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「明細書の英訳文の読みにくさ」(「化学」2020年5月号)

旧帝大の理学部化学科に入学後、化学同人の雑誌「化学」の定期購読を始めた。

30年以上続けていたが、2016年3月に勤務先の医薬メーカー子会社が解散となり、年収が激減する見込みだったため、すべての学会から退会すると共に、「化学」だけではなく、東京化学同人の雑誌「現代化学」の定期購読もやめた。

その後は、ノーベル賞などの特集記事を読みたいときに購入することにしている。
最新の化学研究についてわかりやすく解説されているので、特許翻訳の仕事にも役立つはずだから、本当は定期購読を再開したい。
3年間の購読料が約2万円で、それほど生活費を圧迫することもないのだが、持続化給付金がもらえたら、来年から再開しようかと思う。

可能ならばバックナンバーを入手して、読みたい連載記事がある。
それは、化学の特許はおまかせ! 中務先生のやさしいカガク特許講座だ。

その連載があることは知っていたが、私は明細書の翻訳ばかり担当していて、特許事務所のように実際の出願業務はしていないので、あまり関係がないのかと思っていた。

ただ、再生可能エネルギーの特集記事が気になって購入した2020年5月号では、ドイツ特許の出願で翻訳が必要な場面の例示があったし、コラムも英訳の話題だったので、過去記事も読みたくなった。
www.kagakudojin.co.jp/book/b509111.html

横浜市図書館にあるので、業務が再開したらバックナンバーを調べに行きたいものだ。

前置きが長くなったが、紹介したいのはコラムの明細書の英訳文の読みにくさである。

PCT 出願の翻訳をしている人ならば、原文の内容を正確に反映したミラー翻訳が求められることを知っているだろう。

日本語明細書を英訳するときにズレが生じた場合、英語での請求項で権利範囲が広くなってしまうこともある。
言い回しを工夫すれば読みやすい英文になったとしても、日本語文との同一性を厳密に保持するには、読みにくい英文に翻訳せざるを得ないことも多い

そのため筆者は、日本語の明細書作成時から,できるだけ英訳しやすいように,主語と述語の関係を明確にし,一文を短くし,平易な表現となるようにしているという。

また、単数と複数の扱いや、請求項で初出の名詞に不定冠詞「a」を付け、それ以降は定冠詞「the」を付けるなど、英文としては特殊なものになっている。

ということで、大学の先生が特許出願するときには、説明が必要になるそうだ。

【英語論文をよく書かれている大学の先生にはとても不自然な英文に見えるようで,時々ご指摘を受けますが上記事情を説明してご納得いただいています.】

私も大学研究室では、英語論文の書き方を習ったが、特許明細書の書き方は一度も習わなかった。

今では大学発ベンチャーを立ち上げることが推奨されているので、学生にも英訳しやすい日本語文を教えて、ついでに英訳の勉強もさせてみてはどうだろうか。

そうすれば、特許翻訳者になる化学者も増えて、人材不足が少しは解消できるかもしれない。

テーマ : SOHO・在宅ワーク
ジャンル : ビジネス

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No title

興味深く読みました。私は20年ぐらい前に和文英訳をあきらめてその後は英文和訳ばかりしてきたので、英訳文の読みにくさではないのですが、和訳文も特許明細書は同様に読みにくいです。私は、特許事務所に勤めていた時期があって、国内企業・研究機関の国内出願・外国出願の他に、海外企業の日本国出願も多く担当していましたが、審査、審判の過程では、特許庁とのやりとりを海外の顧客に伝えて、指示を仰ぐ必要がありました。そのときに、日本語として読みやすいけれども、原文からは形式上相当離れている和文(いわゆる意訳。当時はパリ条約ルートの出願も多かったので、そういうのも別に間違いではなかったと思います)だと、日本語明細書の文言に基づく審査官、審判官が意見を、原文を見て判断する在外代理人に正しく伝えるのに苦労することもありました。日本語としての自然さが多少損なわれても原文の構造をわかりやすく残しておく方がその後の実務では楽な場合もあるなと思いました。今、英文和訳を仕事にしながら、将来の審査、審判過程で問題になりそうなところは、できるだけそういう観点で日本語訳を選び、どう考えてもこの部分の表現でそういう問題は起こらないだろうと思うところには(自分としては)思い切った和訳を試してみるということも(こわごわですが)してみています。その是非は、最終的には顧客(特許事務所等)が判断してくれるだろうという甘えも、もちろん自覚しています。そういうことで、和訳文の読みにくさも、意味のある読みにくさなのか、ただ単に翻訳が下手なだけなのか、考えて判断したいなと思っています。
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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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