南極海調査捕鯨に対するICJ判決はIWCでの議論に生かされるのか

3月31日に国際司法裁判所(ICJ)で、日本の南極海調査捕鯨に対して、計画の見直しを求める判決が出された。
ICJでは、調査捕鯨が条約に定められた科学的研究に該当することは認めたものの、「真に科学目的かどうか」に焦点を当てて、調査手法や捕獲頭数の設定根拠が科学的ではなく、本来の目的を達成できないと結論付けた。

判決後の反応は予想通りのもので、日本国内では食文化を軽視していると騒ぐ人たちが見られ、また反捕鯨国では保護団体を活気づけることになった。
いずれの立場でも、ICJが焦点を当てたはずの「真に科学目的かどうか」を取り上げることは、ほとんどなかったという印象だ。

9月15日からIWC年次総会がスロベニアで開催されるが、それに先だって11日から、科学委員会で調査捕鯨について議論される予定だ。
events.iwc.int/index.php/commission/IWC65

ICJ判決後、初のIWC年次総会となるため、日本の調査捕鯨に対する攻撃はさらに強まるのかもしれない。
ただ、そのような政治的な動きを牽制するように、Science/9月4日号に、IWCはICJの手法を学ぶべきだとする論文が掲載された。
www.sciencemag.org/content/345/6201/1125.summary

この論文、というよりも意見の表明だが、これを紹介しているのは現時点では海外報道のみなので、英語記事を引用しておこう。
www.theguardian.com/world/2014/sep/04/japan-diplomatic-row-bypassing-whaling-ban-antarctic


Scienceの論文の著者には、ICJでオーストラリア側の証人になった科学者が含まれている。
参考に、Dr. Nick Galesの証言は以下の通り。

www.icj-cij.org/docket/files/148/17422.pdf


私は科学者の一人として、この論文での主張に賛成である。
IWCは
ICJの手法を学び、政治的議論ではなく、日本の調査捕鯨計画を科学的視点から批判的に評価し、助言すべきだ。

また日本側は、調査目的を明確にし、その目的を達成できる研究手法として、自分で決めた
日本独自の手法ではなく、国際的に認められた科学的手法を採用すべきだ。
非致死的調査方法をできるだけ増やしたり、必要な捕獲頭数の根拠を明確に示すべきだ。

これでまともな議論ができるようになればよいのだが、様々なしがらみを抱えた各国代表が、いきなり科学的態度を身につけるとは思えない。
それでも条約の規定により、調査捕鯨のための特別許可は出せるので、頭数を減らした計画のまま、商業捕鯨再開もできずに何年もだらだらと続くのだろう。

それにしても、日本が
アイスランドやノルウェーのように、商業捕鯨を続けたかったのであれば、モラトリアムへの異議申立を撤回しなければよかったのだ。
対米関係やサケ・マス・スケトウダラなど遠洋漁業のために捕鯨を犠牲にして、捕鯨業界を安楽死させるという決定は、日本政府自らが判断したことだ。
調査捕鯨にすれば上限を決めずに捕獲できると考えたにしても、それは科学を悪用する行為である。
異議申立をした上で、小規模な調査を数年実施した後に、南極海にこだわらずに、沿岸捕鯨から再開すればよかったのだ。
自らの判断ミスが原因なのに、周りが敵ばかりだと騒ぐのは、もうやめた方がいい。

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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