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独日翻訳3件を断ったらチェックをすることになった

私は翻訳会社の社内翻訳者なので、当然ながら平日日中は会社が受注した案件を処理している。
フリーランスのときから取引がある他の翻訳会社は、勤務終了後または週末に可能な分量だけを受注している。
昨年の収入の比率をおおまかに示すと、本業:個人事業主=5:1 である。

弟への仕送りがあと1年続く予定なので、少し無理してでも収入を増やしたいところだが、疲れて病気になっても困るので、その比率が上限と考えている。

個人事業主としての今年の売上見込みは、毎月、日本の翻訳会社が1万円、海外の翻訳会社がUS$200と少なめに設定している。
この程度の予算にしておくと、無理に受注することはないだろう。

その海外の翻訳会社には、私以外にもドイツ語翻訳者が登録されているのだが、私に回ってくることが多い。
打診する優先順位が高いそうなのだが、1000ワードを超えると、時間的に無理なこともあるので、断ることが多い。
そんなときは他の翻訳者に作業をしてもらって、私はチェックをすることになる。

今月後半も、約4000ワード、約12000ワード、約38000ワードの独日翻訳の打診があったが、どれも時間的に無理なので断った。
すると最初の2件はチェックすることになり、3件目は翻訳者が見つかってから検討するが、たぶんチェックをするだろう。

翻訳ならば、この3件で約6500ドルになるので、約70万円の収入増が期待できた。
チェッカーだとほぼ10分の1になるので約7万円だが、これでも冷蔵庫を買い替えるには十分だろう。

それで、1件目のチェックでは、翻訳者に機械分野の知識が足りないためか、誤訳がいくつか見られた。
一般的な単語であっても、特定の分野の専門用語として、普通の独和辞典に載っていない意味のことがある。

今回は、金属部品を塗装前に表面処理する説明で、Strahl が出てきた。
普通の独和辞典を参照したためか、この翻訳者は、「光線」や「照射」と和訳していた。

例えば、「光線の前で表面を清浄にする。」という加工手順の説明を読んだとき、金属の表面処理としては違和感があった。
この分野で Strahl は、「ショットブラスト」または単に「ブラスト」と和訳する。
正しくは、「ブラスト前に表面を清浄にする。」になる。

金属部品の表面にある錆などを除去するために、微粉末状の研掃材を吹き付けるので、Strahl は「噴射・ジェット」の意味であり、金属の表面加工では、特に「ブラスト」とする。

ブラストについては、例えば、次の関西ペイントの説明を参考にしてほしい。
www.kansai.co.jp/products/heavy_duty/khd/tech/tech_009.html

一般的な独和辞典にも載っている「噴出・噴射」と和訳していれば、訳語の選択が適切ではなかったとしても、技術内容をある程度理解していることが伝わる。
しかし、「光線・照射」では、技術内容を理解しておらず、語義説明の最初にあるものを選択しただけと判断されてしまう。

今回の案件だけではなく、どの専門分野でも、一般的に入手可能な独和辞典だけではドイツ語翻訳はできない。
独英辞典を使うことは当然だし、専門分野の独英辞典が必要になることも多い。
また、ネット検索をしてもドイツ語サイトしか見つからないこともあり、そのドイツ語の説明から和訳を考え出す能力も必要だ。

ワード単価が英語より30%以上も高いドイツ語翻訳は魅力的なのに、専門分野の知識が足りない人には仕事が回らないかもしれない。
私が翻訳すればよいのかもしれないが、時間的に無理なので、他の人に頑張ってもらって、私はチェッカーに専念してミスを修正してもよい。
私もまだ一流ではないが、ドイツ語翻訳者が増えるように、何かの形で貢献したいものだ。

テーマ : SOHO・在宅ワーク
ジャンル : ビジネス

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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