放射性炭素14の漏洩事故があったミュンヘン工科大学の研究用原子炉が運転再開

ミュンヘン近郊のガーヒンク(Garching)には、ミュンヘン工科大学の研究用原子炉施設 FRM II がある。
www.frm2.tum.de/

この FRM II では、高濃縮放射性ウランを中性子源に用いて、物理や化学、生物学、医学の基礎研究が広範に行われている。
また医療分野では、腫瘍に中性子を照射するという方法で、がん治療も実施されている。

中性子をそのまま使う研究だけではなく、核反応にも利用して、炭素14などの放射性核種の合成も行われている。
化学や生物学では、反応機構や代謝経路などの研究で、放射性炭素14で標識した化合物を使うことがある。
取り扱いには特別な設備が必要なため、非放射性同位体の炭素13で代用することもあるが、現在でも様々な基礎研究に必要とされる放射性核種である。

発電用原子炉よりは小型で、出力20Mwだとしても、放射性物質や設備の管理は厳重に行う必要がある。
しかし FRM II では定期検査時や燃料棒交換時に、冷却系統のトラブルなどが見つかっている。
それに加えて、報告義務があるトラブルも多く、管理体制についても批判されていた。

そして先月11月9日には、放射性炭素14の漏洩のために、原子炉は停止された。
年間放出許容値の上限に近付いたための措置とのことだが、詳細については公表されていない。
その後の洗浄処置で再利用可能となったため、12月6日から再稼働している。
ただし21日からはクリスマス休暇で停止している。
研究施設の発表は次の通りで、今回の漏洩では許容値を超えていないとのことだ。
www.frm2.tum.de/aktuelles/news/einzelnews/article/30-zyklus-fortgesetzt/index.html

施設関係者や周辺住民に被害はなかったものの、あまりにも簡単な発表のため、バイエルン州議会の緑の党やドイツ社会民主党は、今回のトラブルについて情報公開を求めている。
ドイツメディアの報道を、2件引用しておこう。
www.sueddeutsche.de/muenchen/abschaltung-des-garchinger-reaktors-spd-fordert-aufklaerung-1.1556203
www.abendzeitung-muenchen.de/inhalt.garching-erhoehte-radioaktive-werte-forschungsreaktor-abgestellt.e2052bd0-69d7-432e-af8a-38e88d625a5e.html

過去の軽微なトラブルも含めて、ミュンヘン工科大学とバイエルン州政府環境省は、原子炉を管理できていないと批判されている。
連邦放射線防護庁(Bfs)は FRM II の管轄権限を持っておらず、今回は放射線量の測定を行っただけである。

大学側は、核反応で合成した放射性炭素14の漏洩は、原子炉の管理と直接の関係がないとも説明している。
つまり、中性子源の原子炉は管理できているが、中性子を使う外側の実験施設での問題と言いたいようだ。

放射性核種は基礎科学の実験で必要な場合もあるので、動物実験などと同様に情報公開をして説明責任を果たすことが、研究を行うための最低条件ではないだろうか。

テーマ : 原子力問題
ジャンル : ニュース

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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