岩波ホールで映画「ハンナ・アーレント」を観た

「週刊金曜日」10月18日号の映画紹介で、アイヒマン裁判に関係する「ハンナ・アーレント」(監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ)について知った。
東京・神田神保町の岩波ホールで、10月26日から上映されているものの、映画館で座って観る環境はどうも苦手なので、DVDを買う予定だった。
ただし先週、この映画を観た人から勧められ、また、哲学の研究者から観たかどうか尋ねられたので、有給休暇を取得して岩波ホールに向かった。

岩波ホールのHPと、映画「ハンナ・アーレント」の公式HPは次の通り。
www.iwanami-hall.com/contents/top.html
www.cetera.co.jp/h_arendt/

【1960年代初頭、何百万ものユダヤ人を収容所へ移送したナチス戦犯アドルフ・アイヒマンが、逃亡先で逮捕された。アーレントは、イスラエルで行われた歴史的裁判に立ち会い、ザ・ニューヨーカー誌にレポートを発表、その衝撃的な内容に世論は揺れる…。
「考えることで、人間は強くなる」という信念のもと、世間から激しい非難を浴びて思い悩みながらも、アイヒマンの<悪の凡庸さ>を主張し続けたアーレン ト。歴史にその名を刻み、波乱に満ちた人生を実話に基づいて映画化、半世紀を超えてアーレントが本当に伝えたかった<真実>が、今明かされる─。】

アイヒマンが単なる歯車である事務官僚であったことは知っていたものの、裁判の実写フィルムと肉声から、やはり強い印象を受けることになった。
考えることをやめて人間性を失い、命令に忠実である組織の歯車となった普通の人間が、悪を行ってしまう恐ろしさも再認識した。
日本軍が第二次大戦中に行った残虐行為ののなかには、アイヒマンと同じように、考えることをやめた人間たちが行ったものがあると思われる。

現在の日本でも官僚の無作為が批判されることが多いのだが、業務命令だからと言い訳し、自分の行為に全く責任を感じない人たちは、どこにでもいるものだ。
非加熱血液製剤によるHIV感染薬害の発生から数年後の
NHK特集番組で、当時の担当官が、「何も覚えていない」と、躊躇せずに発言したことを、私は絶対に忘れない。

また、正しいと信じることを貫くことで、友人を失ったり、同胞から裏切り者扱いされる辛さについても、いろいろと考えるきっかけとなる。
哲学者アーレントとは比較にならないレベルかもしれないが、私は文部科学省の新規事業を批判する投稿をしたことがあり、そのため
私の指導教授は学界重鎮から猛烈な抗議を受けた。
加えて、ある大学での実験廃棄物不法投棄を内部告発したため、私は大学にとって危険人物として認識され、推薦状をもらうことは不可能となった。
大学に残れなくなったため、私の研究は途中で終わったわけだが、それよりも一貫して、権威にすり寄ることをしなかったことの方が、私にとっては重要である。

欧米のみならず、昨年の東京国際映画祭でも絶賛されたとのことで、今後も日本各地で上映される予定である。
それなのに、なぜか関東地区では、岩波ホールだけなのは残念だ。
岩波ホールは一度に220人しか入れないこともあって、平日昼間でもチケットはすぐに完売してしまう。
今の日本は、基本的人権が危うい国になろうとしており、こういった映画を一人でも多くの人に観てほしいものだ。

ところで、英語とドイツ語が入り混じった映画であったが、字幕を参考にしながらも、たいていは聞き取りできたので自信がついた。
字幕を参考にしたと言っても、セリフと完全に内容が一致するわけではないので、とまどうこともあったが、それは翻訳の勉強になったと思うようにしている。
また、英語よりはドイツ語の方が聞き取りやすかったのは、毎朝NHKラジオでドイツ語講座を聴いているからかもしれない。
これからも地道に語学の勉強を続けていこうと思った一日だった。

テーマ : ヨーロッパ映画
ジャンル : 映画

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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