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的確な訳注で機械翻訳の弱点を補完する

機械翻訳の精度が向上しているという話を頻繁に聞くようになった。
すべての分野ではないが、機械翻訳の導入に伴ってポストエディットなどの新しい業務が発生し、翻訳者の働き方が変わることになるだろう。

私が取り組んでいるドイツ語特許翻訳では、クライアントから一度に何件も問い合わせが来ても、もともと人材不足のため、納期延長ができない場合は、残念ながら断ることも多い。
フリーランス翻訳者を募集しても、すでにどこかで専属になっているのか、ほとんど応募がない。
ドイツ語の特許翻訳講座もいくつかあるが、それでも養成が間に合わないので、機械翻訳を導入するしかないだろう。

機械翻訳の精度が上がっても、最終的には人間が確認することになるので、翻訳者が不要になるという世界は来ない。
ポストエディットという新しい仕事に適応するだけではなく、機械が苦手とすることを担当するようになるだろう。

機械が苦手なことの1つに、専門知識を活かした的確な訳注の作成が挙げられるだろう。
化学であれば、図示された構造式と化合物名が一致しないなどの、原文の記載ミスの指摘がある。

画像認識技術が発達すれば、機械が構造式を認識して化合物名を自動作成し、本文中の化合物名と照合するようになるかもしれない。
しかし、構造式と化合物名のどちらが間違っているのか、その研究分野の関連文献も調査して判断するのは、人間の方が優れているだろう。

ドイツ語で書かれた太陽光発電の文書で、太陽光発電パネル表面の汚れの例示に grüne Zellen (英:green cells、日:緑色の細胞)が出てきた。

この「緑色の細胞」について調査すると、「コケ・藻類」のことだった。

人間翻訳者は、原文ママで「緑色の細胞」と和訳したとしても、「具体的には何を指すのだろうか」と考えるはずだ。
そして、原文ママで和訳して訳注を付けるか、それとも具体的に「コケ・藻類」と意訳するか、というところまで考える。
しかし、機械は原文ママで和訳するだけで、気を利かせて訳注を作成することはないだろう。

人間が行う作業をすべて機械で置換するのではなく、お互いが補完し合う、新しい翻訳業務の形態を目指してほしい。

テーマ : SOHO・在宅ワーク
ジャンル : ビジネス

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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