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「シリコン」と「シリコーン」 再び

(最終チェック・修正日 2019年06月20日)

外来語のカタカナ表記で混乱している例に、シリコンシリコーンがよく取り上げられる。

シリコン(英語 silicon)は、14番元素のケイ素の意味であり、科学用語としては、半導体材料に使う高純度ケイ素を指す。

シリコーン(英語 silicone)は、ポリシロキサン骨格を有するポリマーである。
言語の発音に近づけるために、長音符を使って表記するのは当然のことだろう。

しかし、シリコンゴムなど、慣用的に長音符なしの表記も多く見られる。
主な英和辞典を見ても、silicone を「シリコン」と書いてあるものもあり、1冊だけ使っている人は間違うことだろう。
文脈から、ポリマーのことだと理解できれば、シリコンでもかまわないということだろうか。

例えば、アミノ酸のリシン(英語 lysine)と、トウゴマの種に含まれる有毒タンパク質のリシン(英語 ricin)の場合、サプリメントの成分の話であれば、アミノ酸のリシンと理解してもらえるだろう。

同様に、医療用チューブの話のとき、シリコンと書いてあっても、シリコーン製チューブであり、硬いケイ素製チューブを想像することはない。

医療用チューブは、今月読んでいる「『欠陥だらけの子ども』と言われて」の141ページの1行目にも出てくる。

【…からだの中にいったいどうやってシリコンの管を埋めこむのだろうか?】

ドイツ語原文が Silikon なのかどうかは、原著が届いてから確認する予定。
現時点では岩波書店に問い合わせているので、今月中に返答が届くことを期待したい。

追記(5月29日):
原著が届いたので確認した。
128ページを見ると、Silikonschlauch
シリコーンチューブ)だった。

追記2(6月20日):
岩波書店の担当者からメールで回答があった。
翻訳者だけではなく、監修担当の小児科医、岩波書店の科学担当編集者と協議したそうだ。
「シリコンの管」は、重版から 「シリコーンチューブ」に修正するとのことだ。

テーマ : 語学の勉強
ジャンル : 学問・文化・芸術

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続続・「シリコン」と「シリコーン」 

翻訳者は、誤訳をしないように気を付けているが、それでも人間なのでミスを犯してしまう。 だから、専門知識を持つ翻訳者がチェックをしてから、依頼者に納品することになっている。 私が日本人なのに、日英ネイティブ翻訳をチェックするのも、科学英語として正しいかどうかを確認するためである。 科学用語の使い分けでよく例示されるのが、「シリコン (silicon)」と「シリコーン (silicone)」だ...

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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