒感」である。
日本人は居座らずに帰国するはずだと思われているので、好意的に接してくれることが多いが、ドイツでは特に、トルコ人と中国人を警戒しているとの本音を何度も聞いた。
反ユダヤ主義も反イスラム主義も、千年以上続くヨーロッパの暗い部分である。
日本の歴史にも、日本人の感情にも、同様に暗く醜い部分がある。
それを隠すことなく直視し、平和な未来のために考えていきたいものだ。
極右勢力の台頭の理由として一般的には、不景気による失業問題といった不満がよく挙げられる。
ただし、経済問題が極右政党の支持に直接結びつくのではなく、外国人や移民、非キリスト教者への敵視感情が根底にある。
オランダでは9月12日に総選挙が行われるが、世論調査では反EUの社会党が第一党になる勢いとのことだ。
毎日新聞の記事は次の通り。
mainichi.jp/select/news/20120813k0000m030055000c.html
【…欧州連合(EU)に批判的な社会党が世論調査の獲得議席予想でトップを走る勢いを見せている。EU離脱を掲げる極右・自由党も3位に付け、債務危機を機にEUへの反発が噴き出した形だ。オランダのルッテ政権はメルケル独政権と連携して財政緊縮などの危機対策を進めてきた。社会党が勝利すれば欧州政治の流れを変える可能性もある。
…】
オランダの連立政権は、緊縮財政策について連立与党内で対立が起こり、政権が崩壊して総選挙となった。
選挙結果によっては、ドイツとの協力関係が困難となるため、ユーロ圏危機の再燃が懸念される。
右派勢力の経済政策案は未熟なのだが、反外国人・反イスラムといった感情を少し煽るだけで、大半の国民は政策の本質を見ようとはしなくなってしまう。
人権意識が高く、自由で福祉国家というイメージのある北欧諸国でも、移民が増えているために極右勢力が支持されている。
ノルウェーで爆弾・銃乱射テロが起きたのも、反移民・反イスラム思想が背景にある。
単独犯ではあったものの、ブライヴィーク容疑者の行動を支持する人たちがいることも事実だ。
ハンガリーでも、反ユダヤ・反ロマ主義の極右政党ヨッビクの人気が高まっている。
ヨッビク党は単なる極右政党ではなく、まともな経済政策も提案しているが、支持者はそんなことより反外国人感情で動いている。
ところで、記事で取り上げられたヨッビク党だが、人気政治家の Szegedi Csanád (注:ハンガリーでは姓名の順)が、実はユダヤ人だと、6月に告白して大騒ぎとなっている。
ヨッビク党HPの英語版は現在閉鎖中なので、今のところはハンガリー語版や、他の報道で確認するしかない。
www.jobbik.hu/ (ハンガリー語)
www.jobbik.com/ (英語版)
母方の祖父母がユダヤ人であるため、子孫である Csanád 本人も、ユダヤ人として扱われるとのことだ。
祖母はアウシュヴィッツ収容所からの生還者で、祖父は別の強制労働収容所に入れられていたという。
2010年頃から「Csanád はユダヤ人ではないか」という噂があったものの、祖父母が子どもにも孫にも秘密にしていたため、Csanád 本人は今まで何も知らなかったそうだ。
第二次大戦後でもソ連影響下の東欧ハンガリーでは、ユダヤ人であることを家族にも言えなかったのだろう。
そして発覚するまでは、「ユダヤ人がハンガリーの土地を買い占めている」などと、反ユダヤ主義の主張を繰り返していた。
報道によれば、ユダヤ人ということで、ヨッビク党の全ての役職を辞め、そして離党することになったそうだ。
人気政治家の離党となったが、それでもヨッビク党は、反ユダヤ主義を掲げて活動を続けるとのことだ。
www.spiegel.de/politik/ausland/ungarn-jobbik-abgeordneter-szegedi-entdeckt-juedische-wurzeln-a-850342.html
www.independent.co.uk/news/world/europe/poster-boy-of-hungarys-fascist-right-quits-after-jewish-roots-revealed-8054031.html
留学や仕事でヨーロッパに住んでみると、短期の観光旅行では気付かない、ある雰囲気を知ることになる。
それは、「非ヨーロッパ的なもの・非キリスト教的なもの・非白人に対する警戒感」である。
日本人は居座らずに帰国するはずだと思われているので、好意的に接してくれることが多いが、ドイツでは特に、トルコ人と中国人を警戒しているとの本音を何度も聞いた。
反ユダヤ主義も反イスラム主義も、千年以上続くヨーロッパの暗い部分である。
日本の歴史にも、日本人の感情にも、同様に暗く醜い部分がある。
それを隠すことなく直視し、平和な未来のために考えていきたいものだ。