ロムニー候補は寄付金額の過少申告で多く税金を払っているように見せかけている
アメリカ大統領選挙の共和党候補であるロムニーは、金持ちで庶民の気持など理解していないと批判されている。
先日は、オバマ大統領支持層を批判している隠し撮り映像が Mother Jones で公開されて、大騒ぎとなっているようだ。
www.motherjones.com/politics/2012/09/secret-video-romney-private-fundraiser
加えて、税金を払っていないと批判されていたため、やっと納税申告書を公開した。
日本メディアでは情報が足りないので、ここではウォールストリートジャーナル(日本語版)を引用しておこう。
jp.wsj.com/US/Politics/node_516781
【…ミット・ロムニー氏は21日、2011年の納税申告を公表し、ロムニー夫妻の2011年の所得が約1369万ドル(約10億7000万円) で、連邦税の実効税率は14.1%だったことを明らかにした。また、2009年までの20年間の納税記録の概要をまとめた会計士からの書簡も提示した。
…
…2011年の納税申告によると、ロムニー夫妻の同年の所得は1369万6951ドル(約10億7000万ドル)で、納税額は193万5708ドル(約1億5000万円)だった。
…
ロムニー夫妻の税率が低いのは夫妻が慈善事業に多額の寄付を行っており、税控除を受けていることも影響している。夫妻による寄付は合計400万ドル超で、税控除は225万ドルだった。
また、今回の納税記録の開示によって、ロムニー氏の2011年の所得と納税額が今年1月にロムニー陣営が公表した推計を大きく下回ったことがわかった。1月の推計では、総所得は2090万ドルで、連邦税の納税額は323万ドルに上るとされていた。
…ロムニー夫妻は20年間の平均で調整総所得の13.45%を慈善活動に寄付していたことがわかった。夫妻がこの期間に支払った連邦税、州税および慈善活動への寄付は調整総所得の38.49%を占めた。
なぜロムニー夫妻が開示の対象を過去20年間としたのかははっきりしないが、ジョージ・W・ブッシュ政権時代の2003年にキャピタルゲイン課税の税率が20%から15%に引き下げられたことが要因となったかもしれない。投資収益に対する税率が高かった時代の納税記録を含めれば、ロムニー夫妻の税率は高くなり、税率が低いと批判されている夫妻にとって有利なためだ。】
私も毎年の確定申告で寄付金控除を申告しているが、金額は数万円なので、還付される所得税は、せいぜい1万円くらいだ。
モルモン教徒は所得の10%を寄付するそうだが、それでは借金のある私は生活できなくなるので、やはり金持ちは桁が違う世界で生きているわけだ。
ところで、この記事で気になったのは、ロムニー陣営が公表した推計よりも、実際の納税額が約100万ドルも異なることだ。
この差についてヒントになる記事を探してみたところ、The Salt Lake Tribune 紙に、寄付金額過少申告の記事があった。
www.sltrib.com/sltrib/politics/54943992-90/romney-tax-percent-romneys.html.csp
先日は、オバマ大統領支持層を批判している隠し撮り映像が Mother Jones で公開されて、大騒ぎとなっているようだ。
www.motherjones.com/politics/2012/09/secret-video-romney-private-fundraiser
加えて、税金を払っていないと批判されていたため、やっと納税申告書を公開した。
日本メディアでは情報が足りないので、ここではウォールストリートジャーナル(日本語版)を引用しておこう。
jp.wsj.com/US/Politics/node_516781
【…ミット・ロムニー氏は21日、2011年の納税申告を公表し、ロムニー夫妻の2011年の所得が約1369万ドル(約10億7000万円) で、連邦税の実効税率は14.1%だったことを明らかにした。また、2009年までの20年間の納税記録の概要をまとめた会計士からの書簡も提示した。
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…2011年の納税申告によると、ロムニー夫妻の同年の所得は1369万6951ドル(約10億7000万ドル)で、納税額は193万5708ドル(約1億5000万円)だった。
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ロムニー夫妻の税率が低いのは夫妻が慈善事業に多額の寄付を行っており、税控除を受けていることも影響している。夫妻による寄付は合計400万ドル超で、税控除は225万ドルだった。
また、今回の納税記録の開示によって、ロムニー氏の2011年の所得と納税額が今年1月にロムニー陣営が公表した推計を大きく下回ったことがわかった。1月の推計では、総所得は2090万ドルで、連邦税の納税額は323万ドルに上るとされていた。
…ロムニー夫妻は20年間の平均で調整総所得の13.45%を慈善活動に寄付していたことがわかった。夫妻がこの期間に支払った連邦税、州税および慈善活動への寄付は調整総所得の38.49%を占めた。
なぜロムニー夫妻が開示の対象を過去20年間としたのかははっきりしないが、ジョージ・W・ブッシュ政権時代の2003年にキャピタルゲイン課税の税率が20%から15%に引き下げられたことが要因となったかもしれない。投資収益に対する税率が高かった時代の納税記録を含めれば、ロムニー夫妻の税率は高くなり、税率が低いと批判されている夫妻にとって有利なためだ。】
私も毎年の確定申告で寄付金控除を申告しているが、金額は数万円なので、還付される所得税は、せいぜい1万円くらいだ。
モルモン教徒は所得の10%を寄付するそうだが、それでは借金のある私は生活できなくなるので、やはり金持ちは桁が違う世界で生きているわけだ。
ところで、この記事で気になったのは、ロムニー陣営が公表した推計よりも、実際の納税額が約100万ドルも異なることだ。
この差についてヒントになる記事を探してみたところ、The Salt Lake Tribune 紙に、寄付金額過少申告の記事があった。
www.sltrib.com/sltrib/politics/54943992-90/romney-tax-percent-romneys.html.csp
前述したように、モルモン教徒は通常、収入の10%を教会(The Church of Jesus Christ of Latter-day Saints、LDS)に寄付する。
これは旧約聖書申命記第14章22節以降で述べられている、「収穫の十分の一に関する規定」を根拠にしている。
ただし記事によると、LDS への寄付金は実際には約260万ドルであったのに、申告金額は100万ドル程度に抑えていた。
普通は税金を取り戻したいのだから、寄付金額を全て申告するはずだが、控除額を過少申告してまで、わざわざ税金を多めに払うとは、やはり金持ちのやることは予想外である。
つまりロムニー候補の作戦とは、批判を避けるために、払った税率を多く見せかけて、中間所得層に媚びることなのだ。
それでも税率が13%台というのは、中間所得層よりも7~10%くらい少ない。
そして金持ちなのだから、10%の違いは、実際にはかなりの金額に達する。
私が寄付金をしているのは、税金を払っても自分で援助したい事業に予算が回らないことが多いと感じているから。
ブータンの森や沖縄のサンゴ礁などの保護活動の他、国境なき医師団や国連難民高等弁務官事務所への寄付など、直接関与していることを実感できる。
国に税金の使い道を決めさせずに、自分で直接寄付したいという気持ちは、ロムニー候補と共通かもしれない。
ただし、好感度を上げるために、わざわざ税金を多く払おうというのは変なことだ。
最初に引用したウォールストリートジャーナルの記事で、もう一つ気になっているのは、過去20年間の平均納税率を公表した理由だ。
記事では推測を書いているだけではあるものの、資産家だから配当収入が多いため、キャピタルゲイン課税が引き下げられる前の納税額を含めれば、平均税率を20%台にできるから、これも中間所得層対策なのだろう。
税金に関しては、R. Bradford Malt という会計士に丸投げしているようだが、寄付金の過少申告も会計士の判断なのだろうか。
追記(9月24日):
CNNの日本語記事で、寄付金控除の過少申告について触れていたので引用しておこう。
www.cnn.co.jp/usa/35022132.html
【…
ロムニー夫妻はモルモン教会やてんかんの子どもの支援団体に総額400万ドルを寄付したものの、このうち225万ドルのみを寄付金控除の対象として申告した。
…
1990~2009年の申告を担当した税務事務所は、この20年間の所得税を100%納付したとする文書を発行した。さらに、同期間の税率は平均20.2%で、最も低い年が13.66%だったとの数字を公表した。
同氏が11年の寄付金控除額を低く抑えた背景には、全額を申告してこの「13%」ラインを下回ることは避けたいとの思惑があったとみられる。】
(最終チェック・修正日 2012年09月24日)
これは旧約聖書申命記第14章22節以降で述べられている、「収穫の十分の一に関する規定」を根拠にしている。
ただし記事によると、LDS への寄付金は実際には約260万ドルであったのに、申告金額は100万ドル程度に抑えていた。
普通は税金を取り戻したいのだから、寄付金額を全て申告するはずだが、控除額を過少申告してまで、わざわざ税金を多めに払うとは、やはり金持ちのやることは予想外である。
つまりロムニー候補の作戦とは、批判を避けるために、払った税率を多く見せかけて、中間所得層に媚びることなのだ。
それでも税率が13%台というのは、中間所得層よりも7~10%くらい少ない。
そして金持ちなのだから、10%の違いは、実際にはかなりの金額に達する。
私が寄付金をしているのは、税金を払っても自分で援助したい事業に予算が回らないことが多いと感じているから。
ブータンの森や沖縄のサンゴ礁などの保護活動の他、国境なき医師団や国連難民高等弁務官事務所への寄付など、直接関与していることを実感できる。
国に税金の使い道を決めさせずに、自分で直接寄付したいという気持ちは、ロムニー候補と共通かもしれない。
ただし、好感度を上げるために、わざわざ税金を多く払おうというのは変なことだ。
最初に引用したウォールストリートジャーナルの記事で、もう一つ気になっているのは、過去20年間の平均納税率を公表した理由だ。
記事では推測を書いているだけではあるものの、資産家だから配当収入が多いため、キャピタルゲイン課税が引き下げられる前の納税額を含めれば、平均税率を20%台にできるから、これも中間所得層対策なのだろう。
税金に関しては、R. Bradford Malt という会計士に丸投げしているようだが、寄付金の過少申告も会計士の判断なのだろうか。
追記(9月24日):
CNNの日本語記事で、寄付金控除の過少申告について触れていたので引用しておこう。
www.cnn.co.jp/usa/35022132.html
【…
ロムニー夫妻はモルモン教会やてんかんの子どもの支援団体に総額400万ドルを寄付したものの、このうち225万ドルのみを寄付金控除の対象として申告した。
…
1990~2009年の申告を担当した税務事務所は、この20年間の所得税を100%納付したとする文書を発行した。さらに、同期間の税率は平均20.2%で、最も低い年が13.66%だったとの数字を公表した。
同氏が11年の寄付金控除額を低く抑えた背景には、全額を申告してこの「13%」ラインを下回ることは避けたいとの思惑があったとみられる。】
(最終チェック・修正日 2012年09月24日)