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ポリ塩化ビニル/塩化ポリビニル

4年ほど前、機械翻訳は化合物名の翻訳が苦手だと報告したことがある。
そのときの例示の1つに、ポリマーのポリ塩化ビニルもあった。

英語では、正式には poly(vinyl chloride) と、原料のモノマーをかっこでくくる。
モノマーの英語名が2語になるので、誤解を避けるためにかっこでくくるのがルールで、JIS でもそのように決まっている。

ただ、和訳ではスペースがないので、かっこなしの「塩化ポリビニル」となる。
ちなみに、ドイツ語ではスペースなしで Polyvinylchlorid と書くので、日本語同様にかっこはない。

ポリマーの命名法については、例えば、次のリンクを参照してほしい。
www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/51/4/51_4_269/_pdf

しかし、業界によって異なるのか、かっこなしの polyvinyl chloride と書くことも多く、特許でもかっこなしの表記の方をよく見かける。
この表記のまま4年前に機械翻訳にかけたとき、塩化ポリビニルという間違った和訳が出力された。

現在は、Google 翻訳も DeepLも、正しく「ポリ塩化ビニル」と出力するようになった。
ただし、かっこ付きの正式名称を入力すると、Google は「ポリ(塩化ビニル)」、DeepL は「ポリ塩化ビニル(PVC)」になってしまった。

ということで、命名法の規則を学習していない機械翻訳では、化合物名の和訳は困難だという状況は変わらない。

しかし、人間翻訳者の中にも命名法を知らず、機械翻訳レベルの誤訳をする人はいる。

私が担当する特許翻訳でも、過去の翻訳メモリ内に「塩化ポリビニル」を見つけたことがある。
最近出願された外国語特許の和訳でも、「塩化ポリビニル」が毎年見つかる。

例えば、ロレアルが出願した特開2020-097592の請求項16に出てくる。
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【請求項16】
適用部材が、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステル-ポリウレタン、NVR(天然ブタジエンゴム)、SBR(合成ブタジエンゴム)若しくはPVC(塩化ポリビニル)の発泡体又はそれらの混合物から選択される1つ又は複数の発泡体から構成されることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の器具。
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過去の誤訳が翻訳メモリに残り続けるので、どこかで修正が入らない限り、いつまでもこのままなのかもしれない。

化合物命名法を知らない翻訳者の悪口を言ってしまったが、日本のあるメーカーも「塩化ポリビニル」で出願していたので、理系人材でもだめな人はいるようだ。

まあ、命名法は面倒なので、いつも参考図書を見ながら確認している。
ポリ塩化ビニルは、より正式には「ポリクロロエテン(polychloroethene)」と書くべきだが、まだあまり普及していない。

機械は本を読んで確認するという作業はしないので、この調査能力という点を人間翻訳者は向上させるべきだろう。

テーマ : 語学の勉強
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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