やはり日本政府は沿岸小規模捕鯨の実現を目指すべきではないか
自民党総裁選や女子テニスの話題があったためか、国際捕鯨委員会(IWC)のニュースはあまり注目されなかったようだ。
今回は、日本が議長国の順番となったためか、商業捕鯨再開について議題にできたが、投票の結果は否決された。
すると日本政府は、というよりも水産庁の一部、そして捕鯨推進の一部議員などの利害関係者は、国益を無視して、IWCを脱退することも視野にするという。
例えば、朝日新聞の記事や論説をいくつか引用しておこう。
1) 9月15日:商業捕鯨再開案を否決 日本、脱退も視野に IWC総会
www.asahi.com/articles/DA3S13679466.html
【総会は最終日の14日、商業捕鯨の再開と組織改革をめざした日本の提案を否決した。商業捕鯨の停止継続が重要だとする決議が前日に採択されるなどクジラの保護を重視する流れが強まっており、日本は捕鯨政策の練り直しを迫られそうだ。】
2) 9月19日:捕鯨委の脱退、農水相も示唆 「あらゆる選択肢精査」
www.asahi.com/articles/DA3S13685046.html
【国際捕鯨委員会(IWC)の総会で、商業捕鯨の再開と組織改革をめざした日本の提案が否決されたことについて、斎藤健農林水産相は18日の閣議後の記者会見で、「IWCとの関係について、あらゆるオプション(選択肢)を精査せざるを得ない」と述べた。】
3) 9月19日:(社説)日本の捕鯨 IWCに背を向けるな
www.asahi.com/articles/DA3S13684894.html
【日本への批判の大きな材料になっているのが、南極海などでの捕殺を伴う調査捕鯨だ。4年前に国際司法裁判所が「科学目的とはいえない」として中止を命令した。日本は捕獲頭数を減らすなどして再開したが、IWC総会での議論を待たなかったため、強い批判が続いている。
脱退を視野に入れているのだとすれば、賛同できない。国際的な枠組みに背を向けたときに失う信用の重みを考えるべきだ。さらに、国連海洋法条約は鯨の保存、管理、研究について国際機関を通じて活動すると定めている。脱退すれば問題が解決するわけではない。
日本はIWCの管理対象外の小型鯨類について、沿岸捕鯨を続けている。資源管理に十分注意しながら、こうした捕鯨への国際理解を深めることに、まずは力を入れるべきだ。】
ここで、日本が商業捕鯨を再開できないことについて、外国からの不当な圧力だとか、クジラで譲歩すると次はマグロが狙われるなどと主張する人がいるため、森川純・酪農学園大学名誉教授の「調査捕鯨の堅持を選択することに政策的妥当性はあるのか」という記事を紹介しておこう。
www.jwcs.org/data/1112_morikawa.pdf (前編)
www.jwcs.org/data/1203_morikawa.pdf (後編)
ノルウェーとアイスランドが商業捕鯨を再開しているのは、モラトリアムに対して異議申立をしたからである。
日本は、当時の中曽根康弘首相の意向で、異議申立を取り下げてしまったため、再開にはIWCの議決が必要だ。
小規模沿岸捕鯨業者が捕獲を望んでいるミンククジラの異議申立も取り下げたのだから、捕獲対象は小型クジラやイルカのみになった。
中曽根内閣の事業仕分けとして、遠洋捕鯨産業を安楽死させるはずだったのに、一部抵抗勢力が調査捕鯨で鯨肉を確保することを目指した。
そして東日本大震災の復興予算までもが調査捕鯨に投入されるなど、誰も口出しできない事業になった。
調査捕鯨について、その科学的目的だけではなく、捕獲頭数の妥当性も合理的に説明できないことに加えて、水産庁担当官が、鯨肉の安定供給が目的の1つだと国会で答弁してしまったため、誰にも信用されない事業である。
以前、IWCでは非公式協議の場で、日本が南極海での捕鯨を放棄する代わりに、沿岸小規模捕鯨の再開を提案されたこともあるが、なぜか日本政府は断った。
アイヌの先住民生存捕鯨ならば認められそうなのに、これも日本政府が提案しようともしない。
日本政府と捕鯨関係者は、自ら商業捕鯨再開の道を閉ざしているのに、IWCを脱退すると脅しているが、脱退しても商業捕鯨は再開できない。
ヨーロッパの捕鯨国・地域のノルウェー・アイスランド・フェロー諸島・グリーンランドが、北大西洋海産哺乳動物委員会(NAMMCO)で持続可能な捕鯨を推進しているように、南極海で捕鯨をする場合、反捕鯨国のオーストラリア・ニュージーランドと委員会を作ることになるから、無理だ。
北西太平洋と日本海のEEZ内で捕鯨をするにしても、回遊性のクジラの資源管理について、近隣諸国と共同の委員会を設立する。
最低でも日本・ロシア・韓国が入ると思われるが、この3カ国が捕鯨について協力関係になれるのかどうか不明だ。
もし中国・台湾・北朝鮮が委員会に入るとなると、合意ができそうもない。
そのため、現実的な選択として、南極海からの永久的な撤退を宣言した後、日本のEEZ内での捕鯨について、捕獲対象をミンククジラまでの大きさのクジラとイルカにし、ナガスクジラ・マッコウクジラ・ザトウクジラなどの大型種は永久に保護対象とすれば、IWCで合意できる可能性が開けるかもしれない。
今回は、日本が議長国の順番となったためか、商業捕鯨再開について議題にできたが、投票の結果は否決された。
すると日本政府は、というよりも水産庁の一部、そして捕鯨推進の一部議員などの利害関係者は、国益を無視して、IWCを脱退することも視野にするという。
例えば、朝日新聞の記事や論説をいくつか引用しておこう。
1) 9月15日:商業捕鯨再開案を否決 日本、脱退も視野に IWC総会
www.asahi.com/articles/DA3S13679466.html
【総会は最終日の14日、商業捕鯨の再開と組織改革をめざした日本の提案を否決した。商業捕鯨の停止継続が重要だとする決議が前日に採択されるなどクジラの保護を重視する流れが強まっており、日本は捕鯨政策の練り直しを迫られそうだ。】
2) 9月19日:捕鯨委の脱退、農水相も示唆 「あらゆる選択肢精査」
www.asahi.com/articles/DA3S13685046.html
【国際捕鯨委員会(IWC)の総会で、商業捕鯨の再開と組織改革をめざした日本の提案が否決されたことについて、斎藤健農林水産相は18日の閣議後の記者会見で、「IWCとの関係について、あらゆるオプション(選択肢)を精査せざるを得ない」と述べた。】
3) 9月19日:(社説)日本の捕鯨 IWCに背を向けるな
www.asahi.com/articles/DA3S13684894.html
【日本への批判の大きな材料になっているのが、南極海などでの捕殺を伴う調査捕鯨だ。4年前に国際司法裁判所が「科学目的とはいえない」として中止を命令した。日本は捕獲頭数を減らすなどして再開したが、IWC総会での議論を待たなかったため、強い批判が続いている。
脱退を視野に入れているのだとすれば、賛同できない。国際的な枠組みに背を向けたときに失う信用の重みを考えるべきだ。さらに、国連海洋法条約は鯨の保存、管理、研究について国際機関を通じて活動すると定めている。脱退すれば問題が解決するわけではない。
日本はIWCの管理対象外の小型鯨類について、沿岸捕鯨を続けている。資源管理に十分注意しながら、こうした捕鯨への国際理解を深めることに、まずは力を入れるべきだ。】
ここで、日本が商業捕鯨を再開できないことについて、外国からの不当な圧力だとか、クジラで譲歩すると次はマグロが狙われるなどと主張する人がいるため、森川純・酪農学園大学名誉教授の「調査捕鯨の堅持を選択することに政策的妥当性はあるのか」という記事を紹介しておこう。
www.jwcs.org/data/1112_morikawa.pdf (前編)
www.jwcs.org/data/1203_morikawa.pdf (後編)
ノルウェーとアイスランドが商業捕鯨を再開しているのは、モラトリアムに対して異議申立をしたからである。
日本は、当時の中曽根康弘首相の意向で、異議申立を取り下げてしまったため、再開にはIWCの議決が必要だ。
小規模沿岸捕鯨業者が捕獲を望んでいるミンククジラの異議申立も取り下げたのだから、捕獲対象は小型クジラやイルカのみになった。
中曽根内閣の事業仕分けとして、遠洋捕鯨産業を安楽死させるはずだったのに、一部抵抗勢力が調査捕鯨で鯨肉を確保することを目指した。
そして東日本大震災の復興予算までもが調査捕鯨に投入されるなど、誰も口出しできない事業になった。
調査捕鯨について、その科学的目的だけではなく、捕獲頭数の妥当性も合理的に説明できないことに加えて、水産庁担当官が、鯨肉の安定供給が目的の1つだと国会で答弁してしまったため、誰にも信用されない事業である。
以前、IWCでは非公式協議の場で、日本が南極海での捕鯨を放棄する代わりに、沿岸小規模捕鯨の再開を提案されたこともあるが、なぜか日本政府は断った。
アイヌの先住民生存捕鯨ならば認められそうなのに、これも日本政府が提案しようともしない。
日本政府と捕鯨関係者は、自ら商業捕鯨再開の道を閉ざしているのに、IWCを脱退すると脅しているが、脱退しても商業捕鯨は再開できない。
ヨーロッパの捕鯨国・地域のノルウェー・アイスランド・フェロー諸島・グリーンランドが、北大西洋海産哺乳動物委員会(NAMMCO)で持続可能な捕鯨を推進しているように、南極海で捕鯨をする場合、反捕鯨国のオーストラリア・ニュージーランドと委員会を作ることになるから、無理だ。
北西太平洋と日本海のEEZ内で捕鯨をするにしても、回遊性のクジラの資源管理について、近隣諸国と共同の委員会を設立する。
最低でも日本・ロシア・韓国が入ると思われるが、この3カ国が捕鯨について協力関係になれるのかどうか不明だ。
もし中国・台湾・北朝鮮が委員会に入るとなると、合意ができそうもない。
そのため、現実的な選択として、南極海からの永久的な撤退を宣言した後、日本のEEZ内での捕鯨について、捕獲対象をミンククジラまでの大きさのクジラとイルカにし、ナガスクジラ・マッコウクジラ・ザトウクジラなどの大型種は永久に保護対象とすれば、IWCで合意できる可能性が開けるかもしれない。
テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済