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「国策に翻弄される博士たちの憂鬱」(週刊東洋経済2020年1月25日号)

今日納期の翻訳を複数名で分担してなんとか納品できた。
定時までに終わらせたかったが、30分残業した。

作業を終えてすぐに夕食の買い物に出たが、もう一つの目的は、本日発売の週刊東洋経済2020年1月25日号を買うことであった。
この号の第1特集「どこまで進む? 就労支援 『氷河期』を救え!」を読むのが主目的である。

東洋経済オンラインの抜粋記事、氷河期40万人「ひきこもり」支援の切実な現場、は次のリンクから。
toyokeizai.net/articles/-/325349

弟は大学卒業後、定職に就いたことがない。
就職氷河期の大多数の若者と同様に、学生時代のアルバイト先で、そのまま働き続けるしか選択肢がなかった。

2018年にようやく社会保険労務士試験に合格したが、実務経験がないので、1年以上たっても仕事は見つからない。
ハローワーク以外にも様々な就労支援があるが、弟のところにまで回ってくるのかどうかはわからない。

もう1つ興味を持った記事は、64ページの「
深刻な高学歴ワーキングプア 国策に翻弄される博士たちの憂鬱」だ。

記事の冒頭で紹介されているAさんは私と同じ50代の博士だ。
仏文学専攻なので、化学専攻の私とは分野が異なるが、常勤の大学教員のポストが少ないというのは、私も経験した。
公募人事だと思っていたら、既に教授たちの力関係によって本命が決まっていたこともある。

団塊の世代が定年になれば、Aさんにもポストが回ってくると期待されたが、国の政策がその期待を打ち砕いた。
政府は、将来的に40歳未満の大学教員の割合が3割以上とすることを目指すという目標値を設定した。
そのため、Aさんよりも若い研究者が採用されるようになったそうだ。

理系博士のBさんは、アカデミックハラスメントにより、就職先が見つからなかったケースだ。
派遣社員として研究補助をしていて、時給1500円だという。
この金額は修士卒でも少ないのではないか。
私は2000円~2300円だった。

この記事の最後には、警告と言ってもよい一文があり、私も同意する。

こうした氷河期世代らに対するアカデミアの仕打ちを見れば、優秀な若手が研究職を断念し、ひいては日本の研究力の低下に至ることは、むしろ必然といえそうだ。

私が博士後期課程に進学した頃、大学院重点化という改革が行われ、博士の人数をアメリカ並みの2倍にしようということになり、奨学金も研究費ももらえた。

大学教員のポストが増えたわけではないが、海外のようにポスドクを数年続けて、競争を勝ち残った優秀な研究者が日本の科学・技術を支えることになると信じてしまった。

博士号取得時でもバブル崩壊後の就職氷河期が続いており、2年間のドイツ留学後も改善しなかった。
元々、大学での研究職を希望していたから、民間の採用動向はどうでもよかったが。

ただし、帰国後に博士研究員として勤務した大学敷地内での廃棄物不法投棄を内部告発したため、学会重鎮から危険人物扱いされてしまい、どこにも推薦してもらえなくなった。

民間企業の研究所で派遣社員として働いたが、4社を渡り歩いた後に、5社目でようやく契約社員にスカウトされた。
しかし、事業再編のために、バブル期社員と同じ世代ということで、退職することになった。

そして今は、化学者のキャリアを活かして、英語・ドイツ語翻訳者として特許翻訳をしている。
大学院進学時点では想像もしていなかった職業だが、化学ドイツ語の本を書きたいという夢には近づいているのかもしれない。

「博士を増やせば日本は良くなる」と言っていた人たちは、どこへ行ってしまったのだろう。

テーマ : 就職活動
ジャンル : 就職・お仕事

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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