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ノーベル物理学賞のニュースの見出し:「こうして青い光があった」

キリスト教文化圏のニュースを読んでいると、ドイツ語に限らず、ギリシャ神話や聖書の知識が必要となる場合がある。
イントロで引用されることもあるが、単語の語源が神話や聖書に由来していることもある。
例えば、「Herkulesaufgabe (ヘラクレスの任務)」とは「非常に困難な仕事」の意味であり、「Hiobsbotschaft (ヨブの知らせ)」は「悲報・凶報」の意味で使う。

今回取り上げるのは
ドイツ・ツァイト紙で、ノーベル物理学賞の記事の見出しである。
www.zeit.de/wissen/2014-10/nobelpreis-physik-led-blaues-licht-japaner

その見出しは
ドイツ語で、「Und es ward Blaulicht! (こうして、青い光があった。)」だ。

私はプロテスタントで、ドイツ語聖書も参考に読むことがあるので、旧約聖書・創世記からとられた表現だとすぐに気付いた。

創世記第1章3節を、ルター訳・現代ドイツ語版と、新共同訳・日本語を並べて引用しておこう。

3Und Gott sprach: Es werde Licht! Und es ward Licht.
3神は言われた。 「光あれ。」 こうして、光があった

ヨーロッパ言語の翻訳者は、クリスチャンでなくても、参考文献として聖書を持っていた方がよい。
印刷本として持つのが面倒な場合は、ネット上に無料提供されているサイトを利用してもよいだろう。
そして、聖書をそのまま引用した記事だけではなく、言い回しを少し変えた表現にも対応できるはずだ。

ただし注意したいのは、同じ言語でも時期によって翻訳が異なることだ。
ルターはカトリックから破門されているため、ルター訳聖書を使うのはプロテスタントだけだ。
以下に示す Elberfelder版では、ルター訳で ward という雅語形を使っているところが、wurde と普通の過去形になっている。

3Und Gott sprach: Es werde Licht! Und es wurde Licht.

日本語でも、例えば1955年改訳の口語訳では、新共同訳と少し異なっていた。

3神は「光あれ」と言われた。 すると光があった。

今は新共同訳を使っているものの、2017年には新しい翻訳が出る予定である。
www.bible.or.jp/know/know31.html

そのときは、このブログ記事に追記することになるだろう。

テーマ : ドイツ語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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