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化合物名の略称は面倒だ

化合物名は長いので、繰り返し出てくる場合には、略称を使うことが多い。
例えば、人気のサプリメントに入っている「ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid)」は、英語名由来の「DHA」と表記する。

DHAならば有名と思われるので、最初から略称のままで書いてあっても、文脈からドコサヘキサエン酸のことだと理解できるだろう。

しかし、著者自身が有名だと思っている略称について、誰もが知っているというわけではない。

ある薬剤の特許で、列挙された含有成分の1つに「DHC」とあったが、これが具体的にどのような化合物を指すのかは、特許中に一度も出てこなかった。

含有成分の列挙の部分は、" .., vitamin C, .., DHA, DHC, .. " となっていた。

担当した翻訳者は勘違いしたのか、「…、ビタミンC、…、DHA(DHC製)、…」と和訳していた。

確かに、DHA入りのサプリメントをDHCという会社が販売しているが、ここは含有成分の列挙なので、DHCは会社名ではなくて、化合物名の略称であると判断してほしかった。

では、DHCは具体的にどのような化合物名の略称なのだろうか。

その特許に何も出ていないので推測になるが、「ジヒドロセラミド(dihydroceramide)」
かもしれない。

例えば、次の論文の Abstract に出てくる。
www.jbc.org/content/early/2011/09/13/jbc.M111.297994

【We describe a rapid, time-dependent, marked upregulation of dihydroceramides (DHCs) in mammalian cells and in the lungs of hypoxic rats.】

また、咳止め薬の「ジヒドロコデイン(dihydrocodein)」もありそうだが、今回の薬剤にはふさわしくない成分だ。

他にもあるかもしれないが、このDHCは、請求項では含有成分として記載がないので、これ以上調査はしなかった。

とりあえず、持っている知識が邪魔をして、文脈に反する誤訳をしてしまう事例として記憶しておこう。

テーマ : 英語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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