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土星の衛星タイタンでシクロプロペニリデンを検出

有機化学の研究をしていたからなのか、宇宙空間に存在する有機分子にも興味がある。
地球上にも存在する見慣れた分子もあれば、人工的にはまだ合成できていない分子もある。

私が卒業研究を始めた年に、ハレー彗星のコマでシクロプロペニウムカチオンが検出されたという論文が Nature に載った。
この論文もきっかけとなり、自分の研究以外にも、星間分子も含めて分野を限定せずに、幅広く論文を読む癖がついた。

そして今年10月に、土星の衛星タイタンでシクロプロペニリデンを検出したという論文が出た。
The Astronomical Journal の Abstruct のリンクは次の通り。
iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/abb679

この発見を紹介しているNASAのサイトは次のリンクから。
www.nasa.gov/feature/goddard/2020/nasa-scientists-discover-a-weird-molecule-in-titan-s-atmosphere/

シクロプロペニウムカチオンもシクロプロペニリデンも、どちらも炭素数3の最小の環化合物である。
タイタンの大気中にシクロプロペニウムカチオンが存在することはわかっていた。
そして今回は、ALMA電波望遠鏡で観測して、同じ炭素数のシクロプロペニリデンを検出した。

高反応性のシクロプロペニリデンは、星間ガス雲中では見つかっていたものの、タイタンに存在することは予想外だった。
シクロプロペニリデンが存在できるほど希薄で低温ということなのだろう。

ないと思っていたところに実はあるのだ。
研究では先入観をもたないことが大切だと再認識した。

テーマ : 星・宇宙
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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