信仰と職場:勤務時間中に祈る権利

日本国憲法第20条に、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。」と、明確に書かれている。
また、世界人権宣言第18条では、和訳は「宗教の自由」となっているが、同様に基本的人権であることがわかる。

私はキリスト教徒だから、日本では人口の1%にも満たないマイノリティーということになる。
人数は少なくても、自分が信じる宗教の儀式や行事に参加することは、基本的人権であり、誰も邪魔することはできない。

私は毎日曜日に教会で礼拝に参加して、様々な奉仕活動もしているが、逆に、キリスト教徒ではない人に参加を強制することはないし、クリスマスやイースターを祝うように強要することもない。
神社で行われる厄払いや初詣には全く関心がないが、ご利益を信じている人に対して、神社に行かないようにと言うこともない。

自分の信仰を守る前に、他人の信仰を尊重する姿勢が大切だと思うが、では実際に職場では、信教の自由は尊重されているだろうか。

神棚を置いている会社もあるだろうし、朝礼のときにその神棚に向かって祈る職場もあるだろう。
神棚に供え物をする当番がある会社では、キリスト教徒の社員は宗教上の理由から、その当番を断るということも起きている。
また、地鎮祭や慰霊祭、○○祈願など、会社行事というよりは神事に近いものもあり、キリスト教徒にとって居心地の悪いものもある。

大げさだと言う人は、例えばキリスト教徒やイスラム教徒などが、勤務時間中に祈る権利を主張したり、宗教上の大切な日に有給休暇を取りたいと言ったらどう対応するのか、真剣に考えてみてはどうだろうか。

この年末年始の海外ニュースで、アメリカの穀物メジャー・カーギル社の関連会社で、イスラム教徒190人が解雇されたことを知った。
www.denverpost.com/news/ci_29330180/cargill-tried-resolve-issues-before-firing-colorado-muslim
www.fortmorgantimes.com/fort-morgan-business/ci_29296125/cargill-employees-walk-out-fort-morgan-plant-monday
www.spiegel.de/wirtschaft/soziales/agrar-konzern-cargill-feuert-190-muslime-a-1070166.html (ドイツ語)

この事件が起きたのは、コロラド州にあるCargill Meat Solutionsという、食肉加工会社の工場である。
イスラム教徒は毎日5回、原則として日中に祈りを捧げる。
この工場で働くイスラム教徒も、勤務時間中に5分から10分間、仕事場を離れて祈りを捧げていた。
これまで認められていたのだが、12月中旬になって突然禁止されることになり、差別を受けたと抗議して、職場放棄をした。
職場に復帰する意思がないと判断されたため、工場のマネージャーが解雇してしまった。

カーギル社は多国籍企業で、社員の出身国は80か国以上であり、信教の自由も含めて、基本的人権を尊重しているという。
誤解がもとだということで、現在は和解協議中であるが、いまところ解決したという発表はなされていない。

ドイツでは、スーパーマーケットで働くイスラム教徒が、酒類のビンに触りたくないとのことで、商品の陳列作業を拒否して解雇されたことがある。
これは裁判となり、店側が敗訴した。
理由は、「酒類以外の商品を扱う作業を与えることも可能だった」という、基本的人権の尊重に沿ったものだった。

またドイツでは、1902年に設立されたキリスト教関連の団体が、職場で祈りを捧げる権利の獲得のために運動している。
www.ciw.de/

ルフトハンザなどの大企業だけではなく、様々な企業で、キリスト教徒が勤務時間中に祈りを捧げる権利を保障している。
勤務時間中であっても、コーヒーを飲んだり、トイレに行ったりしてもよいのと同様に、祈りを捧げて心を落ち着かせることが、仕事をする上で必要な行為であると理解されている。

では日本ではどうだろうか。
イスラム教徒の同僚が勤務時間中に、「お祈りの時間だから」と言って、どこか空いている会議室に行ってしまったら、喫煙室に行く人に対する意識と同じだろうか。
食料品店で一緒に作業していて、賃金も同じなのに、「お酒と豚肉には触りたくない」と言って何もしなかったら、あなたは代わりに運んであげるだろうか。

キリスト教徒の私と一緒に食事をするとき、私が黙祷をしている間、食べ始めずに待ってくれるだろうか。
また、会社の年末大掃除の日、クリスマスだから有給休暇を取ると
私が宣言したとき、私の分まで掃除を頑張ってくれるだろうか。

4月から職場が変わることもあり、仕事内容が向いているかどうかだけではなく、コンプライアンス面として信教の自由についても考えてみよう。

テーマ : 職場環境・ヒト
ジャンル : ビジネス

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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