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60番元素ネオジムと「ネオジウム」

元素名は、以前は発見者が独自の名称を主張していたこともあるが、今では  IUPAC が決めている。
IUPAC が正式に決める名称は、基本的に英語を原語として付けているので、英語名と同一だと思ってもかまわない。

そして、その元素名について、日本国内で使う日本語名称を決めているのは日本化学会命名法専門委員会である。

日本化学会の会員でなくても、なぜ日本化学会が担当するのか疑問を持っていても、正式に決められた日本語名称を使うべきだ。

1つの元素に対して1つの名称・表記が原則である。
過去に漢字表記だったのに、今ではカタカナ表記になった元素名もあるが、それでも最新のルールに従って1つの名称・表記のみを使うべきだ。

最近の特許を検索していて気づいたのは、60番元素ネオジムNeodymiumネオジウムと書いているものがあることだ。

海外メーカーの外国語出願の和訳だけではなく、国内有名メーカーの日本語での特許でも、誤用の「ネオジウム」があった。

日本語名称のネオジムは、ドイツ語の Neodym 由来であり、ナトリウムなどと同様にすでに定着した日本語名称は変更しないことになっている。

特許では学術用語を使うことになっているのだが、誤用の「ネオジウム」であっても専門家が読めば、「ネオジムのことだな」と理解できるのでかまわないようだ。

それでも「ネオジウム」を使わないようにしてもらいたい。

例えば、日本金属学会の会報「まてりあ」第60巻第3号(2021年)の「金属素描 No.15 ネオジム(Neodymium)」には次のように書かれている。

【和名の「ネオジム」は,ドイツ語の “Neodym”に由来する.商業的に「ネオジウム」と誤用されていることが見られるが,注意されたい.】
jim.or.jp/everyone/pdf/15.neodymium.pdf

それでも残念ながら、「金属素描」の記事一覧では、以下のスクリーンショットのように、「No.15 ネオジウム」という誤記になっている。

ネオジム
jim.or.jp/everyone/top_ranking.html

学会の公式サイトですら誤記があるのだから、特許の「ネオジウム」を批判するなと言われそうだ。

衒学的と言われても、自分が翻訳するときには必ず「ネオジム」にするつもりだ。
もし、翻訳メモリに「ネオジウム」と登録されていても、理由を説明して「ネオジム」に修正するつもりだ。

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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