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ドイツ化学企業BASFの工場から化学物質がライン川に漏洩した

19世紀に創業したドイツの化学企業BASFは、今では機能性プラスチックや農薬などの分野で、世界をリードする巨大企業となっている。
日本では1888年から事業を開始し、BSAFジャパンと関連会社が、三重県四日市市などに主要生産拠点を有している。
www.basf.com/group/corporate/en/ (グローバルサイト・英語)

化学企業では危険な薬品・溶媒を使うため、爆発事故や漏洩事故などへの対策をしている。
そのほかにも様々な環境対策をしているものの、漏洩事故がなくなることはない。

BASFの発表によると、9月12日以降、Luswigshafen(ルートヴィヒスハーフェン)工場の排水処理施設を通じて、シクロドデカノン約500kgが、ライン川に流れ込んだとのことだ。

BASFの公式プレスリリースは次の通り(ドイツ語)。
www.basf.com/group/corporate/site-ludwigshafen/de_DE/news-and-media-relations/news-releases/P-12-414

ドイツ語報道として SPIEGEL Online と Rhein Zeigung の記事を引用しておこう。
www.spiegel.de/wissenschaft/technik/unfall-bei-basf-in-ludwigshafen-giftige-chemikalie-laeuft-in-den-rhein-a-855596.html
www.rhein-zeitung.de/regionales_artikel,-Giftige-Chemikalie-im-Rhein-500-Kilo-treten-bei-BASF-aus-_arid,483347.html

工場ではこの日、シクロドデカノンの生産設備を洗浄しており、廃液は処理施設に送られていた。
しかし、シクロドデカノンの分解が全くできず、そのままの汚染廃水がライン川に放流されてしまった。
なぜ分解できなかったのか、現時点では不明だという。

シクロドデカノンは水性生物への影響がある化学物質として登録されており、長期的影響も懸念される物質である。
約500kgもライン川に流れ込んだものの、大量の水で希釈されるため、BASFでは水性生物への影響は起きないと考えている。

BASFのこの工場では、以前から事故が続いたり、塩素ガスが漏れたのに少量ですぐに止まったため、速やかに報告しなかったことがあった。
近くに住宅地があるのに、危険な化学工場が存在しているため、ドイツの環境政党である緑の党(DIE GRÜNEN)は、何度も質問状を出したりして抗議している。

BASF本社があるルートヴィヒスハーフェンは、いわゆる企業城下町で、
「化学の街(Stadt der Chemie)」と呼ばれ、約4万人が化学工業関連で雇用されている。

ライン川に面した敷地の北側には、Landeshafen という港があり、ライン川の物流インフラを利用できて便利である。
そして本社・研究所・工場を一か所に集約することで開発スピードは上がるだろうし、周辺の関連産業と共に発展が期待できる。
今回漏洩したシクロドデカノンは、ポリアミド樹脂の合成中間体として重要で、この工場は化成品事業の中心である。

ただし、ライン川対岸にはより人口の多いマンハイムがあるので、事故が起きた場合を想定して、工場だけはもう少し離れたところに移転してもよかったかもしれない。

BASFは化学品だけではなく、遺伝子組み換え作物など、その事業は多岐にわたる。
最近は、遺伝子組み換えジャガイモに対する反対運動が激しくなり、農場が襲われたりしている。

化学物質には危険なものが多いので、細心の注意を払い、設備もきちんと定期点検しているのに、ヒューマンエラーによる事故も含めて、様々なトラブルが発生する。
そして、少しでも漏れると、異臭だけではなく、変異原性の有無などで大騒ぎとなる。

化学の成果は生活を豊かにしているのだが、少しのミスで、環境破壊の悪徳産業代表にされてしまう。
私は職場で、危険物と劇物の管理をしているので、誰かが変なことをしないかと毎日不安を抱えている。
自分の仕事もあるので、常に見ていることは無理だが、法律を守ってもらうように指導するだけではなく、悪臭物質の分解法などの処理についても随時確認していきたい。

テーマ : 海外ニュース
ジャンル : ニュース

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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