ロシアの核兵器を解体して製造した核燃料がドイツの原発で使われている

9月15日の Süddeutsche Zeitung(南ドイツ新聞)に掲載された調査報道によると、ロシアの核兵器を解体して得られたウランから製造した核燃料が、ドイツの原発で使用されているという。
www.sueddeutsche.de/wirtschaft/geschaefte-deutscher-energiekonzerne-mit-uran-aus-russland-deutscher-strom-aus-russischen-atombomben-1.1468771

2002年にカナダ・カナナスキスで開催されたG8サミットでは、冷戦時代に製造された核兵器の解体について決議された。
その後のサミットでも核不拡散および核セキュリティーの観点から、核兵器解体で発生する高濃縮ウランとプルトニウムが、テロリストなどの「悪の手」に渡ることがないように議論が続けられている。

そしてこれは映画の見すぎかもしれないが、いつもロシアの核兵器がどうなったのかが問題とされることが多い。
イランやシリアといった核兵器開発疑惑国と関係が深いことも、ロシアが疑われる一因でもある。

ただしロシア側は、名言していないものの、関係者の協力で核兵器解体は進みつつあることを匂わせていた。

そして信頼できる情報によれば、ロシアの核兵器から取り出されたウランやプルトニウムを原料として、原発用核燃料が製造され、それはドイツの原発5か所で利用されているのだという。
その5か所とは、 Obrigheim(オーブリッヒハイム)、Neckarwestheim(ネッカーヴェストハイム)、Brockdorf(ブロックドルフ)、Unterweser(ウンターヴェーザー)、そして Grundremmingen(グルントレミンゲン)である。
ということは、ドイツ国民が電気を使うたびに、ロシアの核軍縮に協力していることになるわけだ。

ただ、ドイツの原発運転企業3社(Eon、EnBW、RWE)が核兵器由来の核燃料を利用しているのは、核軍縮や核セキュリティーのためではなく、西ヨーロッパで生産するよりも安く済むという経済的理由だ。

西ヨーロッパで使用済み核燃料から再処理したウランと、核兵器由来のウランをロシア国内の工場で混ぜて、新たな核燃料棒を製造している。
その核燃料棒は、鉄道や船、またはトラックでドイツの原発に送られている。

それに加えて気になるのは、このロシア産核燃料の利用は、ドイツ連邦政府が関与しない形で
秘密裏に行われ、ドイツ国民は何も知らされていないことだ。

この核燃料ビジネスにおいて、ロシア側の重要人物とは、プーチン大統領と親しいロビイストの Andrey Bykov(アンドレイ・バイコフ)である。
彼はドイツの電力会社 EnBW から、不正に約2億ユーロを受け取った疑いがあるとして告発されている。
彼の主張では、教会の修復などの慈善事業に使ったそうだが、プーチンと親しく、核燃料ビジネスに関与する人物なので怪しい。

取材に対してドイツの原発運転企業3社の回答は、少しずつ異なったものであった。
RWE は、核兵器ウランを含んだ856本の核燃料棒を使用していることを認めた。
Eon も、ロシア製核燃料棒の使用について認めた。

ただしバイコフと関係のある EnBW だけは、「そのような核燃料棒の使用は可能性としてあるかもしれない」と、あいまいだった。
加えて内部文書によると、問題の核燃料棒は、なぜかスイスの関連企業を経由して、ドイツに渡っていることになっていた。
そしてドイツの検察は、EnBW とバイコフとの契約について調査しているという。

ロシアにとっては、核兵器解体によって、ウランとプルトニウムという新たな輸出用資源を得た。
ウラン鉱石を採掘して濃縮するよりも、安価な核燃料を世界中に売ることができる。
核軍縮や核不拡散・核セキュリティーの問題解決よりも、やはりこの世は金目当てで動くのだ。

最近のウランビジネスの概要について、2008年の資料だが引用しておこう(みずほ情報総研)
www.mizuho-ir.co.jp/publication/contribution/2008/economist080624.html
【…
2006年のウラン需要約6万5,000トンに対して、天然ウラン産出量は約60%にあたる約4万トンであり、残り2万5,000トンはウランの2次供給によって賄われている。
2次供給源には、…ロシアの解体核兵器からのウラン供給…などがある。…
しかし、2次供給は必ずしも持続的なものではない。特にロシアの解体核兵器からのウラン供給は2013年に終了する可能性があり、民間在庫取り崩し量の減少を考慮すれば、2次供給量は2015年ごろまでに大幅減少する懸念がある。
…】

ヨーロッパの企業は、国際政治とは無関係に、裏取引をしてまでウランを確実に手に入れていたのだ。
日本はいつも後手に回っているわけだが、今年の夏、原発が不要だったことが知れ渡ったので、もうウラン確保に奔走する必要もないだろう。

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製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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