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ピリオドを見落として化合物名を間違えた学生

大学受験の科目に英語を課しているところは多い。
それは、大学で学問をするには、英語の資料を読むことが必要になるからだ。

日本人ノーベル賞受賞者が増えていることでもわかるように、最先端の研究が日本でも行われており、一流の研究者が書いた日本語での論文や書籍を読むことができる。

それでも、全世界で行われている最先端の研究を把握するには、どうしても英語論文を読む必要がある。
ざっと目を通す論文も含めて、年間で100報程度では少ないと言われているし。

私が在籍していた国立大学では、ある年のB日程試験で受験科目数を削減して、英語を課さなかったことがあった。
すると、受験科目になかったためか、英語が苦手な学生が増えてしまったと、指導教授が嘆いていた。
ということもあり、どのような日程の試験でも、英語は全学部で課すことに戻された。

英語が受験科目であっても、英語が得意な学生ばかりではない。

専門教育が始まると、参考図書として英語で書かれた新刊の専門書が指定されるが、半年くらい経って日本語での訳書が出回るようになると、英語原書を読もうとはしなくなる学生もいる。

翻訳をした有名教授を批判するつもりはないが、私はある専門書で訳抜けを発見した経験がある。
他にも、誤訳を指摘されて、重版のときに改訂された訳書もある。
だから、疑問点があったときに、オリジナルの英語書籍で確認できる語学力は最低限必要だ。

前置きが長くなったが、オリジナルの情報を確認しない学生は実在する。
しかも、確認するように促されてオリジナルの英語論文を読んでも、ピリオドを見落として、間違った化合物名を信じていた学生もいた。

私が短期間在籍したある大学の研究室では、天然物の全合成研究をしていた。
前任の大学院生から引き継いだテーマで、その日本語での発表資料には、「〇〇ノリドA」という目的化合物の名称が書いてあった。
引き継いだ学生は、「〇〇ノリドA」を信じてそのまま使っていた。

指導教授からは、「本当に〇〇ノリドAなんて化合物があるのか。AがあるならBは何だ」と質問されていたが、その学生は「先輩が使っていたから」と返答した。

その指導教授も意地悪なのか、正しい化合物名を教えずに放置した。
その教授の性格から推測すると、卒論発表などの機会に間違いを指摘して恥をかかせるためか、間違いを書いたから卒業取り消しという嫌がらせをしようとしたのかもしれない。

その学生から相談された私は、「その大学院生が引用した英語論文を確認して」と指示した。
その英語論文のタイトルにも出てくる名称だが、「〇〇ノリドAで正しいはずだ」という。

そこで私が見ると、その学生も含めて、ピリオドを見落としていたことがわかった。

そのタイトルは、「...nolide. A Novel Sesquiterpene Isolated From ...」

化合物名は「〇〇ノリドA」ではなく、「〇〇ノリド」だ。
学生たちが化合物名の一部と思っていた「A」は、不定冠詞だったのだ。

...nolide の後のピリオドが小さくて見落としたのか、それとも、「××A」という別の天然物の名称につられたのか、または、英語が苦手な学生は不定冠詞を理解できていないということか。

しかも、論文の本文中には「...nolide」だけで、「...nolide A」は出てこない。
ということは、研究発表のイントロで使うためだけに用意した資料であり、中身は読んでいないことになる。

まあ、英語が苦手な学生だから、本当に必要になるまでは、なるべく読まずに済ませようということだったのだろう。

英語の学習指導要領を変えたり、大学入試をいじろうとしているが、コミュニケーション能力ばかり注目するのではなく、読む力を確実に持つような指導もしてほしいものだ。

テーマ : 英語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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