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酸ハロゲン化物の日本語名称での「つなぎ符号」の使用について見解が異なり困惑している

特許翻訳だけではないが、化合物の命名で苦労することがある。
1つの有機化合物に、歴史的経緯もあって、複数の名称が存在することがある。
IUPACが勧告した命名法では、1つの名称に限定する方針なのだが、現在は移行期という扱いのため、複数存在することもある。

複数の名称のうちから1つが選ばれて、preferred IUPAC name (PIN)「優先IUPAC名」と呼ばれている。

その他の名称は、general IUPAC name (GIN)「一般IUPAC名」と呼んで区別している。

例として、忘年会のシーズンなので、お酒に入っているエチルアルコールを取り上げよう。
IUPACの命名法では、英語を原語として命名する。

PINは、ethanol であり、置換命名法によって作る。
分子の主鎖の炭素数は2個で飽和なので、母体水素化物(炭化水素)として ethane を選択する。
アルコールでは主特性基 -OH があるので、末尾の -e を接尾語 -ol に置換して、官能化母体水素化物は ethanol となる。

そしてGINは、ethyl alcohol で、化合物の種類を表す alcohol を使っている。

PINとGINに加えて面倒なのは、英語名称から日本語名称を作るときに、1) 翻訳名、2) 字訳名、3) 翻訳名と字訳名との組み合わせ という3種類あることだ。

例えば、酢酸のエチルエステル ethyl acetate では、翻訳名の「酢酸エチル」を主に使うが、字訳名の「エチル=アセタート」(つなぎ符号なしで書くと「エチルアセタート」)も可能である。

加えて、英語のスペースに相当する部分に、つなぎ符号「=」を使うかどうかも、使うべきとされる場合と、誤解を招かないために任意で使う場合など、いろいろと想定されていて面倒だ。

IUPACがPINの1つにしようと勧告しているのに、日本語名称を作るときに増えてしまう可能性があるわけだ。

これが原因なのか、
最近、酸ハロゲン化物の日本語名称について、見解が異なることになって困惑している。
化学者である私は正しい名称を選んだと思っていたのに、つなぎ符号を使わないように修正を求められた


具体的な化合物名や、どのような相手に言われたのかなどは、当然ながら書けないので、類似の化合物名で例示しておきたい。

カルボン酸として、例えば、酢酸(acetic acid)CH3-CO-OH を酸塩化物 CH3-CO-Cl にするとき、PINは、まずアシル基 CH3-CO の名称 acetyl を先に書き、次いで特定の化合物種類の名称、ここでは chloride を書くので、acetyl chloride となる。

そして、英語で作ったPINの acetyl chloride を日本語名称にするとき、「翻訳せずに字訳する」ことになっている。
つまり、字訳して、つなぎ符号も入れた、「アセチル=クロリド」がPINの日本語名称である。
したがって、翻訳名の「塩化アセチル」は使わない

この規則に従って、英語特許明細書内に出てきた酸クロリドを、「~イル=クロリド」と、つなぎ符号を入れて書いて提出した。

すると、チェックした2名から、つなぎ符号を使わないようにという、同じフィードバックが届いた。

そのうち1名からは、「=を不用意に使わない。IUPAC命名法に従った記載にする。化学分野では重要」という内容の、厳しい意見が付いていた。

つなぎ符号を使っていることが問題となったようだ。

「塩化〇〇」にするようにとは書いていなかったが、字訳名もだめなのかどうかは、これから確認する予定。

厳密に言えば、つなぎ符号の「=」は、日本化学会命名法専門委員会が決めた日本語名称の作り方にあり、IUPAC命名法ではない。
英語でのスペースに当たる部分に、つなぎ符号を入れるかどうかは任意のこともあれば、酸ハロゲン化物のように、入れることが推奨されている場合もある。

この見解の相違で争う意味があるのかどうか、これから検討したい。
化学者としては、日本化学会が決めた日本語名称の作り方を採用したいので、特許翻訳をしている化学者に呼びかけることも考えよう。

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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