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菅義偉首相は Nature を読むことになる?

科学を軽視する政治家として、トランプ大統領やボルソナロ大統領が有名だったが、今週は菅義偉首相が加わったようだ。

日本学術会議から推薦された候補者のうち6名の任命を拒否したことが、アメリカの科学誌 Science のウェブサイトで記事になった。
10月5日付けの記事は次のリンクから。
www.sciencemag.org/news/2020/10/japan-s-new-prime-minister-picks-fight-science-council

この記事に掲載された写真は、新会長に就任したばかりのノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章教授である。
日本の首相がいちゃもんをつけた相手が、ノーベル賞科学者を擁するアカデミック集団であることを印象付けているようだ。

そして、もう1つの有名な科学誌 Nature でも、10月6日にウェブサイトで記事が出て、10月8日号に掲載された。
記事のPDFは次のリンクから。
media.nature.com/original/magazine-assets/d41586-020-02797-1/d41586-020-02797-1.pdf



朝日新聞でも引用されているように、今週発売の Nature 10月8日号では、トランプ大統領が科学に対してどのような悪影響を与えたのかを記事にしている。
そして今後、科学と政治の関係について連続して記事にする予定とのことだ。

菅義偉首相は、これから Nature の記事をチェックすることになるだろう。
まあ、何を言われても無視するのだろうが、日本学術会議の人事について判断できるほどの能力なのだから、愛読誌にしてほしいものだ。

Nature は最先端の論文が掲載される雑誌であるが、科学ジャーナリズムとして各国政府の科学政策について批判的な論評記事も掲載している。

Nature は過去にも、日本の科学政策について批判記事を掲載したことが何度もある。
私が一番記憶しているのは、文部省の「未来開拓事業」に関する批判記事だ
Bias alleged in Japanese university awards
次のリンク先で、PDFをダウンロードして確認してほしい。
www.nature.com/articles/383369a0 

この Nature の記事について私はある雑誌に投稿した。
どの雑誌なのか公開しても私はかまわないが、私の指導教授が学会重鎮から叱責されたので、匿名としたい。

投稿前に事実関係について文部省に問い合わせをしたが、「Nature の取材を受けていない。『学術月報』を読んでご自身で判断してほしい」という主旨の説明だった。

その後、私の投稿が実際に掲載されると知ってからは、「Nature には直接取材を受けると何度も申し入れたのに無視された。当事者ではなく、周辺の取材だけで記事にするのはマスコミのすることではない」などと、Nature の記事がいいかげんな取材に基づくという主張をしてきた。

文部省の官僚は、ジャーナリズムというものをわかっていない。
日本のマスコミと同じようにしろと言いたいのか、政府公式発表をそのまま流すものだと思っているようだ。
そのまま流すのならば、政府広報がやればいい。

今回の日本学術会議の問題で、日本の新聞や雑誌は完全に分裂している。
そのおかげで、どのメディアが政府広報の代理をしているのか、そしてどこがジャーナリズムと言えるのか、わかりやすくなったと思う。

日本のジャーナリズムにも期待しているが、不正を嗅ぎつけるジャーナリズムとして Nature の記事にこれからも注目したい。


日本学術会議の第25期会員が任命されたが、菅義偉政権が6人の任命を拒否したことが問題となっている。東京新聞・望月衣塑子記者のツイートの1つを引用しておこう。#学術会議 会員の任命を拒否された岡田正則教授「イエスマンばかりでは役割を果たせない」#日本学術会議 が新会員として推薦した6人の任命を菅首相が拒否した問題で、拒否された早稲田大大学院の #岡田正則 教授「イエスマンばかりでは学術会議の役割を果たせな...
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ジャンル : 学問・文化・芸術

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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