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「どうなる? どうする? 機械翻訳2020」(通訳・翻訳ジャーナル2020年夏号)

5月21日発売の通訳・翻訳ジャーナルが今日の午後に届いた。
定期購読の場合は、発売日前日の20日に届くことが多かったが、今は緊急事態宣言が出ているので配送が遅れているそうだ。

今回の特集は、「どうなる? どうする? 機械翻訳2020」

今回は情報が多くなっているように感じた。
実際に使っている翻訳会社や翻訳者の声がたくさん載っている。

機械翻訳(MT)の誤解の1つは、精度が向上したそうだから訳文をそのまま使った、ということに象徴されている。
日本の官公庁や自治体では、MT出力のままでウェブサイトに載せてしまい、人命にかかわるなどと批判されている。

訳文を修正するポストエディット(PE)が必須なのに、残念ながら周知されていないようだ。
「MT出力+PE」で一つの翻訳工程であることを、もっと強調しなければならないだろう。

ただ、PEを積極的にやりたい翻訳者が少ないという問題がある。
すべての人にPEを勧めるのではなく、向いている人を探し出して、養成することも必要だろう。

これに関連して、特集の中ではないが、105ページの山田優・関西大学教授のコラムを参考にしてほしい。
「翻訳コンピテンスとポストエディット」だ。

このコラムの後半に、「ポストエディターの資格と技能」がある。
新しい作業形態のポストエディターであっても、求められる能力は翻訳者と変わらない。
それに加えて、MT特有のエラーに関する知識などが必要となる。

翻訳者の中には、PEをレベルの低い仕事であるかのように勘違いしている人もいるそうだ。
MT出力を修正しているだけに見えても、実際には、自力で翻訳できる能力がなければ書き直しもできない。
あれこれ修正するよりも、削除して最初から訳し直した方が早い場合もあるからだ。
それは人手翻訳のチェックでも経験していることだろう。

だから、これから翻訳をやってみたいという初心者が、いきなりPEから始めるのは危険だと思う。
中には、元々の語学力が高くて、すぐに対応できる人もいるだろうが、翻訳の基礎を学んでからの方が無難だ。

以前書いたように、あるセミナーで初心者の方から、「翻訳の練習に機械翻訳を使ってもよいか」と質問されたことがあった。
私は、「機械翻訳の誤訳を指摘できるだけの語学力をつけてからでなければ危険です」と答えた。

トラックバックした記事でも書いたように、少し手直しするだけの簡単な作業ということはない。

そう言えば、まだMTが普及する前、あるドイツ語論文の和訳を依頼されたとき、「何が書いてあるかわかればいい」というクライアントからの要望があった。

このような場合には、今ならばMTを使うことになるだろう。
概要を把握した後、内容を詳細に確認するときに、人間が翻訳することになるのかもしれない。

働き方は変わるかもしれないが、翻訳者が消えることはないと思っている。


自称1000万円翻訳者の浅野正憲は、在宅翻訳を勧めるブログの過去記事に、自身の誤訳を堂々と掲載したままにしている。誰が見ても誤訳というか、なんとなく翻訳をしているのだが、修正も削除もしないということは、本人は自分の訳文が正しいと思い込んでいるのだろう。これまでの経歴や翻訳者を目指した経緯については断片的な情報しかないが、自分の能力を客観的に分析できていないようだ。ただ、訳文をゼロから構築することが...
機械翻訳のポストエディットは単なる編集作業ではない


テーマ : SOHO・在宅ワーク
ジャンル : ビジネス

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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