BBC World News:アイスランドへの観光客がクジラステーキを食べている

自然環境の厳しいアイスランドでは、ヨーロッパ本土と同じ規模での酪農は困難で、生きるために昔から海の幸を利用してきた。
クジラも魚と同様に、重要な動物性タンパク質の供給源であった。

捕鯨モラトリアムのために商業捕鯨を中断していたが、調査捕鯨の実施後に再開している。
アイスランド政府はEU加盟を希望しているが、反捕鯨国のオランダなどが、捕鯨禁止を加盟条件に加えると言われている。
ミンククジラはアイスランド国内で消費しているものの、ナガスクジラは日本への輸出向けに捕獲しているということで特に批判されている。

それに対してアイスランドで鯨肉料理を出しているレストランのシェフは、「鯨肉食はアイスランドの文化だ。他国から批判されるいわれはない」と反発している。
また、ナガスクジラ捕鯨をしている会社のロフトソン CEO は、「アイスランドではクジラは魚と同じだ」とも言っている。

ノルウェーやフェロー諸島も含めて、同じヨーロッパ域内でも捕鯨を巡って対立している。
反捕鯨国では様々な団体が、アイスランド産水産物のボイコット運動を活発化させている。
また、アイスランドへの観光客に対して、興味本位で鯨肉料理を食べることがないようにと呼び掛けている。

観光客が鯨肉料理を食べているという報道は、これまでも新聞などでいくつか見られた。
そしてBBCが World News の中の Fast Track というコーナーで、このアイスランドでの鯨肉食について9月28日に取り上げた。
www.bbc.co.uk/programmes/p01hm7sp

再生してみると、確かに観光客がレストランで鯨肉ステーキを食べている。
観光客にしてみれば、アイスランドでしか食べられない珍しいエスニック料理という感覚なのだろう。
反対派としてシーシェパードなども出ていたが、持続可能な捕鯨を主張する人も出ていて、両方の意見を聞くことができる。
(注:捕鯨の映像として日本の南極海調査捕鯨の様子だけでなく、シーシェパードとの攻防の様子まで使われている)

ただ、このレポートに対して視聴者から寄せられた意見は、ほぼ全てが鯨肉食反対の立場だったという(10月5日放送)。
鯨肉食は自然への敬意を払っていないという批判もあれば、アイスランドにオーロラ観光に行く予定だったのに行き先をカナダに変更した人までいたそうだ。

観光客もインタビューに答えていたように、食べるかどうかは個人の判断に任せればよいことだ。
私は鯨肉を食べたいとは思わないが、食べたい人に食べるなと言ったことはない。
ただ、環境への影響や、持続可能な方式なのかどうかの検証や、安全性の情報などが公開されることは必要だと思う。

ところでところでこのレポートでは後半で、もう1つの鯨肉消費国の日本で、需要が減り続けていると紹介していた。
日本では最近、学校給食に鯨肉料理を取り入れて、「日本の食文化を学ぶ」という食育をしようとしている。
ただし、鯨肉食は「一部地域の食文化」であって、決して「日本全体の食文化」ではない。

昔からの捕鯨の町ならば学校給食に出ても不思議ではないが、大半は食糧難時代に仕方なく食べていたのに、懐かしい食材として復活させようというのは無理やりな感じがする。
他に食べるものがなく、選択の余地はなかったという地域では、鯨肉食が文化になるはずもない。

それに、「欧米は鯨油だけが目的で肉を捨てていた」という話も極端すぎる。
第二次大戦前のドイツの捕鯨船団では、鯨肉缶詰も生産していて、畜肉の代用として Polaris という商品名で売られていた。
また、「日本では鯨の全てを捨てることなく利用した」という主張も、文化に優劣の評価を持ちこもうという意図があって嫌だ。

反捕鯨国や環境保護団体に対する暴言のなかに、「キリスト教の価値観を日本に押しつけようとしている」というものもあった。
しかし、捕鯨国のノルウェーやアイスランドでは大半がキリスト教徒という事実を、どう説明しようというのだろうか。

テーマ : 海外食生活
ジャンル : 海外情報

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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