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海外の翻訳会社からMTPE(機械翻訳+ポストエディット)の打診があった

2年くらい前から、機械翻訳(MT)の精度が上がったということで、その出力をチェックして翻訳を完成させるポストエディット(PE)が話題となるようになった。

訳文が既に入力されているものの、MT特有のエラーが含まれるので、PE作業は期待されたほど楽ではない。
文脈を反映しない想定外の誤訳も出現するので、かなりストレスが溜まる作業だ。

運よく高精度のMT出力に当たれば、作業時間が大幅に削減されるが、たいていは10%から20%程度の短縮と考えた方がよい。
高精度になったとしても、全文を細かくチェックするので、ざっと流してみるようなことはできないのだ。

案件によってPEの手間は大きく変動すると思われるため、料金設定はワード数換算ではなく、時給制の方が合っていると思う。
これは、人間翻訳(HT)のチェックと同じことだ。

しかし、ワード数から一律ディスカウントした方が計算が楽なので、CATツールによるマッチ率ディスカウントと同様の値下げ圧力が働いているようだ。

今月、ある海外の翻訳会社から、MTPE案件について受注を希望するかどうかの問い合わせメールが来た。
言語ペアは不明で、料金についてのみ提示されていた。
具体的な料金設定を書けないが、全部HTだった場合の50%よりは高く、80%よりは低い料金と言っておこう。

MT出力の精度が低い場合は、通常の翻訳案件に切り替えて、料金も100%になるという。
ただし、MTPEからHTへの変更は、コストアップになるのだから、クライアントが同意した場合に限られるようだ。

MTPEは、大量の文書を翻訳しなければならないのに翻訳者が足りない場合に、有効な方法と期待されている。
それでも、作業時間がいくらか短縮可能だとしても、半分になることは滅多にない。

ストレスが溜まる仕事でもあるので、もしディスカウントするとしても、時間短縮分を考慮して、HTの場合に対して最低でも80%の料金を確保すべきではないか。

低料金でも受注する人はいるかもしれないが、優秀な翻訳者ほどMTPEを断るため、翻訳品質が確保できなくなるだろう。

英語話者から見て日本語は、最も習得が困難な言語に分類されているのだから、料金は高くてもよいはずだ。
アメリカ合衆国国務省の次のサイトで、カテゴリーIVであることを確認してほしい(スクリーンショット添付)。
www.state.gov/foreign-language-training/

日本語困難度

だから、クライアントから値下げを要求された翻訳会社も含めて、翻訳関係者は協力して対応すべきではないだろうか。
MTPEを受けないと決めている翻訳者も、できれば協力してほしいものだ。

テーマ : SOHO・在宅ワーク
ジャンル : ビジネス

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No title

コメントありがとうございます。

MTを使うと効率化するのかどうか、分野によって違いがあるのか、品質保証はどうするのか、それは誰かが実際に検証しなければなりません。私は元々研究職ですので、何か新しいものを導入することに興味があり、業務としてMTPEにも取り組んでいます。

検証の期限を決めて、もし使えないと判断すれば、MTPEから撤退するだけです。

翻訳作業が人間だけでもMTPEでも、最終的な品質に対して料金が決まるようになってほしいので、MTPEに懐疑的・否定的な翻訳者の方にも、生活できる料金設定で安心して働ける業界となるために協力してほしいと思います。

No title

結論部のところがわかりにくいのですが、私はいわゆるMTPEは受けないと決めている翻訳者です。理由はこの投稿文にもあげられているものもありますが、翻訳支援ツール自体が100%信用できないことが一番としてあります。まず、翻訳前にツールで分析する場合、source-sourceの比較しかありません。ということは、targetに変な翻訳が混入している場合にこのようなツールは当てにならないわけです。また、句読点だけでなく、イタリックをほとんど使わない日本語の文章の規則は翻訳支援ツールにほとんど反映されていませんので、原文がイタリックの場合に日本語は鍵括弧にしなければならず、翻訳者が手作業で(職人風に)介入するというような場合が多々あるわけです。おそらく、MTPEは文体がほとんど問題にならない分野(取扱説明書やソフトのローカリゼーションなど)に限られるべきでしょう。
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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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