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付加製造/ additive manufacturing / additive Fertigung (専門用語 日英独)

(最終チェック・修正日 2021年08月13日)

特許やメーカーの資料など、科学技術系の翻訳では、最新の専門用語を確認する必要がある。
各学会で用語の改訂をすることもあるので、学会監修の用語集や辞典を購入することもある。

英語表記は変わらないのに、日本語表記が改訂されることもある。
ネット検索で見つかっても、今は使わない古い用語かもしれないので、念のための確認作業は必須だ。

部品の製造法として注目されている技術の1つに、3Dプリンターで有名になった付加製造
という方法がある。

英語では additive manufacturing で、AM と略して記載されることも多い。

ドイツ語でも2語で additive Fertigung

ドイツ語の場合に面倒なのは、形容詞 additiv は格変化することだ。
例えば、bei der additiven Fertigung など。

JIS B9441 : 2020 に定義も載っている加工法なので、和訳するときには付加製造と書くことにしている。

ただ、一部の英日オンライン辞書や対訳データベースでは、以前使われていた積層造形という訳語を載せている。

これに影響されたのか、ドイツ語和訳でも積層造形を使う人がいる。
独和辞典で見つからない用語は、独英で調べてからさらに英和で探すので、参考にした情報源で差が出てしまう。

「層を重ねて部品を製造する」こともあるが、技術の本質は「材料を付着させて3次元データを実体化すること」である。
それで付加製造の方がふさわしい用語とされている。

例えば、化学工学会の公開記事は次のリンクから(2020年)。
www.scej.org/docs/publication/journal/backnumber/8404-open-article.pdf

ところが、積層造形の方が正しいのに、直訳の付加製造が広まってしまった、という説明も見つけた。
それは、第27回知的財産翻訳検定試験(2018年)の解説である。
www.nipta.org/ExamResult_27-1_J.html (1級機械工学の問1)

2018年の検定試験の解説よりも新しい、2020年の化学工学会の説明を優先すべきだろうか。

工学系ではどの学会が用語を決定しているのだろうか。
複数の学会が協力して決めているのだろうか。

遺伝学用語の「顕性・潜性」でもそうだが、学会が決めた用語に統一しようとしても、それまで使用していた用語が混在する期間がある。
それでも、JISに採用された用語ということで、付加製造にした方が無難かもしれない。

今後も用語の改訂があるだろうから、最新の情報をとらえるようにアンテナを整備しておこう。

テーマ : 語学の勉強
ジャンル : 学問・文化・芸術

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英日と独日の特許翻訳をしていて、一番時間を取られる作業は、専門用語の確認ではないだろうか。 トラックバックした記事の additive manufacturing (英語) を再度取り上げよう。 以前は「積層造形」と和訳していたが、最近は化学工学会の記事を参考にして「付加製造」にしている。 JIS でも付加製造なので、あえて積層造形を使うという選択はしない方針だ。 辞書では、過...

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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