SARS類似の新種コロナウイルス感染者とは知らずに治療していたドイツの病院

(最終チェック・修正日 2012年12月02日)

今年9月、重い呼吸器障害の治療のためにカタールからイギリスに搬送された患者から、SARS類似の新種コロナウイルス(HCoV-EMC)が発見された。
その後も、サウジアラビアとカタールで発症者が見つかり、そのうち10月に発症したカタールの患者一人がドイツで治療を受けて回復した。

世界保健機構(WHO)は11月23日、この新種コロナウイルス感染について、最新の情報を発表した。
WHOに報告された症例は6件で、そのうち2名の患者が亡くなっている。
感染源や、ヒトからヒトへの感染可能性など、未だに不明な点が多い新種ウイルスのため、各国医療関係者に注意喚起がされている。
www.who.int/csr/don/2012_11_23/en/index.html

日本語報道として、朝日新聞を引用しておこう。
www.asahi.com/science/update/1124/TKY201211240203.html
【……AP通信によると、カタールの患者は10月に発症、搬送されたドイツで感染が確認されたが、回復した。

9月にカタールから英国に搬送された男性で感染が確認されて以降、この新種ウイルスによる感染者は計6人で、うち2人が死亡した。WHOでは「SARSのときと状況は違う」としながらも、「これまで関係した国以外にもウイルスは広まっているとみなした方が賢明だ」として、監視強化を呼び掛けている。】

9月に新種ウイルスが確認されてから、感染の有無を検査する手法としてリアルタイムPCR法の利用が推奨されている。
イギリスで最初に単離されたウイルスの遺伝子塩基配列がデータベースに登録されているから、比較することで迅速に感染の有無が判定できるはずだった。

しかし、カタールの患者を受け入れたドイツ・エッセン大学病院では、4週間もの間、新種コロナウイルス感染者とは知らずに治療をしていた
この件について報道している SPIEGEL Online を引用しておこう。
www.spiegel.de/gesundheit/diagnose/patient-mit-corona-virus-wurde-in-essener-klinik-behandelt-a-869057.html

また、新種コロナウイルスの確認を行ったローベルト・コッホ研究所(RKI)のプレスリリースは次の通り。
www.rki.de/DE/Content/Service/Presse/Pressemitteilungen/2012/18_2012.html

10月に急性肺炎となったカタールの患者は、10月24日にドイツ・エッセン大学病院の肺疾患センターに搬送された。
カタールから同行した医師は、この患者が新種コロナウイルスに感染している可能性について、ドイツ側に何も伝えなかった。

そのためエッセン大学病院では、WHOが推奨している迅速検査プロトコルを行わずに、通常の治療を4週間続けた。
患者は回復して今週退院できたものの、RKIからの情報で新型コロナウイルス感染者だと判明し、病院関係者は緊張した。
前述したように、今年9月に確認されたばかりの新種ウイルスで性質は未知であり、ヒト-ヒト間で感染するのかどうかも不明だからだ。

ドイツ搬送前にカタールの医師は、患者の体液サンプルをロンドンの Health Protection Agency(HPA)に送り、分析を依頼していた。
結果は陽性であったにもかかわらず、この事実をエッセン大学病院の医師には全く伝えなかったため、重度の肺炎患者としての治療が始まった。
陽性の結果は22日木曜日になって初めて、RKIを通じてエッセン大学病院に伝えられた。

患者と接触した病院関係者について検査を行ったところ、現時点で感染の疑いはないとのことだ。
またRKIは、ドイツでの感染リスクは非常に低いとの見解を発表している。

ただ、たまたま見つかった症例が6件だけで、サウジアラビアやカタールなどの中東地域で既に感染が広がっている可能性も指摘されている。
海外旅行の前には、厚生労働省や外務省だけでなく、WHOの緊急発表も確認した方がよいだろう。

追記(12月02日):
新種コロナウイルスの検出は9月とされていたが、WHOの11月30日付けプレスリリースでは、実は4月にヨルダンで死者2名が出ていたとのことだ。
保存されていた血液サンプルを検査したところ、感染していたことが確認された。
シリアやイラクからの難民がヨルダンにも流入しているため、難民キャンプでの健康管理対策が必要になるかもしれない。

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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