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「大気/空気の話」とは何だろうか?

他の翻訳者のブログやツイッターの投稿を読むと、自分が関わらない分野についても、様々な話題に触れることができる。
愚痴もあるが、辞書に載っていない単語で苦労した話など、共通した悩みがあるのが面白い。

中学英語でも習う基礎単語であっても、複数の意味を持つ場合が多いため、和訳に苦労することもある。
原文の意図をきちんと把握して和訳していないと、原文を読んだときに頭に浮かぶイメージが、和訳だけを読んだ人のイメージとずれてしまうこともある。

私が専門の自然科学に限られないが、学術論文だけではなく一般向けの解説記事でも、専門用語の定義をある程度踏まえていないと、イメージがずれてしまう、違和感を生み出す和訳になることがある。

昨日見たツイッターでも、「大気/空気の話」があったので、自然科学分野での英文和訳の話なのかと思っていた。
多分、air の訳語を大気にするのか、それとも空気にするのか、どちらがふさわしいかという話と推測した。
ネタ元の記事があるのかと考えたところ、最後の一行から、あの自称1000万円翻訳者である浅野正憲の英文和訳例だろうと思った。

すると、2月22日の「日本語力が重要」と主張するブログ記事で紹介した、訳文のポイントの説明に対するツッコミのようだ。
そのブログの一部を引用しよう(一部太字・色の変更をした)。

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【Man-made chlorine compounds, which can last in the air for 100 years, damage the ozone, creating a gap.

ここでは「~,which can last in the air for 100 years,」の訳し方についてお伝えします。

“last”には、続く、持ち堪える のような意味があります。

文の意味としては「Man-made chlorine compounds が 空気中に100年間存在し続けて、(Man-made chlorine compoundsが) damage the ozone, creating a gap.」ということが伝われば良いです。

なので、原文の意味が自然に伝えるなら、これを「空気中に100年間残る」と訳したり、「100年間なくならない」と訳してもOKです。】
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which 節以外も和訳してほしかったが、gap が面倒だったのでやめたのだろうか。
それとも、講座受講者に和訳させるためにわざと避けているのか。

ちなみに、Google 翻訳を試してみたら、次のような和訳となった。

「人工塩素化合物は、空気中に100年間続くことがあり、オゾンに損傷を与え、隙間を作ります。」

in the air を「空気中に」と和訳しているが、ここはやはり「大気中に」の方が、一般向け自然科学記事としてふさわしいと思う。

地球を取り巻く気体の層全体を「大気」と呼び、人類が生活している下層の空間にある気体を「空気」と呼んで、区別することが多い。

原文の意味を説明するならば、分解しにくい人工的な塩素化合物は大気中に長い期間滞留するおそれがあり、オゾン層を破壊して、その結果、オゾンホールができるということ。

オゾン層は成層圏にあるので、原文の意味を反映するならば、繰り返すが、「空気中に」ではなく、「大気中に」がふさわしい。

「空気中に」と和訳すると、日常生活の空間に塩素化合物が滞留するイメージとなり、原文を読んだときのイメージと異なってしまう。

もし which 節の和訳の説明をするならば、動詞 last の説明ではなく、どうして助動詞 can を訳出しないのか、訳出しない方が自然な日本語になるのか、という、より重要な疑問に対する解説をすべきではないだろうか。

ここでの塩素化合物とは、難分解性フロンを指すと思われ、使用量が多かったフロンの半減期は、70~110年程度と推定されている。
徐々に分解するが、100年経っても半分くらい残っている可能性があるという意味で、可能性・推量の can であると説明してほしかった。

浅野正憲という自称1000万円翻訳者の和訳をすべて見たわけではないが、他にも could の和訳ができていないという指摘もあったので、基本的な文法も弱いのかもしれない。

誰もが「自然で読みやすい日本語」を目指すものだが、自己流の思い込み翻訳を受講者に教えることはやめた方がよいと思う。

受講者が間違い探しやリライトの練習のために、このような和訳を使うならばかまわないが、ブログ記事として自然な日本語の例に挙げるのは困ったものだ。

多額の受講料を支払う意味があるのかどうか、冷静に考えてほしいものだ。

テーマ : 語学の勉強
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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