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天文学用語の「dark clouds」は「暗黒星雲」としてほしい

(最終チェック・修正日 2013年01月18日)

私が興味を持ったニュースやテレビ番組で、毎月何件か誤訳を見つけている。
主に自然科学系の記事や番組をチェックしているのだが、専門用語が間違っていることが気になっている。
理系離れだとか、文系・理系の断絶ということを証明する実例のようだ。
 
今回引用するAFPの記事では、英語記事の「dark clouds」を「暗雲」と和訳している。
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2921108/10116615
【欧州南天天文台…は14日、…さそり座の方向にある新たな星を形成する暗雲…の画像を公開した。】

天文関係の記事なのだから、これは「暗黒星雲」とすべきである。
この件について17日22時過ぎに、問い合わせフォームで質問しておいた。
(追記(1月18日):私の指摘通りに、「暗黒星雲」に修正された。)

「暗雲(あんうん)」の意味は、広辞苑第六版では次のように記されている。
いずれも、宇宙にある暗黒星雲には適用できない。

【①あたりが暗くなるほどの厚い雨雲。
② (比喩的に)危険・破局などの起こりそうな不安な気配。また、心がはればれしない様子。】

「暗黒星雲」に対応する英語は、学術用語としては「dark nebula」なので、元の英語記事が「dark clouds」では「暗雲」と和訳しても仕方ないかもしれない。
ただ、日常的に使用する単語で置き換えることはよくあるので、文意を把握して、適切な訳語を選択してほしい。
今回の記事も含めて、構文や文法の解釈は正しいのに、個々の専門用語の選択が間違っていることがほとんどだ。
つまり、単純に語句の置換をしているだけで、対象分野や文意に配慮していないということだ。
こんな和訳では、機械翻訳みたいなレベルであり、人間の翻訳者が作業した意味がない。
 
加えて、納品された翻訳をチェックする体制が整っていないことも問題だ。
私は平日日中は本業の仕事があるので、チェッカーとして採用されることはないだろう。
翻訳専業の人たち、そしてチェックをする人たちが、翻訳対象の分野の基礎知識を持つ努力をしてほしいものだ。

テーマ : 英語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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