続々 ドイツ語の多義語に注意: Ausdruck (表現、プリントアウト、式)
今月は自分の仕事でもドイツ語和訳を何件か担当している。
納期が近い案件があったので、そのうち1件を登録翻訳者に依頼して、いずれも受注することで売上を確保している。
この登録翻訳者は、CATツールを使わないとのことで、ワードのファイルのみが納品された。
その理由の詳細については、私は知らない。
CATツールの利点は理解しているそうだが、翻訳作業に悪影響が及んだ経験があるのかもしれない。
あるいは、CATツールを使う案件では、マッチ率に応じたディスカウントが適用されてしまうので、嫌な経験が多かったのだろうか。
CATツールを使わなくても、過去の経験があるのでチェックはできる。
ただ、フィルター機能などを使って、同じ表現を含むセグメントを並べて比較できるので、チェック作業はいくらか楽になる。
まあ、CATツールを使うかどうかよりも、翻訳の品質の方が大切だ。
誤訳は今のところ1箇所で、ひどいということはない。
ただ、あまりにも原文に忠実な直訳なので、読みにくい日本語になっている。
一緒に日独協会の講座を受講していればよかったなと思う。
時間外に受注している個人事業主としての翻訳では、主にチェッカーとして協力している。
最近、ノートPCが物理的エラーということで強制再起動するようになったので、PC更新費用を稼がないといけない。
前置きが長くなったが、その海外翻訳会社から受注したドイツ語和訳チェックで、今回もまたドイツ語多義語の問題に出会った。
今回の単語は、Ausdruck で、辞書では語源が異なる2つを区別している(複数形が異なることに注意)。
小学館独和大辞典第2版から抜粋して引用しよう。
Ausdruck1 男 -〔e〕s / ..drücke 1 (英: expression) 表現. 3 [数学] 式 [< ausdrücken 表現する]
Ausdruck2 男 -〔e〕s / -e 2 b) プリンターからの出力,プリントアウトされたもの,(コンピューターなどの)プリントアウト [< ausdrucken プリントアウトする]
今回の翻訳対象は、人事関係のシステムの説明で、主にライセンス付与やパスワード保護などの情報セキュリティに関する文書だ。
原文をそのまま書けないので、わかりにくいかと思うが、次のような意味である。
「Ausdruckは安全が確保されている」
翻訳者は、この Ausdruck を「式」と和訳していた。
オリジナルの文書が添付されておらず、CATツールのセグメントの原文だけで判断しなければならないので、「式」と訳してしまっても仕方ないかもしれない。
それでも、数学用語がこの文書に最適であると判断したのは、どうしても理解できない。
人事評価の点数など、何かを計算する数式が一度も出てこないのである。
表示された翻訳メモリの過去訳を見ると、Ausdruck を「印刷」と和訳しているものがあった。
ということは、Ausdruck とは、人事関係のデータをクラウドサーバーから読み出して、それをプリントアウトしたものを指しているのだろう。
「印刷は安全が確保されている」とは、セキュリティ関係の文書だから、プリンターに印刷データを送る前にパスワードが要求されたり、プリンターのところに本人が行って個人認証をしなければ印刷が始まらない、ということを意味するのだろう。
「プリントアウト」でもよかったが、翻訳メモリの過去訳を尊重して、「式」を「印刷」に修正した。
修正後に、参考訳として添付されていた英訳を見て驚いた。
この Ausdruck が expression になっていたのだ。
英訳が誤訳なのか、私の修正後の和訳が誤訳なのか、それはクライアントからのフィードバックで判明するだろう。
機械も人間も、誤訳をするのだ。
どちらが偉いということもないのではないか。
納期が近い案件があったので、そのうち1件を登録翻訳者に依頼して、いずれも受注することで売上を確保している。
この登録翻訳者は、CATツールを使わないとのことで、ワードのファイルのみが納品された。
その理由の詳細については、私は知らない。
CATツールの利点は理解しているそうだが、翻訳作業に悪影響が及んだ経験があるのかもしれない。
あるいは、CATツールを使う案件では、マッチ率に応じたディスカウントが適用されてしまうので、嫌な経験が多かったのだろうか。
CATツールを使わなくても、過去の経験があるのでチェックはできる。
ただ、フィルター機能などを使って、同じ表現を含むセグメントを並べて比較できるので、チェック作業はいくらか楽になる。
まあ、CATツールを使うかどうかよりも、翻訳の品質の方が大切だ。
誤訳は今のところ1箇所で、ひどいということはない。
ただ、あまりにも原文に忠実な直訳なので、読みにくい日本語になっている。
一緒に日独協会の講座を受講していればよかったなと思う。
時間外に受注している個人事業主としての翻訳では、主にチェッカーとして協力している。
最近、ノートPCが物理的エラーということで強制再起動するようになったので、PC更新費用を稼がないといけない。
前置きが長くなったが、その海外翻訳会社から受注したドイツ語和訳チェックで、今回もまたドイツ語多義語の問題に出会った。
今回の単語は、Ausdruck で、辞書では語源が異なる2つを区別している(複数形が異なることに注意)。
小学館独和大辞典第2版から抜粋して引用しよう。
Ausdruck1 男 -〔e〕s / ..drücke 1 (英: expression) 表現. 3 [数学] 式 [< ausdrücken 表現する]
Ausdruck2 男 -〔e〕s / -e 2 b) プリンターからの出力,プリントアウトされたもの,(コンピューターなどの)プリントアウト [< ausdrucken プリントアウトする]
今回の翻訳対象は、人事関係のシステムの説明で、主にライセンス付与やパスワード保護などの情報セキュリティに関する文書だ。
原文をそのまま書けないので、わかりにくいかと思うが、次のような意味である。
「Ausdruckは安全が確保されている」
翻訳者は、この Ausdruck を「式」と和訳していた。
オリジナルの文書が添付されておらず、CATツールのセグメントの原文だけで判断しなければならないので、「式」と訳してしまっても仕方ないかもしれない。
それでも、数学用語がこの文書に最適であると判断したのは、どうしても理解できない。
人事評価の点数など、何かを計算する数式が一度も出てこないのである。
表示された翻訳メモリの過去訳を見ると、Ausdruck を「印刷」と和訳しているものがあった。
ということは、Ausdruck とは、人事関係のデータをクラウドサーバーから読み出して、それをプリントアウトしたものを指しているのだろう。
「印刷は安全が確保されている」とは、セキュリティ関係の文書だから、プリンターに印刷データを送る前にパスワードが要求されたり、プリンターのところに本人が行って個人認証をしなければ印刷が始まらない、ということを意味するのだろう。
「プリントアウト」でもよかったが、翻訳メモリの過去訳を尊重して、「式」を「印刷」に修正した。
修正後に、参考訳として添付されていた英訳を見て驚いた。
この Ausdruck が expression になっていたのだ。
英訳が誤訳なのか、私の修正後の和訳が誤訳なのか、それはクライアントからのフィードバックで判明するだろう。
機械も人間も、誤訳をするのだ。
どちらが偉いということもないのではないか。