CNN.co.jpでまた誤訳:ボイジャー2号は太陽から数十億キロメートルのところにまだいるのか?

(最終チェック・修正日 2012年12月06日)

ニュース翻訳という分野は、時間に追われて作業するためなのか、違和感のある和訳であったり、調査不足やケアレスミスによる誤訳を目にすることが多い。

先日指摘したCNN.co.jpでは、「マイアミ州」という存在しない州名で記事を出していた。
私の問い合わせに応じて記事は修正されたものの、今月もまた誤訳を見つけてしまったので、非常に残念である。
誤訳記事が配信されているならば、和訳記事は信用せずに元の英語記事だけ読んで、独学するしかない。

誤訳を見つけたのは、12月4日に配信されたボイジャー探査機のニュースである。
和訳記事と元の英語記事は、それぞれ次の通り。
www.cnn.co.jp/fringe/35025216.html (和訳)
edition.cnn.com/2012/12/03/us/space-voyager-solar-system/ (英語)

私が誤訳だと判断したのは、記事の最後の部分である。
最初は、太陽からの距離が間違っていることに気付いた。
続いて、和訳と英語原文とを並べて比べると、「closer」という単語を誤訳しているとわかった。

【ボイジャー2は…、太陽から数十億キロの距離にある。】

【Voyager 2, …, is a few billion miles closer to the sun.】

「ボイジャー2号は、
ボイジャー1号よりも太陽に近い」という文意を見落としている。

まず和訳記事にある、「太陽から数十億キロの距離」とは、どのあたりに相当するのだろうか。
明確な距離表示ではないので、天王星から海王星の範囲と考えてよいだろう。
すると、既に探査を終えた惑星の近くに、今でもボイジャー2号がとどまっていることになってしまう。

実際には、1986年に天王星に接近し、次いで1989年に海王星に接近しており、現在は太陽系外縁部に向かって飛行中である。
ボイジャー探査機のことを知っている人ならば、この和訳記事を見た時点で、違和感を持つことだろう。
そして、誤訳または元の英文が間違っていると疑うのではないか。


もし、惑星探査の歴史を全く知らない翻訳者が担当したとしても、ボイジャー探査機の概要くらいは、すぐにネット検索して確認すれば済むことだ。
加えて、納品された和訳について、チェッカーとエディターは、最終的な確認作業を丁寧に実施してほしい。


次に、「closer」について考えよう。
この記事の主題はボイジャー1号なのだから、太陽からの距離を比較する相手を省略しても、文意は明白である。
もし、「closer」を見落としたとしても、「太陽からの」と和訳するには、元の英文が「from the sun」でなければならない。
とにかく誤訳だということは明らかなので、問い合わせフォームで修正依頼をしておいた。


ボイジャー2号は、太陽から約150億キロメートルの距離を飛行中で、1号よりも約30億キロメートルだけ太陽に近い。
この距離について記載しているドイツ語記事を、最後に引用しておこう。
www.astronews.com/news/artikel/2012/12/1212-005.shtml

【Voyager 2 ist "nur" rund 15 Milliarden Kilometer von der Sonne entfernt …】

CNNの記事が訂正されたら、追記しておこう。

追記(12月6日):
今朝、再確認したところ、和訳記事の最後の部分が修正されていた。
【ボイジャー2は別の行程をたどっていて、現在、ボイジャー1より太陽に数十億キロ近いところにある。】

テーマ : 英語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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