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機械翻訳に関する記事を頼まれた

翻訳会社の社員になってから、翻訳のイベントで2回、そして機械翻訳関連の学会で2回発表した。
会社の方針として、年に最低1回は、何らかの発表をしようとなっている。

この秋にも1件発表して終わりかと思っていたら、その内容で学会ジャーナルに研究報告の記事を書いてほしいと頼まれた。
発行は半年後で、記事の締め切りも来年3月と余裕があるので、すぐに受諾の返事をした。

原稿料はもらえないため、勤務時間内に執筆することになる。
年内は記事の構成を考えて、必要な追加資料を探すことにして、来年から実際に書くことにしよう。

学会での発表は15分間と短かったが、記事では資料を追加して、背景説明と今後の課題の記述を強化する予定だ。

ということで今日は翻訳の合間に、以前見つけた資料に加えて、いくつか必要なデータを探した。

まず、ドイツ語圏から日本の特許庁にどれくらいの出願があるのかを調べた。
特許庁のホームページで、特許行政年次報告書2019年版の資料・統計編をダウンロードして確認した。
www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2019/document/index/0400.pdf

ここでは2018年のドイツとスイスからの出願件数のみを引用して考えよう。

135ページ(上記リンクのPDFの21ページ目)を見ると、ドイツは、6431件(そのうちPCT出願4553件、そのうち外国語書面出願1103件)、スイスは、2751件(そのうちPCT出願1931件、そのうち外国語書面出願446件)である。

この合計9182件のうち、ドイツ語から和訳した件数や、ドイツ語の外国語書面出願の件数は不明である。

というのも、化学やバイオ系では、英語で出願するドイツ企業も増えてきたし、英訳が出てから和訳することもあるからだ。

ドイツ語特許翻訳者が足りないため、人数が多い英日翻訳者を利用するために、英訳特許を和訳することが実際に行われている。
また、英日の単価は、独日の単価よりも30%以上安価に設定されることが多いので、費用節約にもなる。
それに加えて、発注する日本の特許事務所にドイツ語人材がいない場合、ドイツ語特許の和訳では、納品後の検品ができないという問題もある。

実際にどれだけの英訳特許から和訳したのか、それは統計がないため不明だ。
それでも、英訳特許から和訳してほしいという依頼を実際に受注したことがあるし、既に公開された和訳を読んでみると、英訳由来と思われるものが散見される。

ということで、ドイツ語特許和訳の需要について、推定することも困難である。
とりあえず、外国語書面出願を期限までに和訳することも含めて、年間最大9000件ということにしよう。

この中に英訳が混ざっていても、英訳に疑問点がある場合、ドイツ語特許翻訳者がドイツ語オリジナルを確認しているはずだから、ドイツ語特許翻訳者が受注した件数としておこう。

では、特許翻訳者の人数はどれくらいだろうか。
これもまた不明である。

2004年の「知的財産戦略について -大学等の優れた知的財産の創造及び活用をめざして-」(総合科学技術会議)では、20ページにはっきりと、【・特許翻訳者: 人数は不明】 とある。
www8.cao.go.jp/cstp/output/iken040526_2_1.pdf

翻訳業界としては、日本知的財産翻訳協会では、10000人超という概算を示している。
www.nipta.org/Exam_J.html

また、英日・日英のみだが、市場規模から6000人前後と推定している論文もある(倉増一,情報管理 50 (11): 727-737 (2008))。
www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/50/11/50_11_727/_pdf/-char/ja

英語の10%として600人だろうか。
PCT和訳案件の9000件から、月平均4件処理するとして、とりあえず、ドイツ語特許翻訳者は200人以下としておこうか。
実際には中間処理文書などもあるので、500~1000人程度がドイツ語特許に関わっていると思われる。

専門知識が豊富な特許翻訳者を募集しても見つからないという現状から、特許翻訳者として常時活動しているのは100人くらいではないか。
既に他社の専属翻訳者になっている場合もあるので、募集しても見つからないのだろう。

ドイツ語特許は、自動車や機械を中心にこれからも出願が続くのに、100人程度では足りず、翻訳者の養成が追い付かないのは明らかだ。

ということで、機械翻訳の導入は、英語以外の言語で特に必要になると思われる。
日本では英語ばかり重視しているので、特許では重要なドイツ語であっても、専門知識を持つ人材が確保できなくなるだう。
翻訳者の養成を続けながらも、現状では人手不足対策として機械翻訳の利用は避けられないだろう。

このようなイントロで必要性をアピールしようと思う。

テーマ : AI(人工知能)
ジャンル : コンピュータ

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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