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【聖書でドイツ語】 テモテへの手紙2第3章14節 anvertrauen

私の教会で使っている日本語聖書は新共同訳である。
来月には新しい翻訳の聖書協会共同訳が発刊されるが、切替時期は決まっていない。
新しい聖書になる前に、新共同訳を全部読んでおくつもりだ。

聖書はどこから読んでもよく、最初から順番に読む必要はない。
それで、今日はどこを読もうか、と思ったときに便利なのが、Die Losungen という今日の聖句である。
旧約聖書の一節について、毎年くじ引きで決定し、それに対応する新約聖書の部分を加えている。
www.losungen.de/fileadmin/media-losungen/kalender/kalender.html (アクセスするとその日の聖句が表示される)

日本語版も出版されているが、私はドイツ語の勉強も兼ねているので、まずドイツ語で読んで、それから新共同訳を読んでいる。

そして今週8日に読んだ新約聖書の部分は、テモテへの手紙2第3章14節だ。
ここで anvertrauen という動詞に注目したい。
ドイツ語訳の比較として Luther 1912 と Elberfelder 2006 を並べておこう。

Luther 2017: Du aber bleibe bei dem, was du gelernt hast und was dir anvertraut ist;
Luther 1912: Du aber bleibe in dem, was du gelernt hast und dir vertrauet ist,
(訳例:しかしあなたは、あなたが学んだもの、そしてあなたに託されているものから離れないようにしなさい)
Elberfelder 2006: Du aber bleibe in dem, was du gelernt hast und wovon du überzeugt ist, 
新共同訳: だがあなたは、自分が学んで確信したことから離れてはなりません。

元のギリシャ語に忠実に翻訳しているのは、Elberfelder と新共同訳である。
Luther では、vertrauen / anvertrauen が使われている。

vertrauen 他動詞 (h) ((雅語)) 1 (anvertrauen) ((jm. et.4)) (…に…を)ゆだねる,まかせる;(秘密などを)打ち明ける
an|vertrauen 他動詞 (h) 1 ((jm. et.4)) (…に…を)信頼して任せる,(…を…の手に)ゆだねる,委託する. 2 ((jm. et.4)) (…に秘密・決意などを)打ち明ける
überzeugt (überzeugen の過去分詞)形容詞 確信のある;信念を持った || von et.3 überzeugt sein …を確信している,…を信じて疑わない

翻訳会社で一緒に働くドイツ語ネイティブに聞くと、von ... überzeugt sein は、信じていることが個人的・主観的なもので、本人が信じていることが正しいかどうかは別問題というニュアンスがあるそうだ。

それに対して Luther が使った vertrauen / anvertrauen は、信用を得たので大切なことを託されたという、美しいイメージの動詞とのことだった。

この anvertrauen は、同じテモテへの手紙2で、第1章14節にも出てくる。
Dieses kostbare Gut, das dir anvertraut ist, bewahre durch den Heilige Geist, der in uns wohnt.
あなたにゆだねられている良いものを、わたしたちの内に住まわれる聖霊によって守りなさい。
この部分では、Elberfelder でも anvertrauen になっている。

テモテは、幼いころから聖書(神の言葉)を学んでいて、それを信じているわけだから、ギリシャ語に忠実に「確信した(überzeugt)」と翻訳してもよいだろう。

しかしルターは、この手紙の書かれている内容から、神の言葉を宣べ伝えるために適格な働き手として選ばれたテモテを信じて託された、という解釈を込めて、vertrauen / anvertrauen を使ったのだろう。

私は牧師にはならないが、このようなドイツ語の勉強の過程を紹介することを通じて、一人でも多くの人に聖書の言葉が届くようにしたい。
そのとき、テモテへの手紙にあるように、キリスト者は迫害を受けるのだが、主イエス・キリストが守ってくれることを祈りながら耐えて続けたいものだ。

明日教会の図書室で講解書を読んでみよう。
また、時間があれば牧師に相談してみたい。

テーマ : 聖書・キリスト教
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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