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ドイツ語の複合語の列挙と機械翻訳

私は元々化学者なので、機械翻訳の性能を試すときにも、自然科学系の論文や記事の英語・ドイツ語がどのように和訳されるのかに興味がある。

ドイツ語の場合、辞書に載っていない複合語が多くなるので、人間翻訳者の方が正しい和訳ができそうだが、それでも機械翻訳はいきなり進歩することがあるので、不定期であるがチェックを続ける意味はあるだろう。

トラックバックした記事では、ドイツ語の例文として、複合語の列挙で共通部分をハイフンで省略しているものを取り上げた。
機械翻訳では省略を意味するハイフンを理解できず、不正確な和訳を出力している。

今回は、Süddeutche Zeitung の記事にあった、ホスファン(優先IUPAC名 phosphane, PH3)の説明を DeepL と Google翻訳で試した。
記事のリンクは次の通りで、金星大気中にホスファン(ホスフィン)を検出した話である。
www.sueddeutsche.de/wissen/venus-leben-nasa-phosphan-1.5141383

ドイツ語原文:
Phosphan, ein Molekül aus einem Phosphor- und drei Wasserstoffatomen.

和訳例:ホスファンは、1個のリン原子と3個の水素原子からなる分子である。

DeepL:ホスファンは、1つのリンと3つの水素原子からなる分子。

Google翻訳:ホスフィン、1つのリンと3つの水素原子からなる分子。

「リン原子」と和訳しなくても意味はわかるので、誤訳とまでは言えないかもしれない。
それでもハイフンを認識しないという癖は変わらないようだ。

ところで、PH3 は、最新の IUPAC名では phosphane(日本語 ホスファン、ドイツ語 Phosphan)である。
以前使っていた phosphine(日本語 ホスフィン、ドイツ語 Phosphin)は、GIN(一般IUPAC名
として使用可能である。

DeepLが原文ママで正確に「ホスファン」と字訳しているのに、Google翻訳では「ホスフィン」に修正している。

Google翻訳ではドイツ語原文の入力の下に、「もしかして:Phosphin, ...」と出て、英訳が Phosphine, ... となってしまうので、英訳経由の和訳も「ホスフィン」になるようだ。

まあこの場合も、ホスフィンを使ってもよいので、誤訳とは言えないだろう。

これからも科学記事などを例文にして試してみよう。


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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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