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ノーベル賞受賞者大村教授のアルファベット表記はŌmura

ノーベル財団の2015年ノーベル医学生理学賞についての記事では、大村智教授の名前のアルファベット表記は 「Satoshi Ōmura」 と、「オオ」という長音の表記が 「Ō」 になっている。
www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2015/

【The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2015 was divided, one half jointly to William C. Campbell and Satoshi Ōmura "for their discoveries concerning a novel therapy against infections caused by roundworm parasites" and the other half to Youyou Tu "for her discoveries concerning a novel therapy against Malaria".】

北里研究所のサイトでも、
「Satoshi Ōmura」 になっていて、
論文での著者名も 「Satoshi Ōmura」 にしている
www.satoshi-omura.info/index.html

そのためノーベル財団では、本人が使っている表記を尊重して、Omura でもなく、Oomura でもなく、Ohmura でもないのだ。

ノーベル財団の発表を元に記事を書いているメディアも Ōmura にしていることが多い。
例えば、ドイツのZEIT紙の記事は次の通り。
www.zeit.de/wissen/gesundheit/2015-10/medizin-nobelpreis-fuer-infektionsforscher-campbell-mura-und-tu

【Den Nobelpreis 2015 in der Kategorie Medizin/Physiologie teilen sich der irische und der japanische Parasiten-Forscher William C. Campbell und Satoshi Ōmura mit der Wissenschaftlerin Youyou Tu aus China.】

しかし、Ō という文字が扱いにくいためなのか、ドイツのSPIEGEL誌では、Omura である。
www.spiegel.de/wissenschaft/medizin/nobelpreis-medizin-2015-geht-an-william-c-campbell-satoshi-omura-youyou-tu-a-1056187.html

【Der gebürtige Ire William C. Campbell sowie der Japaner Satoshi Omura erhalten die Hälfte des Preises für ihre Arbeit an einer Therapie gegen Infektionen mit Fadenwürmern.】

それでもGuardian紙は、英語の標準フォントになくても、 Ōmura にしている。
www.theguardian.com/science/2015/oct/05/william-c-campbell-satoshi-omura-and-youyou-tu-win-nobel-prize-in-medicine

【Two other researchers, 80-year-old Satoshi Ōmura, an expert in soil microbes at Kitasato University, and William Campbell, an Irish-born parasitologist at Drew University in New Jersey, share the other half of the prize, for the discovery of avermectin, a treatment for roundworm parasites.】

メディアでの表記はこのくらいにして、一番気になっているのは、大村教授のパスポートでの表記がどうなっているかだ。
ノーベル財団からの招待状には Ōmura と書かれるはずだが、パスポートの表記と食い違うと困るのではないか。

小学校でローマ字表記を習ったとき、長音は母音文字の上に線を引く、または山形記号 (^) を付けるという、訓令式を基本とするルールだったと記憶している。
ただ、パスポートを作るときは、ヘボン式にすることが基本となっている。

外務省の説明は次の通り。
www.mofa.go.jp/mofaj/toko/passport/pass_4.html#q17

【…氏名の表音が国際的に最も広く通用する英語を母国語とする人々が発音するときに最も日本語の発音に近い表記であるべきとの観点から、従来よりヘボン式を採用しています。…】

ただし例外として、申請すれば非ヘボン式も認められることがある。
【…旅券申請において表記の例外を希望する申請者が増えていることから、その氏名での生活実態がある場合には、非ヘボン式ローマ字表記であっても、その使用を認めることとしました…】

埼玉県の記入例の説明は次の通り。
「オオシマ」を OOSHIMA、または OHSHIMA と書いてもよいとされているが、なぜか小学校で習ったはずの ŌSHIMA は例示されていない。
www.pref.saitama.lg.jp/passport/kinyure/documents/annai1-2.pdf

しかも、その表記の使用実態を示す必要があるとのことだ。
大村教授の場合、論文著者名で使っているので、長音記号付きで申請できそうだが、実際はどうなのか気になってしまう。

どこかに情報があるかもしれないので、これから探してみよう。

ちなみに、他の日本人受賞者でも、非ヘボン式の表記をしていることがある。
物理学賞の朝永振一郎は Shin-Itiro Tomonaga、益川敏英は Toshihide Maskawa

母音が続くときにハイフンを入れるのも、あいまい母音を省くのも、外務省が想定している「英語を母国語とする人々」が発音しやすいように表記したものだ。
それでも聞いたことがない名前を発音するのは困難なので、ヘボン式で書けば日本語の発音に近くなるとは限らない。

有名人ならば自由な表記が認めらるのか、無名の一般人でもすんなり認められるのか、どこかで調べてみよう。

テーマ : 日本語と国語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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