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「ポスドク」を採用したい企業は現れるだろうか

本日1月22日の日本経済新聞電子版に、博士課程の学生やポスドクの支援策についての記事が掲載された。
www.nikkei.com/article/DGXMZO54653250R20C20A1MM0000/

【政府がまとめる若手研究者支援の総合対策案が明らかになった。博士課程の大学院生を対象に、希望すれば奨学金などで生活費相当額を支給して研究に集中できるようにする。企業に協力を求め、理工系の博士号取得者の採用者数を2025年度までに16年度比で1千人増やす。若手研究者ら「ポスドク」を取り巻く環境を改善し、研究力の強化につなげる。】

博士課程(記事では博士課程後期課程のこと)の学生やポスドクの待遇が改善することは、遅かったかもしれないが、何もしないよりはましだろう。

ただ、政府の掛け声どおりに進むかどうかはわからない。

私がドイツ留学から帰国した頃、博士号取得者を積極的に採用するように企業を説得してほしいと、文部省が労働省に依頼したそうだ。
しかし、文部省が勝手に増員した博士の就職など、面倒を見るわけがない。

元文部大臣・元東大総長の有馬名誉教授は、「アメリカ並みに増やせば日本が良くなる」と言っていたが、その後、「私も数年は無職みたいなものだった。頑張れ」という無責任発言をした。

ところで、博士課程の学生には、現在でも奨学金はある。
例えば、日本学術振興会の特別研究員制度だ。
優秀な学生がもらっているという建前だが、実際には、指導教授の好みで推薦する学生が決められていることもある。

私の研究室にも、特別研究員に採用されてもよい研究レベルの後輩がいたが、教授が赴任する前からいた古参の講師の学生だったので、推薦してもらえなかった。

教授の研究テーマを実施していても、複数の候補から1人を選ぶとき、研究者としての将来性よりも、教授との相性で推薦されたと思われた例もある。

そして、教授に気に入られた学生は、博士号取得者の就職が厳しいときでも、なぜかすんなりと大学教員のポストを得たり、有名企業の研究員に採用されていた。

今回の支援策で企業への就職者数の目標値が設定されたが、教授の推薦を受けられない、つまりアカデミックハラスメントを受けている学生やポスドクは、救済されるのだろうか。

以前も、博士号取得者を採用すると、500万円程度の助成金がもらえるという話があったが、その効果があったのかどうかという話は聞かない。

企業側としても、研究職の中心は博士号取得者にするという意識の改革も必要ではないか。
企業研究者100万人当たりの博士号取得者の人数が、アメリカ、ドイツ、イギリス、韓国の半分以下というのに、グローバル企業だとか、イノベーションだとか言わないでほしい。

博士号こそが研究者の証明書なのだが、日本では、現場たたき上げが好きなのか、それとも会社のカラーに早くから染めたいのか、修士までの研究員が主体である。

学会誌などに掲載された募集要項を比較すればわかるように、海外では博士のみが研究者として採用される。
それに最低2年間のポスドク経験や、出身国以外での研究歴を条件にしているものもある。
そして、大卒の資格だと研究補助員になるので、例えば、博士研究員の指示の下で化合物を合成したり、データを測定したりする。

若手研究者の支援策を小出しにするのではなく、研究活動が文化となるくらいまで、日本社会を変革しなければならないだろう。
iPS細胞の研究費を獲得するために、ノーベル賞受賞科学者がマラソンをしなければならない国は、科学技術創造立国を語ってはならないと思う。


今日納期の翻訳を複数名で分担してなんとか納品できた。定時までに終わらせたかったが、30分残業した。作業を終えてすぐに夕食の買い物に出たが、もう一つの目的は、本日発売の週刊東洋経済2020年1月25日号を買うことであった。この号の第1特集「どこまで進む? 就労支援 『氷河期』を救え!」を読むのが主目的である。東洋経済オンラインの抜粋記事、氷河期40万人「ひきこもり」支援の切実な現場、は次のリンクから。toyokeiza...
「国策に翻弄される博士たちの憂鬱」(週刊東洋経済2020年1月25日号)


テーマ : 研究者の生活
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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