南極海調査捕鯨は科学ではないが食文化が否定されたわけではない

日本が実施している調査捕鯨について、「科学研究ではなく疑似商業捕鯨だ」という批判が長く続いていた。
オーストラリア政府が国際司法裁判所(ICJ)に提訴し、「南極海調査捕鯨は非科学的で条約違反」という判決が3月31日に下された。
英語で発表された判決のプレスリリースは以下の通り。
www.icj-cij.org/docket/files/148/18162.pdf
【…
(7) decides, by twelve votes to four, that Japan shall revoke any extant authorization, permit or licence granted in relation to JARPA II, and refrain from granting any further permits in pursuance of that programme.】

日本政府はこの判決を受け入れると発表したので、現在実施している南極海調査捕鯨は中止となる。
それに加えて、新たに調査捕鯨の計画を考えるとしても、捕獲を中心とした計画のままで再開することは、ほぼ無理になった。

日本とオーストラリアだけではなく、多数の国のメディアが取り上げているので、メモ代わりにリンクを示しておこう。

捕鯨国のノルウェーとアイスランドの報道は、それぞれ次の通り。
www.nrk.no/nordland/japan-ma-stanse-hvalfangst-1.11641348
www.mbl.is/frettir/erlent/2014/03/31/hvalveidar_japana_bannadar/

日本の南極海調査捕鯨が中止になった場合、シーシェパード(SSCS)が北大西洋の捕鯨をターゲットにすると発表したため、アイスランドでは警戒している。
ruv.is/frett/beina-sjonum-sinum-ad-islandi
grapevine.is/Home/ReadArticle/Sea-Shepherd-Coming-For-Iceland

反捕鯨国のメディアとして、ドイツの報道を引用しておこう。
www.spiegel.de/wissenschaft/natur/walfang-japan-muss-jagd-auf-wale-in-der-antarktis-beenden-a-961632.html
www.zeit.de/wissen/umwelt/2014-03/japan-walfang-verbot-den-haag-internationaler-gerichtshof-reaktionen

ところで、今回のICJの判決のニュースを見ていて、クジラを食べる文化まで否定されたと勘違いしている人がいるように思えた。
裁判の焦点は、「日本が実施している調査捕鯨は目的や手法を含めて科学的かどうか」であって、決して、捕鯨やクジラ食文化の善悪を判断するものではなかった。

しかし報道を見ると、食文化が失われると嘆く声などが取り上げられている。
あるテレビニュースでは、インタビューで怒りをあらわにしているクジラ料理専門店の店長を見た。

この反応自体が、「鯨肉確保を目的として調査捕鯨を計画した」ということを証明しているようなものだ。

NHKニュースで食文化に言及しているものは、例えば次の通り。
www3.nhk.or.jp/news/html/20140401/k10013404451000.html
【…
国際司法裁判所の判決を受けて、長崎市にある鯨の専門店では、クジラの食文化が途絶えかねないなどとして、不安の声が上がりました。

鹿児島県から訪れた客の男性は、「懐かしい味がなくなるかもしれないのは残念です。日本人の食文化なので政府は外国と話し合って、クジラが入るようにしてほしい」と話していました。
…】

商業捕鯨ができなくなったのは、日本政府が異議申立てを撤回したためであり、この点では自業自得である。

モラトリアムを受け入れたのは、捕鯨業界と何も関係がない中曽根康弘が首相のときで、アメリカとの漁業交渉を行う中での交換条件だったと言われている。
また、調査捕鯨という抜け道に注目したものの捕獲枠を減らしたのは、当時の中曽根康弘首相が訪米予定で、反捕鯨デモがホワイトハウスに押し寄せることを避けたかったのでないかと言われている。

ノルウェーやアイスランドのように、異議申立てをしてモラトリアムを無視しておけば、短期間の調査捕鯨の後で商業捕鯨を再開できたはず。
どうしてこうなったのか、十分に反省して、まともな科学研究ができるように変わってほしい。

テーマ : 動物・植物 - 生き物のニュース
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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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