生分解性ポリマーの poly(butyric acid) (ポリ酪酸)は誤記なのか
特許翻訳をしていると、原文の誤記に遭遇する。
PCT出願では、原文誤記を可能な限りそのまま翻訳するので、意味が通じない和訳になってしまうこともある。
単なるスペリングミスもあるが、例えば、化学物質名が不正確な場合、化学者の私としては誤記として指摘したいのだが、その分野の俗称として通用しているのかどうかも確認することになる。
今回紹介する英語特許の誤記は、生分解性ポリマーの例にあった、poly(butyric acid) である。
このまま和訳すると、ポリ酪酸。
和訳作業中は、そのままにしていたが、推敲時に違和感が生じた。
生分解性ポリマーの例が列挙されていて、最初に poly(lactic acid) (ポリ乳酸)があった。
この流れで、poly(butyric acid) (ポリ酪酸)もありそうだが、この名称の生分解性ポリマーは聞いたことがない。
この名称(原料基礎名)だと、butyric acid(酪酸)がモノマー原料であるが、酪酸同士が重合可能なのだろうか。
2分子間で無水物になることはあるが、ポリマーになるとは思えない。
あるいは、アルキル基部分で結合して、カルボキシル基が未反応で残っているポリマーのことだろうか。
構造基礎名と考えても、繰り返し単位の構造名称が butyric acid では間違いである。
それに、炭素-炭素結合ならば、ポリエステルではないので、生分解性ポリマーではなくなる。
ということで、もしかすると、poly(3-hydroxybutyric acid) (ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、PHB)の俗称なのかもしれない。
例えば、次の論文では、Abstract では poly(butyric acid) と書いているが、Materials and Methods では、poly(hydroxybutyric acid) と書いてある。
link.springer.com/chapter/10.1007/978-1-4615-3858-5_27
とりあえず、今回は誤記としてクライアント向けのメモを作成した。
他の例も探してみよう。
PCT出願では、原文誤記を可能な限りそのまま翻訳するので、意味が通じない和訳になってしまうこともある。
単なるスペリングミスもあるが、例えば、化学物質名が不正確な場合、化学者の私としては誤記として指摘したいのだが、その分野の俗称として通用しているのかどうかも確認することになる。
今回紹介する英語特許の誤記は、生分解性ポリマーの例にあった、poly(butyric acid) である。
このまま和訳すると、ポリ酪酸。
和訳作業中は、そのままにしていたが、推敲時に違和感が生じた。
生分解性ポリマーの例が列挙されていて、最初に poly(lactic acid) (ポリ乳酸)があった。
この流れで、poly(butyric acid) (ポリ酪酸)もありそうだが、この名称の生分解性ポリマーは聞いたことがない。
この名称(原料基礎名)だと、butyric acid(酪酸)がモノマー原料であるが、酪酸同士が重合可能なのだろうか。
2分子間で無水物になることはあるが、ポリマーになるとは思えない。
あるいは、アルキル基部分で結合して、カルボキシル基が未反応で残っているポリマーのことだろうか。
構造基礎名と考えても、繰り返し単位の構造名称が butyric acid では間違いである。
それに、炭素-炭素結合ならば、ポリエステルではないので、生分解性ポリマーではなくなる。
ということで、もしかすると、poly(3-hydroxybutyric acid) (ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、PHB)の俗称なのかもしれない。
例えば、次の論文では、Abstract では poly(butyric acid) と書いているが、Materials and Methods では、poly(hydroxybutyric acid) と書いてある。
link.springer.com/chapter/10.1007/978-1-4615-3858-5_27
とりあえず、今回は誤記としてクライアント向けのメモを作成した。
他の例も探してみよう。