ドイツ語和訳のチェックで「継続的」かと思ってよく見たら「断続的」だった

先週から8月納期の英語特許和訳を作業していて、今日の午前中に一通り和訳の入力が終わり、明日から推敲の予定だ。

この案件では、100%マッチも含めて半分くらい和訳が入っていたのだが、これまでと同様に、漢字の変換ミスの他に、訳語や表現の不統一があったので、修正する必要があった。
翻訳メモリに複数の和訳が登録されていることもあるので、どれが一番良いかというよりも、最初から最後まで統一された表現になるように、自分の和訳も含めてチェックしなければならない。

作業が一段落したところで、外国の翻訳会社から短いドイツ語和訳のチェック案件の打診があった。
1時間くらいで終わりそうだったので、ファイルをざっと眺めただけで受注した。

大雨が気になったが、近くの川の情報を確認すると、水位上昇はゆっくりで、避難勧告水位まで上がりそうになかったので、チェックを進めた。

同じドイツ語を読んでも、それぞれ解釈は異なるものだ。
ある和訳が、「USBにデータを保存する」 となっていたが、これはどうやら、別のセグメントの 「USBメモリにデータを保存する」 に引きずられてしまったようだ。
データの転送のことだし、前置詞をよく見れば、「USB経由でデータを保存する」 の方が合っている。

また、画像を指でタップして選択後、そのままスワイプして移動する操作を説明するところに出てきた kontinuierlich という形容詞
(副詞的用法)では、私は 「連続的に」 という訳語を選択するのだが、和訳は異なっていた。

異なってはいるものの、同義語の 「継続的に」 だと思い込んで、それでもかまわないかなと、素通りするところだった。
そのファイルを閉じる前にもう一度よく見たら、「断続的に」 だった。

「『断続的に』 という意味があるのだろうか」 と少々心配になり、小学館の独和大辞典第二版を見ると、
【((述語的用法なし)) 連続的な,継続<持続>的な,不断の】 であり、「断続的に」 という意味はない。

更に、DUDEN で調べても、以下のように 「断続的に」 という意味は考えられない。
【stetig, ununterbrochen; lückenlos zusammenhängend; gleichmäßig [sich fortsetzend]; ein Kontinuum bildend】

「断続的に」 は、ドイツ語では、例えば、intermittierend である。

翻訳者に確認していないので、単なる勘違いなのか、「断続」が「連続」と同じ意味だと思っているのか、それはわからない。
この修正が翻訳者にフィードバックされて、気づいてもらえればと思う。

言葉は変化するものだと言われるが、翻訳で採用する訳語では、辞書や用例を明示する文献など、選択の根拠を示す必要がある。

根拠を示すと言えば、最近では、安倍首相の国会答弁にあった 「そもそも」 に関する閣議決定が思い出される。

安倍首相は、「そもそも」 には 「基本的に」 という意味があることを、「辞書で調べた」 とまで強調して主張していた。

民進党議員から、その辞書について質問主意書が提出された。
【…安倍総理が調べた「そもそも」の意味として「基本的に」との記載がある辞書の辞書名、出版社名及び出版年を示されたい。】

そして以下の答弁が決定された
www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon_pdf_t.nsf/html/shitsumon/pdfT/b193264.pdf/$File/b193264.pdf

【例えば、平成十八年に株式会社三省堂が発行した「大辞林(第三版)」には、「そもそも」について、「(物事の)最初。起こり。どだい。」等と記述され、また、この「どだい」について、「物事の基礎。もとい。基本。」等と記述されていると承知している】

更に、「そもそも」 の意味として「基本的に」 と書いてある辞書は存在しないということでよいかと再質問されて、【お尋ねのような辞書が存在しないかについては承知していない。】 と答えている。
www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon_pdf_t.nsf/html/shitsumon/pdfT/b193307.pdf/$File/b193307.pdf

存在するかどうかもわからない辞書とは、一体何だろうか。

同じ言葉でも、人それぞれニュアンスが違うことがあるので、誤解を避けるために、指す対象や範囲について、対話を通じて解釈を合わせてゆくものだ。

こんな答弁のようなことはしないが、これからも信頼できる辞書に加えて、新語について新聞・雑誌などで用例を集めて、根拠を示すことができるようにしておきたいものだ。

テーマ : ドイツ語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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