文部科学省の「英語教育改革実施計画」は英語産業へのばらまき?

民主党が政権政党であったとき、行政刷新会議で事業仕分けという見直し作業が行われた。
そのなかで、文部科学省の「英語教育総合改革プラン」は「廃止」と決定され、平成23年度予算から消えることになった。

事業仕分けワーキンググープの評価コメントは次の通り。
www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov11kekka/3-7.pdf

廃止を受けて出された文部科学省の資料は次の通り。
www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/082/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/01/31/1300465_05.pdf

ただし、英語教育、特に小学校での早期英語教育の実施について、なぜか文部科学省は積極的であり、12月13日に「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を発表した。
www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/082/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/01/31/1300465_05.pdf

【初等中等教育段階からグローバル化に対応した教育環境づくりを進めるため、小学校における英語教育の拡充強化、中・高等学校における英語教育の高度化など、小・中・高等学校を通じた英語教育全体の抜本的充実を図る。
2020年(平成32年)の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、新たな英語教育が本格展開できるように、本計画に基づき体制整備等を含め2014年度から逐次改革を推進する。】

一度廃止になったとしても、官僚は予算獲得と権益保持を目指して努力していたわけだ。
「グローバル化」していると、どうして英語の会話力が必要なのか、また、開催期間が1か月程度の東京オリンピック・パラリンピックを取り上げる意味などについては、この資料からはわからなかった。

今後の会議で詳細を決めるのだろうが、小学校英語の拡充強化が狙っていることの1つは、英語産業への予算のばらまきである。
省庁の予算に群がる者たちは、いつの時代にも、どこにでもいて、「英語ムラ」という利益誘導を目的とした集団も発生しているのだ。
彼らは自分たちの利益を優先するため、世の中に英語を必要とする人たちが本当はどれくらいいるのかなど、統計に基づく議論は絶対にしない。

例えばベネッセは、以前から文部科学省の委託で研究会に参加して、小学校英語用の教材開発を行っており、さらに子ども向け英語教室なども運営し、事業説明でも、英語関連事業が有望なビジネスであることを公言している。
www.benesse.co.jp/global/
www.benesse-hd.co.jp/ja/about/management/middleplan.html

文部科学省や財界の一部が進めたい小学校英語については、英語教育研究者などが批判しているのだが、一般の「英語が話せたらいいなー」という願望が後押ししているためか、反対運動は盛り上がらないようだ。

3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による大震災と、東京電力福島第一原発の事故は、今日も世界中で報道されている。日本国内でも、情報が隠されているのではないか、どうして官僚的回答しかしないのかなど、同じ日本語を使っている人同士でも、なぜコミュニケーションが成立しないのか疑問に思う日々が続いている。誇張された海外報道を引用する日本のメディアもあるが、これは情報発信する側の日本政府や東京電力などにも...
「国際共通語としての英語」(鳥飼玖美子著・講談社現代新書)


現在、小学校5・6年生では、年間35時間の「外国語活動」が必修になっている。
ここで強調したいのは、「言語や文化を学ぶ外国語活動」であって、「英語のみ」ではないことだ。

文部科学省の担当部局は、「初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室」であり、HPでの記載からも、英語だけを推進するはずはないと思いたい。

【外国語活動においては、音声を中心に外国語に慣れ親しませる活動を通じて、言語や文化について体験的に理解を深めるとともに、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成し、コミュニケーション能力の素地を養うことを目標として様々な活動を行います。】

「外国語活動」で取り上げる言語の1つとして、「例えば英語」と例示しているだけで、その地域の実情に合わせて、ロシア語や中国語、ポルトガル語でもかまわない。
地方自治体の広報誌を見れば、英語以外の外国語版を発行していることもあるのだから。

www.koho.or.jp/useful/research/2000/index.html (日本広報協会、2000年の調査)
【言語別では、英語30、ポルトガル語15、中国語8、スペイン語4、韓国語2の順で多い。ちなみに、3言語以上の広報紙を発行しているのは9自治体。 】

また、文部科学省が今回提示した資料の最後に、「日本人としてのアイデンティティに関する教育の充実について」という気になる記述があった。
伝統文化を学ぶ機会を作ることはかまわないが、「武道の必修化」や「道徳教育の改善・充実」など、別の目的を達成するために、英語教育の計画を利用している。

「国際化」と言いだしてから30年以上も経ったのに、英語の授業でコミュニケーションの時間の割合を増やしたのに、いつも目標が達成されないのはなぜだろう。
その検証をしないまま、「小学校3年生から英語を始めれば国際社会で活躍する人材が生まれる」、と考えるのは変だ。

英語が得意な人が数%増えるかもしれないが、多数の英語嫌いや落ちこぼれを生んだとしても、無視するのだろうか。

テーマ : 英語・英会話学習
ジャンル : 学校・教育

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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