シャヴァーン独教育相は、博士号を剥奪した大学を告訴するために辞任する?

ドイツ留学中に観たテレビ番組の中で、「ドイツ人が欲しがる肩書は Dr. 」というものがあった。
住民登録の書類には学位を記入する欄があるし、宛名では Prof. Dr. rer. nat. などの肩書を正確に書かないと失礼になる。
そんな学歴身分社会の環境だからなのか、社会的地位の証しとして欲しがるようだ。
表札に Dr. と書いて自慢するために、東欧などの大学に金を払ってまで、博士号をもらう人もいるとのことだった。

Dr. という肩書を欲しがるのは一般人だけではなく、政治家であっても同じで、権威付けのために欲しいようだ。
アンゲラ・メルケル首相のように、実際に研究者生活をしていたことが明白な場合は信用されるが、歴史学や哲学といった非実験系の学問では、まじめに研究している人には悪いが、「適当に作ったお話しを書くだけで博士号を取れる」とバカにされることも多い。

アンネッテ・シャヴァーン教育相は、ボン大学とデュッセルドルフ大学で哲学と教育学を学んだ。
博士論文「Person und Gewissen(人間と良心)」を提出し、1980年9月にデュッセルドルフ大学から哲学博士(Dr. phil.)を授与された。

しかしその博士論文について、「他の論文から盗用した部分が多く見られる」という匿名の告発が、2012年4月にインターネット上で公開された。
まとめサイト(ブログ)は次の通り。
schavanplag.wordpress.com/

告発を受理したデュッセルドルフ大学哲学部は、今年2月5日に、シャヴァーン教育相の博士号剥奪を決定した。

博士号剥奪に関する、デュッセルドルフ大学のプレスリリースは次の通り。
www.uni-duesseldorf.de/home/startseite/news-detailansicht/article/aktuelle-sitzung-des-fakultaetsrats-der-philosophischen-fakultaet-und-presseerklaerung-vom-0502.html

日本語記事として、AFPを引用しておこう。
www.afpbb.com/article/politics/2926329/10229791

シャヴァーン教育相は、この決定を認めず、デュッセルドルフ大学に対して司法手続き(告訴)を検討しているとのことだ。
しかし9日土曜日に、教育相を辞任することを突然発表した。

ドイツ連邦政府のプレスリリースは次の通りで、辞任に触れているものの、タイトルは「閣僚の交代」としている。
www.bundesregierung.de/Content/DE/Meldungen/2013/02/2013-02-09-wanka-folgt-schavan.html

また、メルケル首相とシャヴァーン教育相の声明は次の通り。
www.bundesregierung.de/Content/DE/Mitschrift/Pressekonferenzen/2013/02/2013-02-09-statements-merkel-schavan.html

この声明でもシャヴァーン前教育相は、デュッセルドルフ大学の決定を認めていないことを、明確に主張している。
そして辞任の理由とは、決して論文盗用疑惑ではなく、「大臣のままで大学側を告訴すると、教育・研究省や政府などに影響するから」だという。

ドイツのメディアでは疑惑発覚時点から継続的に報道されているが、全てを網羅できないので、最近の SPIEGEL Online の記事を引用しておこう。
www.spiegel.de/politik/deutschland/schavan-tritt-als-bildungsministerin-zurueck-a-882389.html (辞任について)
www.spiegel.de/politik/deutschland/chronologie-die-plagiatsaffaere-von-annette-schavan-a-882397.html (告発後の経緯)

シャヴァーン前教育相は、他にも肩書を持っている。
例えば2009年には、ベルリン自由大学名誉教授の称号が授与されている。
外国の複数の大学からは名誉博士号を授与されているので、今回の辞任と博士号剥奪事件は、各方面に影響することだろう。

後任の教育相はヨハンナ・ヴァンカ(Johanna Wanka)で、2010年4月からニーダーザクセン州政府の教育・文化相をしている。
経歴を見ると、ライプツィヒ大学で数学を専攻し、博士号を授与されている。
そしてメルゼブルク大学で技術数学の教授になっているので、肩書は Prof. Dr. となる。
www.mwk.niedersachsen.de/portal/live.php (経歴)

この大臣交代が次の選挙にどう影響するのか、今後も様々な報道が続くことだろう。

テーマ : 教育問題
ジャンル : ニュース

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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