インドGVK Bioの臨床試験データ不正疑惑でドイツのジェネリック医薬品が使用中止

(最終チェック・修正日 2014年12月10日)

医薬メーカーで働いていて残念なことは、臨床試験データの不正疑惑が毎年報じられていることだ。
新薬によって救われる患者がいる一方で、捏造データによって被害に遭う人もいる。
既存薬よりも有効性が高いだとか、副作用が抑えられただとか、間違った宣伝文句を信用して新薬に切り替えることもあるからだ。
新薬の承認審査が厳しくなり、既存薬を超える新規性が求められていて、利益を出すためのプレッシャーが医薬メーカーを襲っているという一面もあるだろうが、発覚した後のダメージの方が大きい。

特許が切れた既存薬であるジェネリック医薬品は、医療費抑制のためにも利用促進が望まれるが、ドイツでは臨床試験データ不正疑惑が問題となり、12月5日に28社の176品目の許可を取り消すことになった。

ドイツ連邦医薬品・医療機器庁(BfArM)の発表と、その前日のSüddeutsche Zeitungの記事は次の通り。
www.bfarm.de/SharedDocs/Pressemitteilungen/DE/mitteil2014/pm18-2014.html
www.sueddeutsche.de/gesundheit/pharmaindustrie-pfusch-bei-zulassung-von-medikamenten-1.2252020

不正を行ったと指摘されたのはインドの臨床試験受託企業のGVK Bioで、ドイツでの騒ぎの前から、フランスで調査が行われていて、その調査に対しての見解をGVK Bioは発表している。
www.gvkbio.com/news-room/press-releases/media-update/

そして欧州医薬品庁(EMA)でも、GVK Bioに委託した研究の不正行為の有無について調査していて、今回のドイツの対応も発表している。
www.ema.europa.eu/ema/index.jsp
 (9月26日発表のレポート)
www.ema.europa.eu/ema/index.jsp (12月5日プレスリリース)

調査結果によると、GVK Bioでは少なくとも2008年から今年まで継続して不正を行っていたとのことだ。
ドイツでは患者の保護を優先して、疑惑のジェネリック医薬品の許可を取り消した。
ただ、どのような健康上の被害が起きる可能性があるのか、何も指摘してはいないが。
GVK Bioでは、今後12か月から15か月かけて再試験をする予定のようだが、信頼を回復できるかどうかはわからない。

今のところコンプライアンス上の違反があった、データの不適切な処理があったというだけで、なぜそのような違反をしたのかは不明だ。
こんな不正が発覚すると、他の新薬開発の受託研究にまで疑惑が生じるだろう。
11月には武田薬品との新薬開発で成果が出たと発表したばかりだが、そのまま信用することはできない。

オランダにあるWemos Foundationの推計では、毎年約2万種類の医薬品の臨床試験が、新興国で実施されているという。
www.wemos.nl/Eng/default.htm

先進国の医薬メーカーが自国内で臨床試験をせず、インドの他のアジア、東欧、アフリカ、南米の新興国で実施するメリットとは、安い費用で多数の被験者を集められることだ。
結局はコストの管理が、信頼性よりも上になっていることが、間違いの原因と思われる。

私の勤務先でもコンプライアンス研修をしているが、このような他社の事例を取り上げることは少ない。
業界共通の課題として社員が考えるように、研修内容を工夫してほしいものだ。

続報をチェックして、日本にも影響があるのかどうか注目しておきたい。

追記(12月9日):
今週、ドイツで使用一時停止となるジェネリック薬のリストが発表されるとみられていたが、日本時間9日21時の時点でまだ出ていない。

ドイツに続いて、フランスとベルギーが、GVK Bioが関係したジェネリック薬の許可を取り消した。
フランスが25品目、ベルギーが8品目である。
www.sueddeutsche.de/gesundheit/gefaelschte-medikamentenstudien-frankreich-und-belgien-verbieten-dutzende-arzneien-1.2255813

フランス医療用品
衛生安全管理機構(ANSM)のリストを見ると、フランスのジェネリック薬メーカーだけではなく、アメリカのアボットやマイランも入っている。
引用したドイツのSüddeutsche Zeitungの記事中で、マイランのドネペジル塩酸塩に言及しているのは、ドイツでも販売されているため。
マイランのアメリカ本社のサイトを見ても、9日の時点で何も出ていない。
このアルツハイマー型認知症治療薬は、日本では別の理由で販売中止になっているので、今回の騒動は日本では無関係ということだろうか。

追記2(12月10日):
ドイツで販売停止となるジェネリック薬29種類・80品目のリストが、9日に公開された。
www.bfarm.de/SharedDocs/Pressemitteilungen/DE/mitteil2014/pm19-2014.html

このリスト公開を受けたSüddeutsche Zeitungの記事は次の通り。
www.sueddeutsche.de/gesundheit/gefaelschte-arzneimittelstudien-verkaufsstopp-fuer-medikamente-1.2260248

ドイツ・フランス・ベルギーでは調査が進んで使用中止のジェネリック薬が発表されたが、ヨーロッパ全体ではまだ調査が続いていて、来年1月にEMAから発表がある予定だ。
服用していた患者に、副作用などが出ていないことを祈りたい。

テーマ : 海外ニュース
ジャンル : ニュース

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

FC2カウンター
カテゴリ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR