Genzyme社がAlemtuzumabを販売停止したのは今後の金儲け計画のため?

医薬メーカー子会社で研究員をしている私が言うのも変だが、欧米巨大医薬メーカーの商売のやり方は悪質だと思ってしまう。

最近流行したブタインフルエンザ(H1N1-A型インフルエンザ)のワクチンを売る時、最初の契約書には返品拒否の他に、副作用への責任を負わないなど、いろいろと不公平な条項があって問題となった。

また、新薬の大型治験の実施場所にインドなどのスラム街を選び、自分の名前も書けないような人が同意したことにしている。
子どもへの使用が禁じられている医薬品を、人道的援助と称してアフリカに送り、人体実験まがいのこともやった。
都合の悪いプラセボのデータを隠ぺいして申請し、全く効果がない物質を新薬として発売したこともある。

悪事の発覚後に、多額の賠償金が課されることもあるが、巨大医薬メーカーが潰れないのは、政界へのロビー活動の成果なのだろうか。
一番不思議なのは、サリドマイドを開発・販売したドイツの製薬メーカーが、今でも存続し、しかも何も責任をとっていないことだ。
【追記:2012年09月01日:サリドマイドを開発・販売したドイツの Grünenthal 社が、8月31日に公式に謝罪を表明した。また、これに先んじて3月からは、薬害犠牲者個人に対する補償について決定していた。
www.contergan.grunenthal.info/grt-ctg/GRT-CTG/Stellungnahme/Rede_anlaesslich_Einweihung_des_Contergan-Denkmals/224600963.jsp
www.contergan.grunenthal.info/grt-ctg/GRT-CTG/Unterstutzungsangebot/Offer_for_support/205000004.jsp;jsessionid=A91BC0DFDE812E1AB59444C7023D0CA2.drp2

今回取り上げる Genzyme(ジェンザイム)社は、Sanofi(サノフィ)グループ傘下のバイオ医薬品メーカーで、日本支社もある。
www.genzyme.com/Company.aspx

抗体医薬品の Alemtuzumab(アレムツズマブ)は、抗がん剤として2001年から、慢性リンパ性白血病の治療に使用されてきた。
実際には、他の抗がん剤を用いた通常の化学療法では効果がない場合の、第二の選択肢という位置付けである。

10年以上の実績がある Alemtuzumab だが、Genzyme社は市場から回収することを決定した。
副作用問題でもなく、効果がないからでもなく、供給能力の問題でもない。
多発性硬化症にも効くことが判明したため、この治療薬として再申請するためのようだ。

この販売停止に関するドイツ語報道を引用しよう。
www.sueddeutsche.de/gesundheit/preistreiberei-der-pharmabranche-wie-man-ein-medikament-drastisch-verteuert-1.1444186
www.aerztezeitung.de/medizin/krankheiten/krebs/lymphome/article/819675/strategischen-gruenden-leukaemie-arznei-markt-genommen.html

販売停止後の入手方法について、英語の情報は Sanofi UK で見つけた。
www.sanofi.co.uk/l/gb/en/layout.jsp

Genzyme社はこの決定について、アメリカのFDAやヨーロッパのEMAに事前に通知していた。
しかし、特にEMAや血液がん専門の医師たちは、受け入れられないことだと反発している。
Genzyme社と契約すれば入手可能ではあるが、なんとも勝手な決定だと感じる。

Genzyme社は Alemtuzumab について、多発性硬化症での臨床試験に専念する予定だ。
慢性リンパ性白血病では第一選択薬ではなかったが、多発性硬化症ならば、より多用してもらえると期待できる。

慢性リンパ性白血病と臓器移植での使用で、アメリカでは1年間に1億ドル以上を稼ぐブロックバスターの地位にあるが、さらに儲けたいということか。

慢性リンパ性白血病の治療に Alemtuzumab を使うと、ヨーロッパでは患者一人当たり年間約4万ユーロになるそうだ。
多発性硬化症では年間約3万ユーロと少し減少するものの、適用拡大によってブロックバスターであり続けるだろう。
また、効能追加で再申請して、より高い価格設定が認められれば、さらに儲けることができる。

抗体医薬品は元々高価である上に、一定期間継続して投与する必要があるため、患者の経済的負担は大きいものの、その分、メーカーが儲かる仕組みになっている。
開発費などを回収するために適切な価格になっているのだろうが、ここにもロビー活動が影響しているのかもしれない。

病気が治るのならば、どんなに高価な薬でも使いたいというのが患者の心理である。
患者を救いたいという気持ちから開発しているのか、それとも金持ちになりたいから開発しているのか、本音はどちらなのだろう。

(最終チェック・修正日 2012年09月01日) 

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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