「細菌を排出させる効果のある遺伝子を組み込んだBTトウモロコシ」とは何だ?
(最終チェック・修正日 2013年06月13日)
AFPやCNNで日本語訳記事を読んでいると、月に1回くらい、意味がわからない表現に出会うことがある。
誤訳のこともあるが、元の英語記事が間違っているのに、そのまま和訳してしまい、余計に意味不明の記事になっていたこともある。
6月11日配信のAFPBBでも、遺伝子組み換え作物の記事中に、意味がわからない個所を見つけた。
「害虫抵抗性作物への耐性持つ害虫が増加、研究」
www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2949713/10887620
【米仏の研究者からなるチームは、害虫にとって有毒なバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis、Bt)と呼ばれる細菌を排出させる効果のある遺伝子を組み込んだ、いわゆる「BTトウモロコシ」や「BT綿」に関する、5大陸8か国における77件の研究を詳しく分析した。】
遺伝子組み換え作物が生産しているのは、殺虫活性タンパク質であって、細菌そのものではない。
バチルス・チューリンゲンシスという学名の細菌は、元々、殺虫活性タンパク質を生合成する遺伝子を持っている。
その遺伝子を組み換え技術でトウモロコシやワタに導入することで、植物体内で同じタンパク質が生産される。
ということで、誤訳なのかと疑い、英語記事を探してみた。
www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5gkQ3IN4hx0rS9dmxAQgaWzlWKaVg
AFPやCNNで日本語訳記事を読んでいると、月に1回くらい、意味がわからない表現に出会うことがある。
誤訳のこともあるが、元の英語記事が間違っているのに、そのまま和訳してしまい、余計に意味不明の記事になっていたこともある。
6月11日配信のAFPBBでも、遺伝子組み換え作物の記事中に、意味がわからない個所を見つけた。
「害虫抵抗性作物への耐性持つ害虫が増加、研究」
www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2949713/10887620
【米仏の研究者からなるチームは、害虫にとって有毒なバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis、Bt)と呼ばれる細菌を排出させる効果のある遺伝子を組み込んだ、いわゆる「BTトウモロコシ」や「BT綿」に関する、5大陸8か国における77件の研究を詳しく分析した。】
遺伝子組み換え作物が生産しているのは、殺虫活性タンパク質であって、細菌そのものではない。
バチルス・チューリンゲンシスという学名の細菌は、元々、殺虫活性タンパク質を生合成する遺伝子を持っている。
その遺伝子を組み換え技術でトウモロコシやワタに導入することで、植物体内で同じタンパク質が生産される。
ということで、誤訳なのかと疑い、英語記事を探してみた。
www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5gkQ3IN4hx0rS9dmxAQgaWzlWKaVg
【The paper delves into a key aspect of so-called Bt corn and cotton -- plants that carry a gene to make them exude a bacterium called Bacillus thuringiensis, which is toxic to insects.】
「細菌を排出させる…遺伝子」となったのは、英語原文そのままを和訳したからだ。
つまり誤訳でも勘違いでもなく、元の英語記事が間違っていたため、和訳記事も違和感を抱く表現になったわけだ。
この部分が、例えば以下の表現であれば、正しく伝わったのではないだろうか。
「… a gene from a bacterium called Bacillus thuringiensis to produce an insecticidal protein.」
翻訳者や日本語版制作会社は、英語原文が間違っているかどうかを判断して、正確な内容で再編集すべきなのだろうか。
元の記事の内容が間違っていても、それは和訳記事を作成する会社の責任ではない。
それでも、明らかに間違いならば、独自判断で注を付けてもよいのではないだろうか。
まあ英語圏の新聞でも、このAFP英語記事をそのまま掲載しているので、日本の翻訳者だけを責めることはできないだろう。
別の英語表現として、次の記事を参考にしてほしい。
www.medicaldaily.com/articles/16374/20130610/genetically-modified-crops-insecticide-resistance-gm-technology-monsanto-bt-crops.htm
【These crops contain genes from the bacterium Bacillus thuringiensis (Bt), which were introduced to make them impenetrable to insect pests.】
問い合わせをしたので、回答を待とう。
追記(6月12日):
本日、帰宅後に確認してみると、指摘した部分が以下のように変更されていた。
【…害虫にとって有毒なバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis、Bt)と呼ばれるタンパク質を排出させる効果のある遺伝子を組み込んだ…】
「細菌」を「タンパク質」に変えただけで、私の指摘について、どうやら勘違いしているようだ。
もし私が添削する立場ならば、英語原文を無視して、次のようにするだろう。
「…殺虫活性タンパク質を生産するように、バチルス・チューリンゲンシス由来の遺伝子を組み込んだ…」
ニュース翻訳では、ある程度編集して、日本語として読みやすい記事にするのだから、原文で使っている動詞などにとらわれずに作業してほしいものだ。
追記2(6月13日):
さらに修正が行われたが、私の指摘は反映されなかった。
【…害虫にとって有毒なバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis、Bt)と呼ばれる細菌タンパク質を排出させる効果のある遺伝子を組み込んだ…】
残念なことだが、これでいいと思っているようなので、あきらめて、修正の要望はやめておこう。
「細菌を排出させる…遺伝子」となったのは、英語原文そのままを和訳したからだ。
つまり誤訳でも勘違いでもなく、元の英語記事が間違っていたため、和訳記事も違和感を抱く表現になったわけだ。
この部分が、例えば以下の表現であれば、正しく伝わったのではないだろうか。
「… a gene from a bacterium called Bacillus thuringiensis to produce an insecticidal protein.」
翻訳者や日本語版制作会社は、英語原文が間違っているかどうかを判断して、正確な内容で再編集すべきなのだろうか。
元の記事の内容が間違っていても、それは和訳記事を作成する会社の責任ではない。
それでも、明らかに間違いならば、独自判断で注を付けてもよいのではないだろうか。
まあ英語圏の新聞でも、このAFP英語記事をそのまま掲載しているので、日本の翻訳者だけを責めることはできないだろう。
別の英語表現として、次の記事を参考にしてほしい。
www.medicaldaily.com/articles/16374/20130610/genetically-modified-crops-insecticide-resistance-gm-technology-monsanto-bt-crops.htm
【These crops contain genes from the bacterium Bacillus thuringiensis (Bt), which were introduced to make them impenetrable to insect pests.】
問い合わせをしたので、回答を待とう。
追記(6月12日):
本日、帰宅後に確認してみると、指摘した部分が以下のように変更されていた。
【…害虫にとって有毒なバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis、Bt)と呼ばれるタンパク質を排出させる効果のある遺伝子を組み込んだ…】
「細菌」を「タンパク質」に変えただけで、私の指摘について、どうやら勘違いしているようだ。
もし私が添削する立場ならば、英語原文を無視して、次のようにするだろう。
「…殺虫活性タンパク質を生産するように、バチルス・チューリンゲンシス由来の遺伝子を組み込んだ…」
ニュース翻訳では、ある程度編集して、日本語として読みやすい記事にするのだから、原文で使っている動詞などにとらわれずに作業してほしいものだ。
追記2(6月13日):
さらに修正が行われたが、私の指摘は反映されなかった。
【…害虫にとって有毒なバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis、Bt)と呼ばれる細菌タンパク質を排出させる効果のある遺伝子を組み込んだ…】
残念なことだが、これでいいと思っているようなので、あきらめて、修正の要望はやめておこう。