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月刊言語2009年7月号「特集・変容する日本のことば」

私は東北地方の生まれだが、両親は兵庫県出身であり、盆と正月の帰省時には関西弁を聞いていた。

私が生まれた頃には、両親の関西弁はあまり出なくなったそうだが、それでも 「たい焼きこうてきた」、
「風呂、ちょっとぬくいで」 などと、生活に密着した基本単語は変わらないようだ。

両方の方言を聞いて育ったため、どちらの言葉もほぼ理解できるが、私の発音は標準語だと言われる。
私が子どもの頃は、東北訛りが低く見られていたこともあったためか、NHKのような発音の習得を目指した。
NHKのクイズ番組に出演した東北出身の歌手が、方言で解答したところ不正解とされた事件もあったし。

最近は方言ブームと呼ばれ、日本語の多様性が注目されているが、その反面、
伝統方言やアイヌ語などが消滅の危機にあると警告されてもいる。

ユネスコが、消滅危機にある言語を発表したが、日本には何と8言語もあることが話題となった。
http://www.unesco.org/culture/ich/index.php?lg=EN&pg=00136

話題を取り上げた朝日新聞の2月20日の記事は次の通り。
http://www.asahi.com/national/update/0220/TKY200902200176.html

【世界で約2500の言語が消滅の危機にさらされているとの調査結果を、国連教育科学文化機関(ユネスコ、本部パリ)が19日発表した。日本では、ア イヌ語が最も危険な状態にある言語と分類されたほか、八丈島や南西諸島の各方言も独立の言語と見なされ、計8言語がリストに加えられた。

日本では、アイヌ語について話し手が15人とされ、「極めて深刻」と評価された。財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構(札幌市)は「アイヌ語を日常的に使う人はほとんどいない」としている。

このほか沖縄県の八重山語、与那国語が「重大な危険」に、沖縄語、国頭(くにがみ)語、宮古語、鹿児島県・奄美諸島の奄美語、東京都・八丈島などの八丈語が「危険」と分類された。ユネスコの担当者は「これらの言語が日本で方言と して扱われているのは認識しているが、国際的な基準だと独立の言語と扱うのが妥当と考えた」と話した。】


大修館書店の  「月刊言語」 2009年7月号では、この消滅危機言語も含めた特集を組んでいる。
変容する日本のことば・言語の危機と話者の意識」 である。

・日本の言語状況 -多様性は失われるのか
・アイヌの人々と アイヌ語の今
・秋田における方言の活用と再活性化 -フォークロリズムの視点から
・九州における言語の危機と話し手の意識
・琉球 語の危機と継承
・関西における方言と共通語
・日本語の多様性が教えてくれるもの


アイヌ語の危機的状況は既に知られており、アイヌ文化の保存だけではなく普及の必要性も認められてきた。
「アイヌの先住民族認定を求める決議」 が国会で可決され、「有識者懇談会」 も発足した。
しかし、アイヌ民族の権利の法的保障や、言語・文化をどのように継承していくのか、未だ不透明だ。
これまでの日本人からの圧迫と同化政策が落とした暗い影、不当な差別と偏見の解消は容易ではない。

北海道のSTVラジオでアイヌ語ラジオ講座を放送するなど、アイヌ語の普及の動きもある。
北海道立アイヌ民族文化研究センターには音声資料も保存されている。
しかし、アイヌ語話者は減少し、学校教育だけでなく家族内の会話も日本語の現状では厳しい。
http://www.stv.ne.jp/radio/ainugo/index.html
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/abc/


日本語の方言であっても、危機的状況はアイヌ語に類似している。
琉球諸語は、近代以降の差別や方言排斥の動きもあって、今では家庭内でもほとんど使われなくなった。
やはり日常的に使用する環境がなければ、消滅も時間の問題なのかもしれない。


これらの消滅危機言語と対照的なのは、優勢な方言として紹介されている関西弁だ。
特に京都や大阪では、やはり歴史的プライドもあってか、共通語・東京語への対抗意識が強い。
関西人の関西弁に対する肯定的意識が、日常生活で関西弁を使う環境を維持しているわけだ。

しかし、本物の大阪弁と呼ばれる  「船場ことば」 は、消滅の危機にある方言と言ってもよい。
テレビなどで聞く関西弁は、実際には共通語の要素を取り入れ、生き残るために変化していたのだ。


そう言えばドイツ留学中、私がアジア人だとわかっているはずなのに、ドイツ人は方言を使っていた。
ドイツに到着してタクシーに乗ったが、ドライバーの話すドイツ語があまり聞き取れず不安になった。
彼らはやはり地方分権の意識が強いためか、方言であっても堂々と使う。

またスイスのホテルでは何語かわからず、私がドイツ語を話すと、標準ドイツ語に変わったこともある。

バイエルン訛りをバカにするのは定番だが、バカにしていた北ドイツ人はオランダ語みたいな発音だった。
Chemie(化学)は 「ヘェミー」 だが、北部では 「シミー」、南部では 「ケミー」 に聞こえる。

私のドイツ語は一応理解されていたが、allgemein という形容詞は、あるバイエルン出身者に通じなかった。

ルクセンブルク系アメリカ人の同僚は、北ドイツ方言がわからず、私の独和辞典にその単語を見つけた。
そして私が、その語義説明をドイツ語に翻訳したこともあるくらいだ。


古代中国語(漢文)やギリシャ語、ラテン語のような、例外の古典語もあるが、このように言語・方言の存続には、日常生活で使う話者が多数存在することが必要だ。

方言を話さない私が言うのは変かもしれないが、多様性が尊重される社会の方が暮らしやすいと思う。

テーマ : ことば
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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