合成麻薬LSDの製造でジクロロメタンが溶媒ではなく触媒?

(最終チェック・修正日 2013年01月08日)

今日4日の15時からナショナル・ジオグラフィック・チャンネルで放送された、「潜入! 合成麻薬LSD」を観た。
日本語ナレーション付きの二か国語版で、日本初放送のドキュメンタリー番組である。
www.ngcjapan.com/tv/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/406

専門分野の化学関連の番組なので、英語音声にしても理解可能だが、家事などをしていたので日本語音声を選んだ。
すると番組が半分くらい過ぎたところで、違和感のある表現に遭遇した。

それはLSDの密造現場に捜査員が入った映像の場面で、棚にある薬品ビンについて話していた部分だ。
録画していないため確実ではないが、記憶では、「触媒にジクロロメタンを使っている」と聞こえた。
ジクロロメタンは溶媒として使うのが普通なので、LSDの合成で、どうして触媒になるのか全く想像できなかった。

LSDと関連誘導体の合成法は、既に特許や論文で公開されているので、ネット検索でも見つけることはできる。
論文も含めて、いくつかの資料でLSDの合成法を確認した。
ただし、合成麻薬の資料のリンクを提示したくない。
私が確認に使った資料を明示しないが、合成法を調べたことは信じてほしい。

金属触媒を使っていることはあっても、ジクロロメタンは溶媒であり、触媒としての使用例は見つからなかった

ただし録画をしていなかったので、元の英語が間違っているかどうかの確認はできなかった。
ということで、番組放送中にカスタマーセンターに電話をして、元の英語と日本語ナレーションの確認を依頼した。
返答が来るのは来週以降になるだろう。

昨年は何度も誤訳を見つけて、修正を依頼したので、今回も誤訳ではないかと疑っている。
誤訳を指摘する度にチェック体制の確立を依頼したのに、新番組に間に合わなかったのだろうか。
やはり翻訳者だけではなく、映像翻訳会社のチェッカーと、依頼元の番組製作会社には理系知識を持つ人材が必要だ。

自分が興味を持った番組だけ観ているので、もし全番組の日本語ナレーションや字幕を精査したら、誤訳はもっと見つかるかもしれない。

「誤訳が気になるなら英語音声だけにすればいい。」と言われそうだが、映像翻訳の勉強のためにも日本語音声にしている。
auひかりTVの料金を支払いながら、何の対価もなく誤訳の指摘をしているのは、自分の能力の確認にもなるからだ。
そして誤訳が修正されることで、再放送を視聴する人たちに、正しい情報が伝わることを望んでいる。

ということは、私は翻訳者になるよりも、チェッカーの仕事の方が向いているのかもしれない。

追記(1月8日):
カスタマーセンターから回答があり、私の指摘通り、誤訳であることを確認したそうだ。
現時点で再放送の予定はないとのことだが、次回放送までに修正版を作成するとのことだ。

字幕ではなくナレーションなので、わずか数秒のことなのに、ナレーターとスケジュール調整をして、再録音しなければならない。
正しい情報を提供することがドキュメンタリー番組の使命なのだから、予定外の経費がかかっても修正してほしい。

誤訳を毎月のように指摘したためか、今回は対応する英語ナレーションの原稿についても明記してくれた。
「… dichloromethane, which is used as a solvent …」とのことで、ジクロロメタンは「溶媒」であり、決して「触媒(catalyst)」ではない。

また、専門的な内容のドキュメンタリー番組では、できるだけ監修を入れているとのことだが、今回の誤訳を見逃した原因や理由については、何も明言してなかった。

私は本業があるので、映像翻訳チェッカーとしての副業は時間的に厳しいだろう。
受託した翻訳会社内でのチェックの強化と共に、FOXジャパンでの検収・監修の体制を整えてほしいものだ。

テーマ : 英語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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