今月も翻訳のチェックを受注して思ったこと

副業翻訳を始めて5年ほど経過してから、英語・ドイツ語のチェッカーとしても登録した。
主に自然科学系の論文や特許、報告書などの日英・英日・独日であるが、日独も2件だけ受注したことがある。

トライアルを受けても不合格になったこともあるのに、TOEICスコアも830で、ドイツ語技能検定も2級までしか取得していないのに、それで他人の翻訳をチェックして採点するのか、と批判されそうな気もする。

ただ、自然科学系の専門知識も必要な場合があるし、第三者が見て理解できる翻訳かどうかを客観的に判断することも必要だ。
これまでの実績を平均すると、月当たり最低1件は、チェッカーとしての仕事を受注している。

以前も書いたように、チェッカーをしていて、他者の翻訳から学ぶことも多かったものの、大変な目に遭ったこともある。

あるドイツ語特許和訳のチェックでは、「芳香族」が「芳香属」に、「ケイ素」が「シリチウム」になっているなど、化学が不得意な翻訳者と思われた。
翻訳会社の担当者の判断で、その翻訳者に修正を指示するよりも、私が書き直した方が早いのではないかということになった。
それで、納期の延期と、3回に分けて順次納品する形式への変更を、クライアントと交渉してもらった。
誤訳も含めて約3分の1を書き直して、再設定した納期ぎりぎりに提出できた。

また、あるネイティブ英訳のチェックでは、その翻訳者はチェッカーの修正に同意せずに揉めた過去があると、担当者から知らされた。
そのため、ワードのコメント機能を使って、翻訳者への質問や、他の英訳候補の提案という形式にして提出した。
そのお陰かどうかは不明だが、何事もなくクライアントに納品できたようだ。

こうなると、機械翻訳のポストエディットの方が、喧嘩にならなくて精神的に楽かもしれない。

こういった苦労もあるので、金額の割に負担が重いということで、チェッカーをやりたくないと言う翻訳者は多いそうだ。
そのためなのか、依頼を断ることが少ない私に、仕事が回ってくるのかもしれない。

今月も既に1件、ドイツ語和訳のトライアル課題のチェックを受注した。
A4で1ページの会社案内のような記事を、2人の翻訳者が和訳したものをチェックして、評価シートに従って結果を記入するものだ。
文法解釈や専門用語の選択の他にも、句読点の使い方など、数項目の採点をすると、自動的に集計されて、判定結果が表示される。

結果として、翻訳者Aは合格、翻訳者Bは不合格と判定された。
ただし、合格の翻訳者Aでも、ケアレスミスがあったため、「翻訳後にチェッカーによるレビューが必要」とのコメントを付けた。
そのケアレスミスとは、例えば、「~された」となるところが、「~sれた」となっていたミスである。
私自身の反省も込めて、トライアル課題の提出前には、よく見直した方がよい。

そしてミスがより多くて不合格との判定が表示された翻訳者Bについては、収入を得る機会を私が奪ったのかもしれない。
ドイツ語翻訳者の人数が足りない現状はわかっているが、能力主義のビジネスであること、そしてクライアントとの信頼関係を考えると、合格にはできなかった。
本人に向いている別の分野のトライアルに合格することを祈りつつ、評価シートを提出した。

コメントをフィードバックしてミスを減らす努力をしてもらって、採用後の実際の受注時に私がチェックすればかまわないとも思うが、大幅書き直しになった過去の経験からも、向いていない人を合格させてはいけないとも思う。

以前勤務していた製薬メーカーの研修でも考えたことがあるのだが、努力しているのはわかるが、向いていない仕事をしている社員をどうするのか、異動の提案をすべきなのか。
また、派遣社員であれば、契約を延長せずに、向いている仕事を提供できそうな他社での就業を勧めることが、本人にとって良いことなのか。

本人が、自分に向いている仕事のはずだ、などと思っているときに、客観的な評価であっても、納得してもらうのは困難である。
それでも人情を無視して、専門職としてふさわしい人材かどうか、継続して仕事を任せられるかどうか、ドライな判断が必要なこともある。

それで、ドイツ語翻訳者が足りない現状について、誰か優秀な人材が参入するまで待っているだけでよいのか、という意見もあるだろう。
少子化の問題もあるので、将来的には、ドイツ語機械翻訳を開発してもらって、人間はポストエディット作業に専念することも考えられる。
しかし、すぐには実現しそうもないので、英語翻訳者にドイツ語を勉強してもらう方が早いかもしれない。

小学校3年から英語を勉強することになると、日本はますます、英語一辺倒の国となり、ドイツ語などは無視されるようになるかもしれない。
そんな風潮でも、手遅れにならないように、ドイツ語などの宣伝を続けていきたいものだ。

テーマ : SOHO・在宅ワーク
ジャンル : ビジネス

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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